カルチャー
小さな店のはじめ方。
編集者、タコス屋になる。
2022年6月29日
photo & text: Taichi Abe
cover design: Bob Foundation
人生の転機は突然やってくる。本当に突然。少し前までは、会社を辞めるなんて思ってもみなかった。定年まで勤め上げるのだと、ぼんやりと想像していた。でも、今はフリーランスで編集者を続けながら、年末の「開店」に向けて準備を進めている。オープンさせるのは、タコス屋だ。
POPEYE編集部があるマガジンハウスでエディターを続けること20年。その間、anan、BRUTUS、Hanakoの3誌に携わった。2022年の4月に退社したわけだけど、その2ヶ月後に「古巣」のウェブメディアで連載記事を書くなんて思ってもみなかった。とても不思議な感覚。

なぜ、辞めたか? 会社が嫌いになったわけじゃあ、ない。2020年の12月、父が亡くなった。その3ヶ月後に母も旅立った。いずれもコロナウィルスによる逝去。こんなことがあっていいのかと思う出来事だった。両親の生と死に向き合った3ヶ月を思い出すと、今でも頭の先がツンと痛むような感覚が蘇る。まったく根拠はないけれど、この先ずっと両親は元気でいるとぼんやり思っていた。いつだって僕は、ぼんやりだ。とにかく、親との別れは思ってもみないかたちで突然訪れたのだ。

この別れをきっかけに、たくさん考えた。一番は娘と息子のこと。共働きの僕たち夫婦は、忙しいときには子供の世話を両親に頼っていたし、子供たちも両親を「メンター」と慕っていたが、その大事な存在がいなくなってしまった。まだ小さい娘と息子にとって「家族」との距離が遠い時間が多くなってしまうような気がして心配になったのだ。次に、実家のこと。両親は5年ほど前まで蕎麦屋を営んでいた。そのスペースが空いてしまったわけで、この場所を有効活用できないかを考えた。





大好きな「編集」は続けたい。両親の死が、好きなことを諦める理由になってはいけないから。そこで僕は、時間と場所の融通が利きやすいフリーランスの形態でエディターを続けることにした。また、仏壇に線香をあげに来てくれた近所の人たちの話を聞いていると、両親が街の人たちの聞き役をしていたことも分かった。時に、それが話し手の気持ちを軽くしていたことも。僕にはその役割まで担うことができるかわからないけれど、人が集まり、話をしたり聞いたりする場所が僕たちの街にあってもいい。いや、あったほうがいい。だから、両親がやっていたような「人が集まる場所」をつくることにした。蕎麦屋を再開するのが、ロマンチックだしベストなのかも知れないけど、僕が選んだのはタコス屋だ。その理由は、次回以降に任せるが、自宅から歩いて5分程度のこの場所が仕事場になれば、僕の問題は解決に向かう。

開店はまだ少し先だから、この連載では「小さな店のつくり方」をテーマに、思ったことを盛り込みながら準備の様子を追っていきたい。42歳で「ルーキー」となって右往左往する僕の姿が、何かを始めたい人、特に飲食店をスタートさせたい人たちのヒントになればいいと思う。1回目は少しシリアスな自己紹介になったけど、僕も楽しみながら書くから、どうかあなたも楽しんで。だって、深刻な顔でタコスをかじる人なんていないでしょ。人生はいつだって楽しまないと、だ。
プロフィール
阿部太一
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