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いま食べたい – 宮城県南三陸の銀鮭 –

2021年9月1日

text: Hitomi Ando
edit: Masaru Tatsuki

7月某日、宮城県南三陸町。美しい山々に抱かれた穏やかな内湾が、リアスらしい入り組んだ海岸線に縁取られている。戸倉地区の波伝谷漁港から船に乗り15分ほど進むと、円状に並んだ浮き球が目に入る。銀鮭の生簀だ。漁師たちが浮き玉と浮き玉をつなぐ足場の上に立ち、網をひっぱると、銀灰色の背が海面いっぱいに浮かび上がり、勢いよくしぶきを上げた。7~8mほどの生簀の中に実に30000匹もの銀鮭が養殖されているという。

「絶対あの中には落ちたくないな・・・」

危ういバランスの中で作業する漁師たちを見て思わず息を呑んだ。

「あ、俺、今年一回落ちてます」

あっけらかんと笑うのは、今回、漁に同行させてもらった佐藤将人さん。家業を引き継ぐ形で銀鮭漁師になって2年目。実は、料理人というもう一つの顔をもつ。京都の料亭で修行した後、仙台の創作料理の店でキャリアを積み、現在は町内のワイナリーで週末のみシェフとして腕をふるっている。

そんな将人さんに、とっておきの食べ方を紹介してもらった。名付けて「銀鮭の生ハム仕立て」。新鮮なうちにさばいた銀鮭を、塩味のきいた調味液につけて、3日間冷風にあて水分を出す。身が締まり、より旨味が強く感じられる。新鮮な生魚をあえて熟成させる手法は、水揚げ後の締め方から保管まで全てコントロールできる生産者ならではだ。

「おらほの自慢の銀鮭、食べてみらい!」