TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
LIFESTYLE

【#3】撮影を楽しむ。

2021.10.24(Sun)

 スポーツ観戦を楽しむ際に持っておいたほうがいいなと思う道具はカメラです。記念撮影をするだけならスマートフォンでも十分ですが、望遠がきくようなカメラを携えていると、観戦の充実度はグッと上がってきます。カメラを持っていくことは「スポーツ観戦のコツ」のひとつではないかとさえ思います。

壮観なスタジアムや会場ならではのグルメを記念撮影するのはもちろん、何と言っても選手たちの姿を記録することはのちのちまで残る思い出となります。スター選手の写真を撮影することができたら、自分は確かにこの選手をこの目で見たんだという「宝物」を得たような気持ちになります。

そして、その時点ではスター選手でなくとも、のちのち振り返ったときに「これはあのスターの若き日の姿だった」と気づくこともあります。そんな可能性にまで心を馳せると、どの瞬間も見逃せないような気持ちになってシャッターを切ってしまいますし、それがきっかけとなって好きな選手や推しの選手が生まれることもあります。

2015年、「すごい中学生だなぁ」と思って記録した選手は池江璃花子さんでした。

 豪快なスパイクを決めるところを撮りたい、かっこよくシュートするところを撮りたい、ホームランを打つ瞬間を撮りたい……そうやって撮影ポイントを狙っていくと、自然にプレーの展開を意識するようになります。この選手は大体このあたりの位置でこういう動きをしているのか。この選手はかなり遠目からでも狙ってくるぞ。この選手は初球から打ってくることは少ないのだな。そんな気づきがたくさん生まれます。

何となくわかっていたつもりのプレーも、フレームのなかにおさめようとすると選手の動きが思いがけず大きくてフレームから外れてしまったり、「今だ」と思った瞬間がズレていたりして、よくわかっていなかったのだと気づかされます。シャッターチャンスを狙うことで、その競技を見る目の解像度が上がり、より試合を楽しむことができるようになる効果もあるのです。

スポーツ観戦は「筋書きのない」エンターテインメントですので、日によって観戦体験にはバラつきがあります。奇跡のような勝利に大興奮の日もあれば、目を覆うような大惨敗でトボトボ帰る日もあります。ただ、そんな日でも目を凝らせば「記録したくなるような名場面」はあるものですし、たとえ相手方の選手であっても名場面を記録できたなら自慢の一枚になります。

報道カメラマンが撮影したような素晴らしい出来栄えの一枚ではなかったとしても、むしろその下手さ加減がその日の興奮を伝えてくれます。自分で足を運び、自分で切り取った瞬間を手元に残しておけたなら、その日の体験すべてがまったくのハズレになることはありません。海で泳ぐことはできなかったけれどキレイな貝殻を拾った……そんな気持ちでトボトボ帰る日もやり過ごせます。

昨今はさまざまな競技で撮影が不可となる動きもあり、撮影可能な競技ばかりではありませんが、この素晴らしい楽しみが細々とでも長くつづいてくれたらいいなと思います。映画や音楽コンサートで思い出を切り取ることは基本的にできませんが、スポーツ観戦はまだ、そういう機会を得られる希少なエンターテインメントとして存在しています。めったにはない瞬間を求めて、気長にチャンスを待ちたいなと思います。最高の大当たりの日ほど、不思議と撮影は失敗してしまうのですが。

2019年ラグビーワールドカップで日本代表がベスト8進出を決めた瞬間は、半分影で隠れてしまいました。みんな一斉に立ち上がったものだから……。

大相撲でずっと応援していた稀勢の里関の初優勝が決まった瞬間はデジカメなのにボケボケ。興奮し過ぎたようです……。

プロフィール

フモフモ編集長

プロフェッショナル・スポーツ・ブロガー。サッカー、野球、大相撲、バレーボール、フィギュアスケートなど日本のスポーツ界を広く生温かく見守るぬいぐるみ。2005年3月にライブドアブログにて「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」を開設、人気サイトに。著書に『自由すぎるオリンピック観戦術』(ぱる出版)がある。

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