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いま食べたい – 秋田県八森漁港イナダとアジ –

2021年8月20日

text: Aoi Mitani
edit: Masaru Tatsuki

秋田音頭の冒頭で「秋田名物八森ハタハタ」と唄われることでも有名な八森漁港。冬のハタハタ漁で知られるだけでなく、春はヤリイカやメバル、夏はカツオやスズキ、岩ガキ、アワビ、サザエといった貝類、冬はタラなど、世界遺産・白神山地から流れ込む美しい水と豊かな藻場に恵まれた八森では、実にさまざまな魚種が獲れる。

底曳網漁の禁漁期である7、8月は、但馬丸の船長・山本太志さんにとって釣りの季節だ。釣り船に乗る前に、まずは高台から海を見る。

「海が涌(わ)いてるところを見てるんです」

という。

「海が涌く」とは、魚群が海面に集まる状態のこと。

「そうすると“祭り”が始まる。私はそれを待っているだけなんです」

と山本さんは海面を見つめながらつぶやいた。

この日獲れたのはイナダとたくさんのアジ。今日の“祭り”の主役はどうやらアジだったようだ。中には体長30センチ近いものもある。「今日のは本当にいいアジだ」と山本さんはクーラーボックスを開けてつぶやいた。「アジはやっぱりなめろうっすね。ご飯もだけど、酒が止まらなくなります」と笑う。

神経締めで締めたイナダは血抜きがしっかりされているおかげで生臭さはまったくなく美味。当日は刺身で食べる。「翌日以降ならヅケがいいですね。残ったカマは焼いてもいい」。そう言いながら山本さんは手際よくイナダを捌いていく。

子どもの頃から海や漁船が遊び場だったという山本さん。「魚を獲って食べるという文化。そういう文化の中で育ってきて、次の世代につないでいきたいし。それに、やっぱり楽しいんですよ、漁師」と白い歯をみせるのだった。

「今来ねば、食べらいねっすよ」