カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.6

ピンセット

2021年11月13日

text & edit: Shogo Kawabata 
photo: Akira Yamaguchi
2021年12月 896号初出

指先をカスタマイズする、多種多様なデザイン。

 人の指に代わり、細かなものをつまむための道具、ピンセット。誰しも馴染みある道具だが、実は、その行う作業によって、様々なデザインのものがある。今回紹介するのは、伊丹市昆虫館でカメムシの研究などをしている昆虫学者、長島聖大氏のコレクション。その形にはそれぞれ意味があり、例えば、先がくの字に曲がっているものは、ピンセットを持つ手で視界が遮られないようにするための形状だ。先が細く尖っているものは、顕微鏡を覗きながら、小さな虫を解剖するためのもの。こうした精密ピンセットは、スイス製のものが世界最高峰といわれる。スイスでは、職人が機械式時計をハンドメイドで製作しており、そうした精密作業を行うためのピンセットが数多く存在するからだ。精密なのはその仕上げだけではなく、ピンセットでつまんだ際の「コシ」も、非常に柔らかで繊細なものになっている。ピンセットはそのデザインだけでなく、「コシ」が重要な要素で、細かな作業には、コシの柔らかいものが使いやすい。また、高硬度の鋼鉄製のもの、強酸などの薬品にも腐食しない特殊合金のもの、さらには竹を精密に加工し磁気を嫌う作業にも使用できるものなどもある。多様で奥が深い世界なのだ。

インフォメーション

さらに奥深いピンセットの世界を覗きたい方は長島氏のブログ「ピンセットサロン」へぜひ。