カルチャー

12月はこんな映画を観ようかな。

今年を締めくくるのにうってつけの5作。

2021年12月1日

『偶然と想像』濱口竜介(監)

©2021 NEOPA / fictive

今年8月に『ドライブ・マイ・カー』で度肝を抜かされたばかっりの濱口監督の新作がもう観られるなんて! 『ドライブ〜』では村上春樹原作という大ネタに挑んでいたけど、今作もまたエリック・ロメールを本歌取りしたようなオムニバス作品で、これまた大ネタ。いずれも監督らしい会話を中心に据えた恋愛劇でありながら、これまでで一番笑えるという新境地にも邁進しており、「ブラボー!」と言うしかない。12月17日より全国公開。

『ラストナイト・イン・ソーホー』エドガー・ライト(監)

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“コルネット三部作”(『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』)など、コメディの印象が強いエドガー・ライトの新作は、血みどろのSFサイコ・サスペンス。ファッションデザイナー志望の女性が、60年代のロンドンにタイムスリップしてしまうところから始まる、マリオ・バーヴァfeat『ミッドナイト・イン・パリ』的な1作だ。監督に決行したインタビューが、後日このウェブにもアップされるので、お見逃しなく! 12月10日より全国公開

『パーフェクト・ケア』J・ブレイクソン(監)

©2020, BBP I Care A Lot, LLC. All rights reserved.

主人公のマーラは、自立困難になった高齢者をケアする心優しき法定後見人だ……というのは表の顔で、裏では医師やケアホームと結託し、顧客の資産を搾取しているものすげぇ悪いヤツ。そんな彼女がある老人をターゲットに定めたことから、不穏な出来事に巻き込まれるというサスペンスなのだが、マーラ演じるロザムンド・パイクが、あの『ゴーン・ガール』に勝るとも劣らぬ強烈なインパクト。ケアという言葉が流行している今こそ観るべし。12月3日より全国公開&配信開始。

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』ジェーン・カンピオン(監)

THE POWER OF THE DOG (L to R): KODI SMIT-McPHEE as PETER, BENEDICT CUMBERBATCH as PHIL BURBANK in THE POWER OF THE DOG. Cr. KIRSTY GRIFFIN/NETFLIX © 2021

『ピアノ・レッスン』で女性監督として初めてカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞したニュージーランド人のジェーン・カンピオン監督。その12年ぶりとなる新作は、1920年代のモンタナ州が舞台だ。カリスマ的だが威圧的でもある兄のフィルと、おとなしい性格の弟ジョージは、ともに大牧場を営んでいたが、ジョージがとある女と結婚を決めたことにより、暮らしの歯車が狂い始める。ヒリヒリする人間ドラマをカンピオンらしい繊細な映像美で描き切った傑作だ。12月1日よりNetflixで配信(一部の劇場で公開中)。

『ドント・ルック・アップ』アダム・マッケイ(監)

DON’T LOOK UP (L to R) JENNIFER LAWRENCE as KATE DIBIASKY, LEONARDO DICAPRIO as DR. RANDALL MINDY. Cr. NIKO TAVERNISE/NETFLIX © 2021

アメリカ社会を風刺させたら右に出る者ナシのアダム・マッケイ監督最新作は、宇宙空間をも視野に入れた壮大作。物語の発端は、名もなき天文学者のケイト&ランダルが、彗星の地球衝突を予測したこと。2人は政府に直訴するが、大統領やその補佐官はまったく関心を示さない。その後、呑気な朝のワイドショーに出演しても、SNSで地球滅亡の危機を訴えても、予想外の方向に展開するばかり。しかしその過程は取りも直さず、地球滅亡の危機というテーマを通して、アメリカ社会の問題に肉薄することでもあるだろう。こういう映画を、ジェニファー・ローレンス、レオナルド・ディカプリオ、メリル・ストリープ、ジョナ・ヒル、ケイト・ブランシェット……といったオールスターキャストで活写してしまうアメリカ映画、さすが。12月24日よりNetflixで配信(一部の劇場で12月10日より公開)。