トリップ

ニッポン博物館列島 Vol.1

- 北海道・東北編 -

2021年5月10日

illustration: RUMINZ
text: Nozomi Hasegawa
2020年6月879号初出

北から南まで幾千館。もはや日本は博物館の王国だ。
まずはここから。しばらくは博物館には困らないね!

01. 北海道|民族・文化
北海道立北方民族博物館
北極圏は決して不毛の土地でなく、豊かな文化と暮らしの知恵がある。

グリーンランドのエスキモーからスカンディナビアのサミまで世界中の北方民族をテーマにした博物館。トナカイやアザラシの毛皮で作った防寒衣、セイウチの腸で作った防水パーカなど人間の限界を超えた寒さを凌ぐための衣類や、海鳥の肉から作る発酵食品などの未知すぎる食文化が紹介され、北限の世界の暮らしの知恵が垣間見られる。真冬なら帰りに網走名物・オホーツクの流氷を見て彼の地に思いを馳せよう。
北海道網走市字潮見309-1 ☎0152·45·3888

02. 北海道|学術資料
北海道大学総合博物館
学術研究のために収集された見たこともない標本の数々。

ここにあるのは北海道大学が札幌農学校時代から収集した140年分の学術資料。すべて研究目的で収集されたものだから、約3万年前のケナガマンモスの原寸大復元模型に、世界有数の生物標本のコレクションやロウ製の皮膚病模型といったディープな医学標本まで、珍しい展示物がゴロゴロで知的サプライズの連続。加えて化石のレプリカ製作や隕石の組成調査など実際の研究の様子を見学できるのもならでは。
北海道札幌市北区北10条西8 ☎011·706·2658

03. 北海道|音楽・文化
レ・コード館
世界屈指のレコードコレクションは北の大地にあった。

20世紀の文化遺産であるレコードを残したいという思いから、新冠町の音楽愛好家たちが収集を始めたレコードは今や100万枚。国内を中心にした膨大なコレクションから好きな音源を聴くことはもちろん、オーディオマニアから最高音質と呼び声高い国内最大級の「オールホーンスピーカーシステム」や、黎明期の貴重なSPレコードを年代物の蓄音機で聴くといったこちらも文化遺産級の音楽体験を味わえる。
北海道新冠郡新冠町字中央町1-4 ☎0146·45·7833

04. 北海道|民族・文化
国立アイヌ民族博物館
知られざる、そして知らなくてはならないアイヌのすべてがここに。

独断だが、博物館好きにとってのホットトピックは、昨年オープンしたアイヌの文化施設「ウポポイ(民族共生象徴空間)」に立つこの博物館だ。考えてみれば、先住民族アイヌの存在は知っていても、同じ日本に住むアイヌの文化を僕らは知らなすぎる。独自の言語「アイヌ語」も、伝統衣装に用いられる渦巻きの文様「モレウ」も、唯一無二の木彫りの工芸品も、その神秘に一生に一度は触れておきたい。
北海道白老郡白老町若草町2-3 ☎0144·82·3914

※コロナウイルス感染防止対策のため、ウポポイへの入場と博物館展示室の観覧は予約必須。詳細は公式HPにて。

05. 岩手|化石・鉱物
久慈琥珀博物館
宝石として知られる琥珀は、太古のタイムカプセルだった。

樹脂が固まって化石化した琥珀は、時に太古の昆虫や植物など通常は残らないものをその中に閉じ込める。これが太古のタイムカプセルといわれ、宝飾品として人々を魅了する所以。琥珀の世界4大産地である久慈のこの博物館では『ジュラシック・パーク』にも登場した虫入り琥珀や琥珀と一緒に発見された恐竜化石の展示の他、世界でここだけの琥珀発掘体験もでき、まさに琥珀のフルコースが堪能できる。
岩手県久慈市小久慈町19-156-133 ☎0194·59·3831

06. 山形|歴史・民俗
致道博物館
無敗伝説の庄内藩に残る、日本有数の民具コレクション。

無敗伝説を持つ強国・庄内藩酒井家の御用屋敷だった場所にあり、この地の歴史を学べる博物館。明治17年に創建された重要文化財の建物もさることながら、特筆すべきは半端じゃない数の民具のコレクション。藁や布で編んだ「バンドリ」という背負い子や木製酒器、農民の仕事着など、手仕事の温かみと当時の生活の趣を残す暮らしの道具を数多く展示。歩いてすぐの江戸時代の藩校「致道館」も一緒にぜひ。
山形県鶴岡市家中新町10-18 ☎0235·22·1199

07. 福島|福島
いわき市アンモナイトセンター
博物館に名前が残るとしたら、近道はここかもしれない。

約8900万年前のアンモナイトや貝やサメの歯の化石が大量に埋まった化石密集層といわれる地層の上にどーんと博物館を建てたのがここ。その醍醐味はハンマーやタガネといったプロ仕様の道具を使った本物の化石発掘体験で、発掘した化石はもちろん持ち帰り可能。巨大アンモナイトやクビナガリュウのようなレア化石を見つけると家には持ち帰れないが、代わりに名前入りで博物館に展示されるチャンス。 
福島県いわき市大久町大久字鶴房147-2 ☎0246·82·4561