カルチャー
12月はこんな映画を観ようかな。
まったりしがちな年末に刺激を注入してくれる3作。
2023年12月1日
text: Keisuke Kagiwada
『枯れ葉』
アキ・カウリスマキ(監)
低賃金労働者の男女が出会い、恋に落ちる。そんな物語を彩るのは、仏頂面の人々とぶっきらぼうに呟かれる言葉、レトロなレストランとジュークボックス、淡いグリーンの壁紙と暗がりの真横に差す光などなど、お馴染みのカウリスマキ的なあれこれ。しかし同時に、これまではなかなかお目にかかることができなかったアイテムも登場する。携帯電話、ネットカフェ、ジャームッシュの『デッド・ドント・ダイ』! そして、何よりラジオから絶えず流れ続けるウクライナ戦争の報道。その意味で本作は、カウリスマキが最も”今”に肉薄せんとした1作と言えるかも。12月15日より公開。
『王国(あるいはその家について)』
草野なつか(監)
本作の複雑な構造を短文で説明するのは至難の業。ある台風の日に殺人事件が起こり、事件前後の出来事を、犯人と被害者遺族である夫婦が、脚本の読み合わせやリハーサルを通して幾度となく演じ直す……という言葉ではたぶん本作の20%も掴めてないが、まぁそれは観てもらうとしよう。どうやら事件の鍵を握るのは、幼馴染である犯人と被害者遺族の妻がかつて台風の日に過ごした「密度の濃い凝縮された時間」(『台風クラブ』みたいだ)にあるらしいのだが、この映画自体こそが「密度の濃い凝縮された時間」と言いたくなる驚異の150分。12月9日より公開。
『VORTEX ヴォルテックス』
ギャスパー・ノエ(監)
以前、本誌で『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督に取材したとき、「最近観た映画では群を抜いて素晴らしかった」と語っていた『VORTEX ヴォルテックス』がいよいよ公開。ひとつ屋根の下で暮らす、老齢の夫と認知症を患う妻のすれ違いを、画面を2つに分割し、夫婦それぞれの視点から描いた怪作だ。「120年以上の歴史がある映画だけど、まだまだ新しい発見があって」というジェンキンスの言葉もさもありなん。加えて、夫を演じたのが、伊ホラーの巨匠ダリオ・アルジェントってところも見逃せない。アルジェント、こんなに演技がうまかったなんて! 12月8日より公開。
関連記事
カルチャー
PARAKEET CINEMA CLASS Vol.7/『ゴーストワールド』(監督:テリー・ツワイゴフ)
「二人の間に映る”三人目”は何を表しているのか?」
2023年11月27日
カルチャー
PARAKEET CINEMA CLASS Vol.6/『ドミノ』(監督:ロバート・ロドリゲス)
「ロバート・ロドリゲスはヒッチコック主義者なのか?」
2023年10月30日
カルチャー
観たい映画が見つかる日本の映画館、いつかは行ってみたい世界の映画館。
Movie theater solves everything.
2023年8月5日
カルチャー
ジム・ジャームッシュの映画リストを君へ。
2023年7月17日
カルチャー
イウリ・ジェルバーゼ監督にインタビュー
映画『ピンク・クラウド』公開記念!
2023年1月21日
カルチャー
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のダニエルズにインタビュー。
試写会プレゼントもあるよ!
2023年2月7日
カルチャー
“関西弁フィルム・ノワール”を目指して作りました。
映画『BAD LANDS バッド・ランズ』の原田眞人監督にインタビュー。
2023年10月2日
カルチャー
『ビデオマーケット』店長・涌井次郎が選ぶ、辺境のホラー。
2021年8月22日
カルチャー
PARAKEET CINEMA CLASS Vol.5/『アステロイド・シティ』(監督:ウェス・アンダーソン)
「”ウェス・アンダーソンすぎる風景”に穴は開けられるのか?」
2023年9月4日
カルチャー
PARAKEET CINEMA CLASS 特別編/『君たちはどう生きるか』(監督:宮﨑駿)
「僕たちはなぜPARAKEET(インコ)なのか?」
2023年8月28日
カルチャー
PARAKEET CINEMA CLASS Vol.4/『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』(監督:デヴィッド・クローネンバーグ)
「クリステン・スチュワートはなぜ人を制止しまくるのか?」
2023年8月21日
カルチャー
PARAKEET CINEMA CLASS Vol.3/『小説家の映画』(監督:ホン・サンス)
2023年7月3日
カルチャー
PARAKEET CINEMA CLASS Vol.2/『カード・カウンター』(監督:ポール・シュレイダー)
2023年6月19日
カルチャー
PARAKEET CINEMA CLASS Vol.1/『EO』(監督:イエジー・スコリモフスキ)
2023年5月12日
ピックアップ
PROMOTION
〈バーバリー〉のアウターに息づく、クラシカルな気品と軽やかさ。
BURBERRY
2024年11月12日
PROMOTION
君たちは、〈Puma〉をどう着るか?
Puma
2024年10月25日
PROMOTION
人生を生き抜くヒントがある。北村一輝が選ぶ、”映画のおまかせ”。
TVer
2024年11月11日
PROMOTION
うん。確かにこれは着やすい〈TATRAS〉だ。
TATRAS
2024年11月12日
PROMOTION
介護がもっと身近になるケアギビングコラム。
介護の現場を知りたくて。Vol.3
2024年10月23日
PROMOTION
〈ザ・ノース・フェイス〉のサーキュラーウールコレクション。
THE NORTH FACE
2024年10月25日
PROMOTION
〈ハミルトン〉と映画のもっと深い話。
HAMILTON
2024年11月15日
PROMOTION
〈ナナミカ〉と迎えた、秋のはじまり。
2024年10月25日
PROMOTION
〈バレンシアガ〉と〈アンダーアーマー〉、増幅するイマジネーション。
BALENCIAGA
2024年11月12日
PROMOTION
〈ティンバーランド〉の新作ブーツで、エスプレッソな冬のはじまり。
Timberland
2024年11月8日