TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】ステゴロから見る都市の再発見

執筆:國澤博司(まんだらけ)

2026年11月2日

まんだらけ


text: Hiroshi Kunisawa(MANDARAKE)
edit: Miu Nakamura

まんだらけに入社してすぐの頃からコミックスのデータベース化の作業に関わっています。さまざまなコミックスレーベルの中でも、絶対自分がモノにしてやろうと心に決めていたのが芳文社コミックス(旧マーク)です。芳文社コミックスの旧マークは新岡勲「ゴキブリ刑事」、福谷たかし「独身アパートどくだみ荘」、緒方恭二「マル暴株式会社」といった作品たちを擁する快楽や道楽に溺れる生活を恥じず豪快に生きるスタンスを信条にしたコミックスレーベルです。amazonが立ち上がってすぐの頃で現在のようにデータも多くなく、所蔵機関の蔵書があてにならないタイプのコミックスなので、レーベルがスタートする1972年あたりから現在に向かって芳文社の雑誌の単行本リリース情報を調べてリスト化していきました。その作業の中で「新宿雀鬼」「私設新宿警察」「新宿夜泣き川」など、アウトロー系の劇画は新宿を舞台したものが多い事に気付き、「新宿闇法師」や「殺し屋1」など他の出版社の作品も含めた”新宿を舞台にした劇画作品=ジュクゲキガ”を集めてマルチバース化できないかと考えていたことがありました。

もちろん実現はしませんでしたが、それだけに新宿を舞台にした劇画には格別思い入れがあります。
私のおすすめしたいジュクゲキガの最高峰が「新書ワル」(原作:真樹日佐夫 劇画:影丸譲也)です。

連載期間は1987〜1992年。前作にあたる「ワル」との一番の違いは舞台が架空の街から、実在する街へと移動したこと。
まだ都庁は建設中で、歌舞伎町に中国系のマフィアが進出してきた時代です。
90年代の新宿の風景の中での主人公氷室洋二と大日本新宿同盟の抗争が素晴らしく、ダンボール村のホームレス達のコミュニティを使って新宿の地下道を封鎖し警察の介入ができないバトルフィールドを作り上げたり、花園神社での明け方の決闘には朝日の昇る方向を背に奇襲攻撃を仕掛けたりと、当時の新宿ステゴロスポットマップになっていてこれ以上に新宿という街でのバトルに真摯に向き合った作品は他にないでしょう。

原作者である真樹日佐夫の武勇伝はネット上にいくらでも上がっているので、ここであれこれ書く必要も感じませんが、刃牙の花山薫のモデルになった安藤組の花形敬と引き分けたエピソードだけでもその凄さが伝わると思います。

スケーターがスケートを通して街が見えているように、真樹先生の目にはステゴロを通して街が見えていた。そう確信できる作品です。

プロフィール

【#4】ステゴロから見る都市の再発見

國澤博司

くにさわ・ひろし|1976年生まれ。ヴィンテージコミックス部門所属。うめだ店にアルバイトの面接に行き社員として採用され今に至る。

好きな漫画のジャンル:昭和40年ごろの劇画雑誌


まんだらけ

漫画、アニメ、玩具などのサブカルチャー商品を取り扱う、日本最大級のコレクターズショップ。今回は、ヴィンテージ漫画を担当するスタッフ4名が、リレー形式で漫画を紹介してくれる。

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