TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】楽しく仕事をするための「簡易的即席手仕事考」

執筆:大橋和彰

2026年11月5日

 なぜ、こんなに仕事は楽しいのか?
 
 僕なりにいつも考えていることだ。バカなことを言っていると思われるかもしれないけど、とにかく楽しい。最終話はそれの所以をひとつの視点で考えてみたいと思う。ある種の思考実験なので気軽に受け取ってみて欲しい。

 まず、仕事も遊びも楽しむためには工夫が必要だ。油断すると仕事は辛いもの、できればやりたくないもの、そんな考えになりがち。これは上手くないだろう、修行が足りていない。なんでも上手く考えよう。「仕事が辛くて、遊びは楽しい」という2つの間をなんとか近づけられないものか。

 工夫のひとつに、「即席的な仮説仕事」があると思う。順を追って説明してみる。例えば、日射しが強いから日陰を作るためにタープを張る。これはキャンプやピクニックという遊びのシーンでも使う技術で、「とても良いタープ」があれば解決する。しかしなければ、その場にあるシート的なもの、紐的なものを探して間に合わせるはず。この「間に合わせる」というのがポイントだ。

即席日除け

 まずもって、良い道具と良い準備は基本にある。でも、その準備が足りなかったときにアドリブが効くのか? という点こそ大事なのだと思う。むしろ、この対応力のようなものをたくさん身に付けることによって、仕事が遊びの要素と重なり、楽しくなる。あるものを即席で組み合わせ、一旦その場を乗り切るための造作。外遊びの延長だと思えばいい。

 僕たちのような現場仕事では、雨が降ってくる、日射しが強過ぎる、足元が悪い、寒い、暑いなど、つらい環境下でも物を作らなくてならないことが多々ある。そして、それを鵜呑みにしていたら楽しめない。無理にでも「なかなかやりがいがある状況だなぁ」とか言わなきゃいけない(笑)。間違ってもキツイとか、マジかよとか言ってはいけない。パワハラとかブラックとか、そんな話じゃなく、「辛い環境下をどう楽しむのか」。それを試されている。

 そんなことを乗りきるために役に立つのが「簡易即席的手仕事」だ。この感覚を教えてくれたのはとある年配の職人さんだった。仮にRさんとしよう。

 左官仕事は塗る技術だとも言えるけれど、まず現場の環境を整えることが、塗ったり、仕上げたりすることに大きく影響する。Rさんは、そんな工夫をたくさん知っていたし、簡単にその場であるもので作ってみせた。だから一緒にやるうちに、自然と「今からの天気だとこっちに日が差すからシートを垂らしておこう!」「屋根の上を塗るときは材料を置く場所を先に作ろう!」など、一見自分の仕事とは関係ないような造作を常に考えるようになっていた。そして、工夫こそが仕事を楽しむ秘訣だと年々思うようになった。

 さらに、もう一つオススメがある。それは「簡単な道具を作ろう」ってことだ。

 先述したとおり、もちろん良い道具を買うことも大事な基本だけど、今回は簡易即席的に考えて、「あえて自分で作る」ことを薦めたい。

 何でも売っている時代に、自分で作る意味なんてあるの? と思う物でも僕は作ろうと考える。買ったら駄目とかではなく、仕事をワクワクするものにするために、わさわざ作ってみよう、という提案だ! 買ったほうが安いかもしれない。でも、何でも売っている世の中になったのは、たったの30年とか50年だとすると、その前はみんな手作りしていたということがわかるはず。

 手作りの道具はいい。これは仕事を楽しむのに役に立つ。特に器用じゃなくていい、売ってるものほど端正でなくていい。なんなら不格好な方がいい。

砂や水とかを掬う道具。鉄板を丸めて柄をつけるだけでもいい道具になる。

 作り始めるとき、最初から上手くいくと思っている自分との対決ぐらいのテンションがちょうどいい。道具を作ると、使いたくなって、早く仕事に行きたくなって、使うと改善点が見つかる。だから、また作る。道具の素材を探してみて、素材の特性、入手先、加工性を考えるようになる。それは次の今後の仕事にも生かせるし、そうして改善した道具は使いたくなる。早く仕事をしたい。だから楽しくなる。

 左官の仕事は大変だと思われているし、たしかに大変なことも多い。だからこそ、楽しむための手仕事を携えて現場に挑もう! 自分で道具を作ると、それを試したくてワクワクしてくる。さあ、次の現場はどんな工夫と道具で楽しもうか!

 皆さんも身近なものを作って、仕事に挑みましょう!

プロフィール

大橋和彰

おおはし・かずあき|1983年、東京都生まれ。中学から高校生まではファッションに興味を持ち、学校をサボり原宿と神保町に通う。その後、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、南米などを旅をしたのち、さまざまな建物、暮らし、食に刺激を受け、農業、造園業、左官業の3択で迷った結果、2005年に左官の道へ進む。10年の下積みを経て2015年、独立。現在は妻と子供4人と犬とニワトリとアヒルと暮らす。左官を生業に、山を開拓する日々を送っている。

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