ライフスタイル

【#4】店とクマ

執筆: 坂本大三郎

2022年3月7日

photo & text: Daizaburou Sakamoto
edit: Yukako kazuno

僕は山形県の西川町で暮らしながら、「十三時」という店の経営もしています。そこでは旅した場所や地元の山形で出会った「自然と人が関わる中で生まれてきたモノを紹介する」ことをコンセプトとしています。2021年からは飲食スペースも併設して、食事やコーヒーも出せるようになりました。

「山伏なのにショップ?」といわれることもありますが、山伏はとても古くから市場に関わっていたし、物流や経済活動を担う存在でした。ちょうど冬の終わりは、山でメイプルシロップが取れる時期です。僕は毎年、雪山に入り、イタヤカエデに仕掛けを設置して、その樹液を採取して、それを50分の1に煮詰めてシロップを作って、お店で売っています。

イタヤカエデから樹液を採取
イタヤカエデから樹液を採取

豪雪地帯なので、カンジキやスノーシューを装着して雪の上を歩きます。イタヤカエデからは大体20キロ程度の樹液が採れ、それを両手に抱えて山を行き来するのは、けっこうな重労働です。また国産のメイプルシロップを作っているところも数少なく、そのためどうしても高額商品になってしまいます。まあ、メイプルシロップに関しては半分趣味のような感じで作っています。

月山のメイプルシロップ
月山のメイプルシロップ

メイプルシロップ作りが終わると、いよいよ月山は雪溶けして、山菜の季節がはじまります。僕の山菜採りのライバルは裏山に棲んでいるクマで、直接出くわすことは少ないものの、採り頃になるまで待っていた山菜を先に食べられてしまうことがよくあります。裏山にカメラを仕掛けてみるとヤツが写り、なかなかのツラ構えをしていました。

裏山のクマ
裏山のクマ

山でこのクマを見かけたとき、山のどのへんに巣があるのだろうと思い、何度か追跡しようとしたことがありましたが、クマは耳も鼻も良く、足も早いのですぐにいなくなってしまいます。巣を見つけるまでいかなくても、今年は、もう少しクマのことを観察できるようになれたら良いなあと思っております。齧られないように気をつけたいです。

プロフィール

坂本大三郎

さかもと・だいざぶろう|芸術家、作家、山伏。千葉県生まれ。自然と人の関わりの中で生まれた芸術や芸能の発生、民間信仰、生活技術に関心を持ち東北を拠点に活動している。著書に『山伏と僕』(リトルモア・2012)、『山伏ノート』(技術評論社・2013)、『山の神々 』(株式会社 エイアンドエフ・2019)等。芸術家として、山形ビエンナーレ(2014、2016)、瀬戸内国際芸術祭(2016)、札幌モエレ沼公園ガラスのピラミッドギャラリー『ホーリーマウンテンズ展』(2016)、石巻リボーンアート・フェス(2020、2021)、奥大和MINDTRAIL(2021)等に参加。

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