TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】隠れたホラーマンガの大御所

執筆:高橋一成(まんだらけ)

2026年10月19日

まんだらけ


text: Kazushige Takahashi(MANDARAKE)
edit: Miu Nakamura

今も昔も変わらずに人気のあるジャンル『ホラー』。
表舞台の主役といえば、やはりゲゲゲの鬼太郎を生んだ水木しげるだったり、”少女怪奇”を確立させた楳図かずおを筆頭に、芸術性も高い日野日出志、ホラー専門の少女雑誌から誕生した御茶漬海苔、犬木加奈子や関よしみ、今では世界的にも人気の高い作家である伊藤潤二らが挙げられるのではないかと思います。

今回、ご紹介するのは90年代一歩手前に漫画家引退をした作家、好美のぼる。
大正13年生まれ平成8年没、戦後間もないころから画家・漫画家として活躍、古くは紙芝居、そして貸本から少女漫画雑誌・青年向け雑誌、児童書までその幅広い活動により手塚治虫の作品数に匹敵するであろう、延べ300冊以上の単行本を手掛けたと言われている作家です。
1989年に筆を折るまでその追随を許さず生み出した独自の世界観は、彼のフィルターを通して作品になることで唯一無二のものとなり、他では味わえない魅力があります。

「あっ!生命線が切れている」(1984年発行)
「怪奇!手相コミック」第一弾。死んだ息子の恨みを晴らすべく手相の占い師となって近づいた老婆の下へ恋仲を占いに行く女子学生2人と、意中の同級生が手相を入れ替えられ…
荒唐無稽な物語性とそのパワーは齢60にして衰えることを知らない勢いで駆け抜ける1冊。手相を入れ替えることで復讐を成就させる、というアイディアはこれが初の漫画でしょう。
彼の真骨頂はやはり昭和30-40年代に大量に出版された作品群と言いたいですが、この時代の作品も集大成という雰囲気が感じられます。手相でシリーズ化とか、肌着や生理用品などを題材にホラーマンガを描けるのはやっぱ好美先生じゃなきゃ行きつかない領域。
晩年に作品の発表の場としていた、立風書房レモンコミックスというレーベルは氏の作品の中では比較的目にするものなので手に取っていただきたいものです。全10作品。

わたしはホラーマンガが得意ではなく、それゆえに現在の作品は到底本を開くことさえ怯えてしまう作品が多く完成度が高い。しかし、実力が伴わくとも人に恐怖を与えようと、楽しませようとする作品に愛を感じ、その最たる作家の一人がこの好美のぼる。
よくわからないし、何か感動する(決して怖くはない)。考え方は人それぞれですが、こんな稀有な作家、手塚治虫や鳥山明、大友克洋に並ぶといっても過言ではありません。

プロフィール

【#2】隠れたホラーマンガの大御所

高橋一成

たかはし・かずしげ|1985年生まれ。まんだらけ渋谷店店長。大学留年中に漫画のおもしろさ・奥深さに夢中になり、入社。今なお飽きることなく新しい発見を追求中。

好きな漫画ジャンル:バトル漫画
好きな漫画作品:水島新司/ドカベンシリーズ


まんだらけ

漫画、アニメ、玩具などのサブカルチャー商品を取り扱う、日本最大級のコレクターズショップ。今回は、ヴィンテージ漫画を担当するスタッフ4名が、リレー形式で漫画を紹介してくれる。

Official Website
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