カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.12

三葉虫

2022年6月3日

text & edit: Shogo Kawabata
photo: Akira Yamaguchi
2022年6月 902号初出

立体クリーニングにより甦った
アメイジングなフォルム。

三葉虫
Walliserops trifurcatus。本種は三葉虫の中でも非常に人気が高く、多くの偽物が出回るほど。写真の標本は、クリーニングが緻密で修整もほぼない美しい極上の個体。¥148,000(東急ハンズ名古屋店10F 地球研究室☎052·566·0109代表)
三葉虫
Walliserops ‘Shortfork’。4種いるワリセロプスのうち、フォークの短い3種のうちの1種。¥120,000(東急ハンズ名古屋店10F 地球研究室)

三葉虫というと、扁平なわらじのようなフォルムのイメージが強いが、それはカンブリア紀の初期の三葉虫の話だ。デボン紀の頃には捕食者も増え、身を守るための鋭いトゲをまとうなど、かなりダイナミックな造形美をした種も多い。写真の化石はWalliserops trifurcatus。まず目をひくのは、そのインパクトある三叉の長い角だろう。別名「ロングフォーク」とも呼ばれ、三葉虫の標本の中でも最も人気のあるものの一つだ。この特徴的な角は何に使われていたかは諸説あるが、海底の砂を掘り起こし、その中の有機物を食べるためのものだったという説が有力である。近年は、化石クリーニングの技術進歩がめざましく、まるで生きているかのような状態で、こうした化石を鑑賞することができる。細かなトゲや複眼の一つ一つまでクリーニングできるようになったのは、サンドブラストという手法のおかげ。粉末を吹き付けて、細部まで精密にクリーニングできるようになった。