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自然の揺らぎと幾何学的要素が調和した高橋主馬のシェードランプ。

どんな人が作ってるんだろう?

2025年2月26日

部屋作りのマイルール。


photo: Tomohiro Mazawa
text: Ku Ishikawa
2025年3月 935号初出

心惹かれた家具の作り手に会うために、日本各地のアトリエへ。
ものづくりの背景にも共感して選べたら、長く大切に使えるはず。

シェードランプは各¥66,000。両端の2つに使っている木材はウエンジ。アフリカ原産の高級木材で、黒く沈んだ色調とはっきりとした木目が美しい。右から2つ目は、ウォールナット。リズミカルな凹凸が身近な素材の違った魅力に気づかせてくれるし、古くさく見えない。左から2つ目は、チェリー。経年変化しやすく、1年後には全然違う色になることもあるという。レモンイエローとのコントラストが深まるのを楽しみに待ちたい。

 長野県軽井沢町。かつてリゾートとして栄えた別荘地の一角で、食料品店を営みながら制作にあたる木工作家の高橋主馬さん。近頃は緊張感のあるシャープな木彫をよく見かけるが、彼の持ち味はのびやかで優しさのある曲線。波打つ縁が特徴的な器やボウルは、数多く作っている代表作のひとつだ。

「機械で角材を直線的に切り出したら、手作業で削って〝揺らぎ〟を作っていきます。一度、人工的に加工した材料を、自然に戻していく感覚ですね。その作業が純粋に楽しいんです」

 使うのは、重くて硬い広葉樹。加工はしにくいが、そのずっしりとした重さが嬉しいのだという。そして、元の材料の個性を極力生かすように木を削り、形を作ってゆく。彼自身が言うように、作る行為そのものを純粋に楽しんでいる、そんなおおらかな性格が、作品にもそのまま表れている。

 昨年、新しく作ったのはシェードランプ。木の土台にはこれまでの作風がしっかり引き継がれている。形は、長野で育った荒々しい野菜からインスピレーションを得ているそうだ。「すごい格好いい形の大根とかあるんですよね」と目を輝かせて教えてくれた。でも、今回はそれ以外の部分も面白い。

「木と組み合わせる素材は、全く違うテクスチャーのものを選びます。シェードは、日暮里の繊維街で見つけたヴィヴィッドすぎない色味の生地で。直線的な台形の形も気に入っています。金具はシルバーのステンレス、配線もシルバーにしました。捻れたコードは、ちょっとしたアクセントですね」

 松本の民藝店で見つけた和紙のシェードもいいなと思ったが、今の気分はこのポップなシェード。そっちは、未来の構想に取っておくそうだ。朴訥としているようで、細やかな部分にはモダンなセンスが光る。だから、高橋さんの新作はいつも楽しみなんだよな。

シェードランプに続く新作は、まるでヨーロッパの蚤の市で買ってきたかのような素朴な飾り棚。高橋さんは馬のオブジェを飾っていた。

高橋さんが木工を始めた初期から作り続けている、縁の模様が特徴的な器。

プロフィール

自然の揺らぎと幾何学的要素が調和した高橋主馬のシェードランプ。

高橋主馬

木工作家

たかはし・かずま|1993年、東京都生まれ。美術大学を卒業後、シューリペアショップ、内装会社を経て、2020年頃から木工を始める。2024年春に軽井沢へ移住。手に持つのは、アフリカ美術からインスパイアされた巨大な飾り棚。

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https://www.instagram.com/kazuma_takahashi8/