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【#4】「ご近所発、世界へ」を楽しむ。

執筆: フモフモ編集長

2021年10月31日

text & photo: fumofumohenshucho
edit: Yukako Kazuno

 スポーツ観戦は観戦自体も旅行のようなものですが、好きな選手を追いかけていく過程もまた果てしない旅です。はじめはどの選手も学校の部活動や地域のクラブからキャリアをスタートし、市内・県内・全国そして世界へとステップアップしていきます。スポーツが競い合うものであることによって、自然な成り行きで道は世界につながっています。

もちろんすべての選手が世界へ羽ばたくわけではありませんが、応援する側に応援する人数の制限はありませんので、手広く見ていれば、いつかどこかでそういう機会に巡り合います。そうやって出会った相手との世界へとつづく果てしない旅は、喜びと感動にあふれています。

たとえば、卓球の福原愛さんなどは国民全体にとってそういう存在だったと思うのです。幼稚園の頃の愛さんに出会い、娘や孫や妹のように思って微笑ましく見守っていたら、いつしか彼女は中国勢を脅かし、五輪でメダルを争う存在となりました。応援することによって、その過程の全部を我が事として一緒に体験させてもらえました。それは「もうひとつの人生」を体験するような感覚だと思うのです。ちょうど、親が子どもを通じてもうひとつの人生を体験するような。

2016年リオ五輪後のパレードにて、長年見守ってきた「妹」である福原愛さんの晴れ姿を見守る。

 その旅を、より強く「我が事」として感じるには、なるべく早い時期にその人と出会うことが大事だと思っています。プロ野球でも甲子園のスターの愛されっぷりは一段違うものがありますが、相手がまだ何者でもないときに出会うことで心の距離感は縮まります。カンチガイではあるのでしょうが、「私が見つけた」という特別な気持ちにさえなれます。

そういう意味では、ご近所で行なわれる、大舞台でも何でもない試合にこそ、一番大きな宝は眠っているのだと思います。名もなき中学生・高校生の大会や、マイナー競技の試合、ご近所で頑張るまだ何者でもない選手たちとの出会いから始まる「旅」は、スター選手となったあとで出会うよりもたくさんの喜びや感動をもたらしてくれます。

2021年の夏に行なわれた東京2020五輪・パラリンピックではたくさんの選手が脚光を浴びましたが、そうした選手の多くは地域の小さな大会で戦いながら、4年に一度の大舞台を目指しています。家族と友人・知人くらいしか見守っていない大会に出場し、自ら競技用具の設置や片づけをしていることもあります。控え室がないので観客席で次の試合の準備をしていたり、会場そばの食堂で並んで食事をしたりすることもあります(※隣席でコーチからのお説教を受ける選手とともにカレーを食べたなんてことも……)。そうしたご近所での出会いと、世界へ羽ばたいた勇姿のギャップは、「はるばるきたなぁ」と感慨深いものを味あわせてくれます。

間もなく北京五輪・パラリンピックが行なわれ、早くも3年後にはパリ五輪・パラリンピックが行なわれます。こうした大舞台の前に、そこを目指す選手たちとご近所で出会っておくことができたなら、喜びや感動は格別のものとなることでしょう。ちょっとした自慢にもなるかもしれません。

旅立つなら、今。なるべく早く、今。

ご近所への第一歩を踏み出すことで、素晴らしい旅が始まります。

素晴らしいスポーツ観戦という旅へ、どうぞ行ってらっしゃい!

「JAPAN」ジャージの選手が用具の後片付けをするなんて姿が見られるのも、ご近所観戦ならではの光景。
東京2020パラリンピックのパラバドミントンで2冠を達成した里見紗李奈さんの試合をご近所で観戦した思い出は、ちょっとした自慢になりました。

プロフィール

フモフモ編集長

プロフェッショナル・スポーツ・ブロガー。サッカー、野球、大相撲、バレーボール、フィギュアスケートなど日本のスポーツ界を広く生温かく見守るぬいぐるみ。2005年3月にライブドアブログにて「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」を開設、人気サイトに。著書に『自由すぎるオリンピック観戦術』(ぱる出版)がある。

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