ファッション

直してほしいの要望をほぼ断らない。靴修理店『THE SHOE OF LIFE』。

東京五十音散策 池尻大橋②

2023年7月4日

photo: Hiroshi Nakamura
text: Fuya Uto
edit: Toromatsu

東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく企画「東京五十音散歩」がスタート。2文字目「い」は池尻大橋

 ヴィンテージの靴を買うとあっちがダメになりこっちがダメになり。新品の靴を買うとちょっとした痛みでもやたらと気になってしまう。お気に入りの靴を良い状態に保つのって難しい……。

「池尻の駅前に良い修理店があるよ」と、先輩から教えてもらい訪れたのは『THE SHOE OF LIFE』。渋谷へ向かう側の国道246号線沿いに佇む4坪ほどしかないこのお店は、顧客の“直してほしい”という要望をほぼ断らない気概を持っているのだという。尋ねるとオーナーの勝川永一さんは、若い頃にイギリスのノーザンプトンにある靴の学校に通い、卒業後に帰国。そこから靴の修理店で更に腕を磨いたスペシャリストだった(革靴のブランドをディレクションしていたりもする)。

「かつての勤め先が百貨店に入っている修理店だったのですが、要望が毎日ひっきりなしなうえ、ほぼ断れない環境だったんです」と勝川さん。キャリアが活きて現在もメンズ・レディース問わず、革靴、スニーカー、サンダルとなんでも修復。ソール交換など一般的な修理はお手の物で、アッパーの生地の張替えや、タン(紐部分のあて布)を新たに成形するなど、そこまでやってくれるのかと思わず仰天するほど。

 実際に今回は、過去に違う街の修理店で一度直したスニーカーの再修理(ソールの剥がれ)と、革靴の履き口修理を依頼した。勝川さんと二人三脚でやってきた店長・谷澤有紀さんが対応してくれることになったのだが、彼もまた凄腕。古着店に長く居たのちリペアマンに転身、ヴィンテージ靴への理解も深いから、雰囲気を損なわない修理の落としどころを一緒に考えてくれるのも有難かった。「どこかで断られたり、うまくいかなかったものでも諦めずに持ってきてほしい」と話すふたりの顔を見ると、この店も間違いなく池尻大橋の屋台骨となっていることが感じ取れた。

インフォメーション

THE SHOE OF LIFE 外観

THE SHOE OF LIFE

池尻大橋駅北口を出て3分。渋谷行きの「大橋バス停」前にある、今年で13年目の靴の修理店。受付と工房が併設された店内で黙々と手を動かす店長の谷澤さんは、なんと日に30〜40足ほど手掛けているらしく安心感がすごい。各修理内容から完成写真まで丁寧に綴られているブログはとにかく一見の価値あり。英国で腕を磨いたオーナーが、イギリスの街で長く愛されている靴店をイメージして作っただけあっていわゆる街の修理店とは異なる雰囲気も良い。

◯目黒区大橋2-22-4 増本ビル1F ☎03・3467・8766 10:30~19:30 火・水休

Official Website
https://shoeoflife.blogspot.com/