TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】「ドンパン節」 at スナック御代(ミヨ)/福生“赤線”界隈探訪 01

執筆:田中克海(民謡クルセイダーズ)

2025年1月20日

東京の西の端っこ、米軍横田基地がある街「福生」。

大瀧詠一さんをはじめ様々なミュージシャンやクリエーターが住み着き、戦後の日本文化の礎になった街としてご存じの方も多いかと思います。

現在、民謡クルセイダーズというバンドでギターを弾いている私、
田中克海がそんな街に憧れて自ら住みはじめて、早いもので25年が経ちます。

前回の「TOWN TALK」コラムでは、 その活動拠点である福生の米軍ハウスから、 日本民謡のしらべをイナタさ満点の電子ギターの動画としてお届けいたしましたが、今回はハウスを飛び出しまして、古くは基地の軍人さんの“お楽しみ” 歓楽街であった「赤線」と呼ばれるエリアにある、これまたイナタさ満点のお店の数々から演奏をお届けしてみたい!と思い立ちました。

70年代当時の福生チキンシャック
初代オーナーヒゲさん(画像左)

画像群提供:チキンシャック初代オーナー・ヒゲさん

福生の「赤線」は米兵さん相手の戦後の歓楽街でした。

ベトナム戦争に駆り出された兵隊さんが、有り金を全部はたいて最後の酒を酌み交わした。なんていう涙の物語や、来日したジェームス・ブラウンがバンド全員引き連れてリムジンバスでディスコに遊びに来た。とか、狭いカウンターだけのスナックのドアを開けたらニーナ・シモンが飲んでいた。などなど。

その歴史から凄い逸話に事欠かないエリアですが、この30年あまりは赤線の“顔”となっていたリリーフランキーさんが1990年に描かれた壁画が、道路の拡張工事でついに取り壊されたことで、その景色も大きく変わろうとしております。

提供:くりやま ひろこさん

とはいえ昭和から今も営業を続けるタフな名店から、最近ではフィリピン、ベトナムなどアジア系、ヒスパニック、アラブ系のコミュニティなども盛り上がっていて、相変わらず米兵さんや地元民を相手にしたドサクサ感満載の愛すべきストリート「赤線」の一端をお伝えできればと思います。

先ずは『スナック御代(ミヨ)』をご紹介しましょう。

こちら、現在はスナック営業はしておらず、お隣の老舗ライブハウス「チキンシャック/CHICKEN SHACK」の楽屋として、 また不定期のイベント会場として使われているのみですが、昭和のままの内装が最高。奥にあるカーテンで仕切られた“ちょんの間”の跡が赤線の面影を残すグッドロケーションです。

上2枚提供:中田一輝くん

それではスナック御代(ミヨ)から、秋田民謡の名曲『ドンパン節』を、最近ゲットしたタイの弦楽器「ピン」とローランドのリズムボックス「CR-8000」でお贈りいたします。

民謡クルセイダーズのレコーディングなどでもお世話になっている「トッカク音響」の韓雄万くんにDUBで快調に飛ばしてもらいました!

見物人:写真家 小川尚寛、チキンシャック ノゾムさん

プロフィール

田中克海(民謡クルセイダーズ)

たなか・かつみ|1971年、岡山県生まれ。かつて戦後間もない頃、偉大なる先達――東京キューバンボーイズやノーチェクバーナが大志を抱き試みた日本民謡とラテン・リズムの融合を21世紀に再生させるバンド、民謡クルセイダーズのリーダー/ギタリスト。東京西部、米軍横田基地のある街、福生在住の田中克海と民謡歌手フレディ塚本の二人を中心に2011年に結成された民謡クルセイダーズ。失われた音楽「日本民謡」をもう一度「民の歌」として蘇らせるため、カリビアン、ラテン、アフロ、アジアなど様々なダンス・ミュージックとの融合を試み、メンバー・チェンジを繰り返しながら、2016年、現在の10人編成となる。2017年12月にファースト・アルバム『エコーズ・オブ・ジャパン』をリリース。2019年4月に同アルバムがイギリスでリリースされて以降、フジロックなどの国内人気フェスから、COTTON CLUBなどのライブハウス、1000人規模のホールコンサートなど、場所を選ばない幅広いオーディエンスに向けたライブを行い、四度に渡るヨーロッパ・ツアーをはじめコロンビア、オーストラリア〜ニュージーランド、北アメリカ、台湾など全世界 19 か国(約50箇所)での公演を成功させている。 FRENTE CUMBIERO(Bogota, Colombia)とのコラボユニット「民謡クンビエロ」や、「元ちとせ」のとのコラボを経て、2023年には2ndアルバム『日本民謡珍道中 Tour Of Japan』をUNIVERSALMUSIC JAPAN よりリリース。
以降もテレビ東京「シナぷしゅ」、NHK Eテレ「天才てれびくん」、NHK WORLD 「Japanology Plus」への楽曲提供、メディア出演など、ジャンル・国境を跨いだ活動で日本民謡の可能性を追求し続けている。

Official Website
https://www.minyocrusaders.com/