カルチャー

木枯らしの寒さをはねのけてでも訪れたい展示4選。

さーて、11月はどんな展示に行こうかな。

2024年11月8日

ようこそ魅惑の書籍用紙の世界
@市谷の杜 本と活字館

映画は総合芸術なんていわれる。音や映像、デザインや演技など複合的な要素で成り立つからだ。かといって他の芸術に要素がないというわけではない。例えば本はどうだろう。文字や文章だけじゃなくて、表紙や綴じ方、それに紙の質なんてのも本の世界を構成する大事な要素だ。そんな本の大事な要素の一つである書籍用紙に注目したのが本展。目に優しい白さ、めくりやすいしなやかさ、あるいは紙らしいふわっとした手触り、両面に印刷しても透けにくく、そして、長く読まれる本では色褪せしにくい保存性などなど。古今東西、驚くほど多くの種類がある印刷用紙から、書籍本文用として抄紙されたものを中心に、約60種類の紙を紹介する。『市谷の杜 本と活字館』は『大日本印刷株式会社(DNP)』が運営する施設ともあって、入場無料と思えぬ展示の充実ぶりには太鼓判を押したい。

インフォメーション

ようこそ魅惑の書籍用紙の世界

会場:市谷の杜 本と活字館
会期:2024年10月19日(土)~2025年02月16日(日)
休み:月曜・火曜(祝日の場合は開館)、年末年始
時間:10:00~18:00
料金:入場無料
Official Website
https://ichigaya-letterpress.jp/gallery/000428.html

安部公房展──21世紀文学の基軸
@神奈川近代文学館

写真提供:新潮社 Design: Kazuya Kondo

写真提供:新潮社 Design: Kazuya Kondo

「壁—S・カルマ氏の犯罪—」原稿

「壁—S・カルマ氏の犯罪—」原稿

発想メモボード

発想メモボード

生前は「ノーベル文学賞に最も近い」と言われ、いまや世界文学のひとつといっても過言ではない、安部公房。今年は生誕100年。未完の書『飛ぶ男』やエッセイ・インタビューなどを収めた『死に急ぐ鯨たち・もぐら日記』(どちらも新潮社)などが続々刊行され、映画『箱男』も公開中。記念すべき安部公房イヤーだ。そして、そのラストはこちらの展示でしめくくりたい。本展は、創作活動の初期から、戯曲、写真、演劇グループ・安部公房スタジオによる総合芸術の追究の過程などなど、初公開・初展示を含む約500点の資料により、時代の先端をとらえ続けた表現者・安部公房の全貌に迫る。ワープロやシンセサイザーの展示に「文豪」のお堅いイメージが塗り変わるようで驚きがあるし、どこを切り取ってもやっぱり「前衛」を貫いた安部公房だ。これからの時代にこそ読み解いていくべき作家の、必修の展示。

インフォメーション

安部公房展──21世紀文学の基軸

会場:神奈川近代文学館
会期:2024年10月12日(土)〜12月8日(日)
時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休み:月曜日
料金:一般800円、65歳以上・20歳未満及び学生400円、高校生100円、中学生以下は無料 ※詳細は公式サイトへ

Official Website
https://koboabe.kanabun.or.jp/

荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ
@国立新美術館

荒川医《ネメシス・ペインティング(猫なで声のパフォーマンス!)》2022年、デビッド・ズワーナー、ニューヨーク
Photo: Santiago Felipe
Courtesy of the artist and David Zwirner, New York

荒川医《ネメシス・ペインティング(猫なで声のパフォーマンス!)》2022年、デビッド・ズワーナー、ニューヨーク
Photo: Santiago Felipe
Courtesy of the artist and David Zwirner, New York

荒川医《メガどうぞご自由にお描きください》2021年、テート・モダン、ロンドン
Photo: Rikard Österlund
Courtesy of the artist and Tate Modern, London

荒川医《メガどうぞご自由にお描きください》2021年、テート・モダン、ロンドン
Photo: Rikard Österlund
Courtesy of the artist and Tate Modern, London

荒川医《メガどうぞご自由にお描きください》2021年、テート・モダン、ロンドン
Photo: Rikard Österlund
Courtesy of the artist and Tate Modern, London

荒川医《メガどうぞご自由にお描きください》2021年、テート・モダン、ロンドン
Photo: Rikard Österlund
Courtesy of the artist and Tate Modern, London

こんなに“参加したくなる”展覧会も珍しい。2000年代から国際展や美術館でパフォーマンス・アートを発表してきた米国在住のアーティスト、荒川ナッシュ医のアジア地域においては初めての美術館での個展。展示空間には、松任谷由実や寺尾紗穂らが書き下ろした新曲、哲学者の千葉雅也による初戯曲に基づくインスタレーション、キム・ゴードンとのコラボや河原温の本邦初公開の絵画などなど、コラボレーションをアート活動の基本とする荒川ナッシュならではの展示構成に、とにかく興味をそそられるし楽しめること間違いなし。観覧料も無料とあって、今すぐコラボレーションしに行こう!

インフォメーション

荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ

会場:国立新美術館
会期:2024年10月30日(水)~2024年12月16日(月)
時間:10:00~18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで、※入場は閉館の30分前まで。
休み:火曜
料金:無料

Official Website
https://www.nact.jp/exhibition_special/2024/eiarakawanash/

しないでおく、こと。― 芸術と生のアナキズム
@豊田市美術館

ラースロー・モホイ=ナジ《アスコーナのオスカー・シュレンマー》1927年 東京都写真美術館蔵

ラースロー・モホイ=ナジ《アスコーナのオスカー・シュレンマー》1927年 東京都写真美術館蔵

集団行為《第3案》1978年

集団行為《第3案》1978年

オル太《耕す家:不確かな生成》2022年 撮影:加藤甫(参考図版)

オル太《耕す家:不確かな生成》2022年 撮影:加藤甫(参考図版)

タイトルを見て物騒だと思うなかれ。むしろ、今日も何もしてないなあ、と休日にため息をつくあなたこそ、この展示を観に行ってみてほしい。「しないでおく」という言葉は、「何かする/しなければならない」という創造の第一歩(とされている状態)にも疑問符を投げかけるのである。本展では、芸術や社会と深く関わりながらも、そんな風に抵抗・逃走し、創造してきた人々の活動が約100点の作品や資料を通して紹介される。支配への抵抗や逃走の実践を行うアナキズムにこそ、芸術を何か画一的なものにしようとする流れに抗う力があるのではないか。そして、その可能性を問うことが、硬直した社会そのものを突破する契機にもなるのではないか。そんな冒険と発見、優しさと強さに満ちた注目の展示だ。

インフォメーション

しないでおく、こと。― 芸術と生のアナキズム

会場:豊田市美術館
会期:2024年10月12日(土)〜2月16日(日)
休み:月曜日(祝日の場合は開館)、12月28日〜1月17日
時間:10:00〜17:30(入場は17:00まで)
料金:一般1,500円、高校・大学生1,100円、中学生以下無料 ※様々な割引あり。詳細は公式サイトへ

Official Website
https://www.museum.toyota.aichi.jp/exhibition/anarchism_and_art