ライフスタイル

世界の部屋から。 Vol.6/MILAN

理想の空間を求めて訪ねた世界8都市11部屋。6部屋目は、あのミケーレ・デ・ルッキの日本初公開の別宅へ。

2021年5月1日

シティボーイの部屋作り。


photo: Max Rommel
illustration: Adrian Hogan
edit: Hiroko Yabuki
2021年3月 887号初出

建築家の哲学が凝縮された、秘密の隠れ家。

ミケーレ・デ・ルッキの別宅の外観
Michele De Lucchi
Architect / Designer 
ミケーレ・デ・ルッキ|1951年、イタリア・フェラーラ生まれ。2021年7/17〜8/9「デザイン・クリエイティブセンター神戸」にて企画展『EARTH STATIONS by AMDL CIRCLE ミケーレ・デ・ルッキと未来を共有する建築』が開催。

 あのミケーレ・デ・ルッキの本邦初公開の別宅があるらしい。噂を聞きつけ訪れた家は、イタリア版湖水地方・マジョーレ湖畔の街にある、想像以上に小さな小屋だった。元は菜園の保管庫で、築年数は500年超え(!)。そこにバスルームを新設し、暖炉を設置。曇りガラスで仕切ったデスクスペースからは、庭や近隣の古い家々が見渡せる。扉のないシャワーブースには面食らったが、理由を聞いて納得。「誰にも気を使わず、一人で作業に没頭するための場所だからね。8人兄弟の長男で、いつも賑やかな環境で育ったから、いつか私だけの家が欲しいって夢見てたんだ」。そう目を細めてコーヒーを淹れる姿を横目に壁や棚に目をやると、過去の作品のプロトタイプがあちこちに。いわく、デザインとは試行錯誤するプロセス。「思考の道筋を再認識させてくれる大事なものだから、目立つところに飾っているのさ」。素の自分に立ち返る、自分だけの場所。そんな家をいつか持てたらいいな。

Desk Space

座りながら思索に耽るミケーレ・デ・ルッキ
コロナ禍の影響で、最近はほぼ毎日この家で過ごす。座り、思考に耽る。「静寂に包まれると、まるで隠者にでもなった気分だよ」。窓を大きくとった理由は「どんな照明も自然光にはかなわない」とか。以前は友人も招待していたが、「居心地が良すぎて独占したくなっちゃってね(笑)」と、現在はもっぱら一人用。
ミケーレ・デ・ルッキが愛用する机と椅子。
デスク側は屋根の傾斜が急で、屋根裏部屋のような趣。机は架台に木の板を渡したシンプルなつくり。椅子は〈Produzione Privata〉のためにデザインした「1993 Chair」の型違い。

Bedroom

ミケーレ・デ・ルッキの別宅のベッドルーム
ベッドカバーは妻がインドで買ってきたもの。明るい緑色が気に入った。

Bathroom

ミケーレ・デ・ルッキの別宅のバスルーム。シャワーブースには古材を利用。
デスクスペースの後ろを曇りガラスでゆるく仕切り、バスルームを新設。シャワーブースは古材を再利用し、建物の雰囲気と馴染ませた。洗面台サイドの石壁にはよく見ると苔が生えていて、緑とグレーのコントラストがまるでアートのよう。

Yard

House Layout

AREA ロンバルディア州・アンジェーラ
SPACE 2ROOMS   25㎡
REMARKS 中世に建てられた石と煉瓦造りの家。壁や梁などオリジナルを残しつつ、天井や床を張り替えた。ミラノからは車で約1時間、妻と暮らす家は歩いて通える距離。