ライフスタイル

家の猫の話 Vol.12/文・ピエール瀧

2025年2月5日

家の猫の話


photo & text: Pierre Taki
edit: Ryoma Uchida

皆さんに朗報です。冬は猫との距離を縮めるチャンスの季節です。なぜなら寒いから。

あれだけ毛むくじゃらなルックスをしている猫達ですが、それでも意外と冬はちゃんと寒いらしく、家の中のなるべく暖かい場所を探し当てて丸くなり、ハンバーグのような形になって暖をとっています。じっとしながら。たまに外で見かける、車のボンネットに野良猫が数匹集って丸くなっているのもコレが理由です。運転した後の車のボンネットって暖かいですから。

この冬の寒さを人間が利用しない手はありません。夏の間は抱っこしても秒で身をよじって爪を立てて腕の間からの脱出を試みるヤツらですが、これが冬になると「お、なんか人間あったけぇ。意外。これは悪くないとします」なんつってしばらく抱っこさせてくれます。

猫を飼っているけどなかなか抱っこさせてくれないという悩みをお持ちの飼い主の皆さんは、この冬のアドバンテージを最大限活用することをおすすめします。

なるべく部屋を寒い状態にし(もしくは帰ってきてすぐに)、猫を捕まえたらとにかく膝の上に乗せる。人間はその際、ジャージ等を履くなどしてなるべく体温が猫に伝わりやすい状態にしておきましょう。膝の上に乗せられた猫は、夏の間は暑苦しいと感じた人間の体温が意外と心地よいことに気づくでしょう。最初のうちは人間の膝に違和感を感じていた猫も、コレを何度か繰り返していると、最終的には猫の方から自然に膝に乗ってきてくれるようになります。もらった!勝った!

コレがウチの場合、コンブとブイヨンは寒くなると身を寄せ合って互いに暖をとる習性があるので、このあったか調教が通用するのはコロッケだけです。嫁がコロッケを捕まえて膝に乗せ、根気強く”膝の良さ”を教え込んだおかげで、最近ではオイラの膝の上にもたまに来てくれるようになりました。つまりオイラは嫁のおこぼれで抱っこさせてもらってるという訳です。代替品としてのオイラの膝。

この状況は我が家では猫ファーストが発動する条件で、猫が膝に乗ってるが故に、「リモコンを取ってくれ」「ファンヒーターのスイッチをONにせよ」「宅配便来たよ」と、“猫を持ってる”人以外が言うことを聞かなくてはなりません。つまり、丸い猫を膝に抱えているということは我が家では権力なのです。そしてこの権力を手中に収める時期、それが冬なのです。なんかゲーム・オブ・スローンズみたいですね。

プロフィール

ピエール瀧

ぴえーる・たき | 1967年、静岡県出身。1989年に石野卓球らと電気グルーヴを結成。道行く人に「あなたのオススメは?」と尋ね、その返答の通りに旅をするYouTube番組『YOUR RECOMMENDATIONS』が好評配信中。著書に『ピエール瀧の23区23時』(産業編集センター)、『屁で空中ウクライナ』(太田出版)など。『地面師たち』(大根仁・監/Netflix)、『HEART ATTACK』(FODで配信予定)にも出演予定。

電気グルーヴ公式ウェブサイト
https://www.denkigroove.com/