TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】左官ってなんですか?

執筆:大橋和彰

2026年10月15日

 はじめまして。『大橋左官』の大橋和彰です。荒川区東尾久を拠点に左官の仕事をしています。と聞いても、きっとこう思うはず。

「左官ってなんですか?」

 ぶっちゃけ、僕も左官屋になるまでわかりませんでした。説明すると、みんなが住んでる家や近くのお寺、マンションやお洒落なレストランなど、ほとんどの建物に何かしら左官屋さんがかかわっていると思います。

レストランカウンター

山梨県にて。アバウトで美しい仕事

現代的な漆喰解釈

 左官の歴史はすごく古く、世界中に同じような建築技術を持った人が居るので、左官を深く知ると、世界中の何処の建物みても「これは左官だな」と思えてくるぐらい広いです。なんせ今みたいに建築や建材が工業的に作られたり、輸送手段が豊富になるまでは、その辺の土とか、木、石、草等を組み合わせて建築は作られていました。

 そして、左官の原料はそういった「土」と「砂」と「藁」です。その辺にある何でもない物を混ぜて暮らしの器である家を作る。このそれぞれは建築のために存在するわけじゃなく、野にある物を混ぜ合わせる知恵や自然のなかで使えるものを見極めることが、左官として本当に大事な部分だと言えます。少し紹介するつもりがいきなり本気の話になってきてしまいました。

 もう少し続けます。現代では「表面を綺麗に塗ったりする技術でしょ」と思われがちで、それも間違ってはないし、世界的にみても日本の左官の塗る技術は高いと思いますが、それよりも素材を扱う部分が最も面白く、可能性が広がる部分だと思っています。しかし、今の左官業界では素材から自分で扱う人が極めて少ないのが現状です。

作業風景

 僕はこの“可能性”という言葉に惹かれてイチから作るのですが、これは先述した「素材の可能性」と、ある名人が言っていた言葉によるところが大きいです。

 その方はお会いした20年ぐらい前にはもう引退されていたので、仕事を一緒にしたり、教わったりする機会はなかったものの、言葉にはいつも感銘を受けていました。曰く。

「プロってのは失敗しない人だよ、俺はプロじゃなくて職人なんだよ。だから失敗しても良いんだよ。職人てのは可能性なんだよ!」

 たしか雑誌のインタビューで語っていた言葉だったと思います。それを読んでからというもの、自分で材料を作り、上手く行くか分からない配合で提案するように。さらには周りが出来ないと断るような案件も何か考えようによっては出来るんじゃないか? 可能性を考えよう! と、そんな挑戦と好奇心を混ぜて前進する術を学んだ気がしてます。僕には直接学んだ職人さん以外にも勝手に尊敬している師匠的な人やその方たちの言葉がたくさん蓄積されています。

 そうしたどこか不思議と忘れられない言葉に勇気づけられて、毎日、左官の魅力にとりつかれながら今日も試作を作ってます。

富士の裾野で酪農家さんと土採取

プロフィール

大橋和彰

おおはし・かずあき|1983年、東京都生まれ。中学から高校生まではファッションに興味を持ち、学校をサボり原宿と神保町に通う。その後、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、南米などを旅をしたのち、さまざまな建物、暮らし、食に刺激を受け、農業、造園業、左官業の3択で迷った結果、2005年に左官の道へ進む。10年の下積みを経て2015年、独立。現在は妻と子供4人と犬とニワトリとアヒルと暮らす。左官を生業に、山を開拓する日々を送っている。

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