カルチャー
VERDYが考える、あたらしい郵便のかたち。
心斎橋パルコにできた「Verdy’s Postal Service」って何だ!?
2026年10月7日
photo: Naoto Date
text: Neo Iida
大阪から世界中へ、手紙を送ろう!
DMもLINEもメールも、送ったと同時に相手に届く。もちろん便利だけれど、誰かの顔を思い浮かべながら言葉を選び、文字をしたため、ポストに投函するまでの時間には、デジタルにはないワクワクがある。そんな体験ができるのが、心斎橋PARCOの地下1階にオープンした「Verdy’s Postal Service」だ。
グラフィックアーティストのVERDYとPARCOが作った手紙がテーマのニュースポットであり、ポストカードやグリーティングカード、ペンが並ぶほか、オリジナルポストから実際に郵便物を投函できる。VERDYにとって初めてのレギュラーショップは、どうして“郵便局”になったのだろう。
海外の街で見たポストカードから始まった。
——今回のプロジェクトは、どんなところから始まったんですか?
VERDY 心斎橋PARCOがオープンするタイミングからPARCOとは付き合いがあって、地下の壁に自分のイラストやデザインを入れて定期的に変えたり、オープニングのときに一緒にステッカーを作ったりしてたんです。ポップアップもやらせてもらいましたし、ずっといい関係が続いていて。「もっと面白いことをしたいよね」みたいな話をしていたとき、ふと「ポストを作りたいな」と思ったんですよね。
しかも日本郵便オフィシャルの、本当に使えるポストがPARCOの中にある、というのがやりたかった。お店を作るだけなら自分だけでもできると思うんです。でも僕は本当に小さいチームでやっているから、オフィシャルのポストを作ろうと思ってもなかなかできない。今回PARCOが協力してくれて実現できました。
——「ポストを作りたい」が最初にあったんですね。
VERDY そこからは自然に思いついていったんですよね。もう覚えてないくらい。海外に行くと、街中のお土産屋さんとかキオスクでその街のポストカードを売ってるじゃないですか。パリだったらパリのカードがあって、その場で買って手紙を出せる。日本にもあるけど、あまり一般的ではないなと思っていて。大阪に行って大阪のポストカードを買って、その場で書いて送ったら楽しいなと。PARCOチームに相談したら「面白いね、やってみよう!」となって始まりました。
——ここで書いた手紙が、本当に郵便として届くわけですね。
VERDY そうですね。例えば大阪に行ったときに家族に書いて送るとか、海外から大阪に来た人が家族に書くとか、そういうきっかけになればいいですね。自分もこれをきっかけに手紙を書く回数を増やしたい。昔は毎年、絵を描いて年賀状を送ってたけど、いつからかSNSで画像を作って送るだけになっちゃったので。今年は久しぶりに年賀状を書いてみようかな、と思ってます。
——心斎橋PARCOというメジャーな場所で郵便をやるというのもいいですよね。
VERDY そうなんです。それがいいなって。僕が大阪の谷町でやっているピザショップも、目的がないと来ないような場所なんです。昔はそういう所で何かをやりたかったし、自分の活動を好きな人が来てくれればいいと思っていた。でも今はもっといろんな人に見てもらえたらいいなと感じ始めてて、ちょうどPARCOと一緒にやろうというタイミングと重なったのかなと思います。
VERDYが考えた「架空の郵便局」。
——ロゴや店内のグラフィックは、どういうイメージで作ったんですか?
VERDY 最初はアメリカや海外のいろんな郵便局を見て「こういうビジュアルがいいかな」と考えていました。郵便局を模したら可愛いかなと。でも、せっかく自分でやるんだから、そこに引っ張られすぎないほうがいいなと思って、ショップのデザインは自分が思う架空の郵便局をイメージして作りました。何かに寄せるというより、自分らしいものにすることを心がけましたね。
——このロゴの筆記体もVERDYさんらしさ全開ですね。
VERDY ロゴは自分らしいタイポグラフィにしました。手描きだから鉛筆とかペンがいいなと思って、イラストにしたときはペンより鉛筆のほうが可愛かったので鉛筆にしています。
——店のイメージカラーを深いグリーンにしたのは?
VERDY これは直感ですね。内装案を見たとき、このくらい深いグリーンなら落ち着いていていいなと。落ち着いた空間の中に、ポップなポストがあるのがいいなと思ってこの色にしました。
——確かに。そんな空間に置かれる肝心のポストですが、かなりインパクトがありますね。
VERDY 最初はもっと赤くて、いわゆるポストに寄せたデザインだったんです。でもなんだかしっくりこなくて、「せっかく自分で作るんだから……」と考えていたときに、郵便ポストとしての仕様を確認したら、郵便物をちゃんと入れて回収できないといけない機能上のルールはあるけど、外側にはそこまでルールがないことがわかって。それならもっと面白くて可愛いものにしようと思って、最終的に3つのキャラクターが合体してひとつになっているような、カラフルなポストになりました。
——この3体のキャラクターには設定や名前はあるんでしょうか?
VERDY ないんですよ。名前はそのうち付けると思いますけど、今はまだなくて。
——VERDYさんが描くキャラクターはどれも可愛らしいですが、誕生させるときにバックボーンや性格まで決めるんですか?
VERDY 全然考えないですね。フォルムだったり、何がベースかは考えますよ。例えば猫やネズミみたいに、すでに有名なキャラクターがいるところには入りたくないから、何か2つの動物の要素を混ぜたりします。でも性格とか設定とか名前は決めません。キャラクターと一緒に育っていく、という感じですね。
——なるほど。あえて決めすぎないんですね。
VERDY そうですね。キャラクターってガチガチの設定のもとに生まれるものも多いけど、自分はもっと自然に作りたい。ルールや性格を決めすぎると自由ではなくなってしまう気がするので。
——そのほうが楽しいですもんね。どんなキャラなんだろうって想像できて。
VERDY 余白を残しているので、買ってくれる人や見てくれる人が、それぞれのストーリーを考えてくれたら嬉しいです。Wasted YouthやGirls Don’t Cryも含めて、それが自分のスタイルだと思っています。
——3体を合体させた形は、どうやって生まれたんですか?
VERDY ポストとして機能しないといけないので、中に手紙を収容する縦長の箱を入れないといけないんです。だから必然的に縦長の容器になるんですが、そのまま考えるとキャラクターも縦長になって、デザインに制限が出る。僕は正方形とかキューブっぽいキャラクターのほうが可愛いと思うし、普段もそういうものを描くことが多いので、だったら3体が合体してひとつにしたらいいんじゃないかと。今後、消しゴムやハンコを作るような展開も期待できそうだし、そこに落ち着きました。
——そう考えるとこのポストは、キャラクターであり立体作品でもあるわけですね。
VERDY そうですね。3D造形は韓国の個展でも立体制作をお願いした櫻井 誠さんにお願いしました。2Dのイラストを3Dにするのって非常に難しいんですが、そのときに生じる矛盾を調整する技術がものすごくて。特に今回はポストなので、内部構造や、常設物としての安全性も踏まえて造形してくれています。自分の立体作品を常設で展示したことはないので、どんなふうに空間に馴染んでいくか、僕も楽しみです。
DMに埋もれない、手書きの熱量。
——今、手紙でコミュニケーションする良さって、どんなところにあると思いますか?
VERDY 気持ちが伝わりやすいのかなと思いますね。誕生日でも、メールやLINEより手書きの手紙を貰ったら嬉しい。韓国で個展をやったときもファンの方が手書きの手紙をくれて、熱量を感じたんですよ。母国語じゃない日本語で頑張って文字を書いてくれていて、すごく嬉しかった。今はSNSがきっかけで誰かと繋がったり、仕事に繋がったり、いいこともたくさんありますけど、LINEもInstagramのDMもEメールもあると、重要なメッセージが埋もれて見逃してしまうことがある。その点手紙は実際に触れることができるし、目に留まりますよね。
——VERDYさんのグラフィックも、手描きの線やペンのタッチがあるから、手紙と相性がよさそうです。
VERDY そうですね。すごくマッチすると思います。今回もいろいろ作っていて、シンプルなタイポグラフィのものとか、「Happy Birthday」みたいに普通によく使うカードも作っています。
——大きなバースデーカードもありますね。
VERDY アメリカのスーパーに行くと、こういう大きなグリーティングカードがたくさん売られているじゃないですか。先日、友達にこのプロジェクトの話をしていたら、「昔くれたヨーダみたいなのは作らないの?」と言われて、「それ作ろう!」って。そういえば昔、ヨーダのすごく大きいバースデーカードを買って友達に送ったのを思い出して。これは郵送するというより、プレゼントと一緒に渡せたらいいなと。硬い紙を使ってるので立てて飾ってもいいですしね。
——めちゃくちゃ素敵です。郵便で送るだけじゃなく、贈り物としてもぴったりですね。
VERDY そのイメージももちろんあります。手紙とポストがメインなんですけど、こういったカードも色々置きたくて。季節のカードがあったら楽しいですよね。常設のお店なので、いろんなものを作って挑戦していきたいです。
“わざわざ行く場所”から、いろんな人が通る場所へ。
——ショップではアパレルも展開しますよね。
VERDY はい。自分はTシャツをデザインするのが一番好きなので、お店をオープンするなら絶対Tシャツもやりたいと思いました。ユニフォームは〈doublet〉にお願いしていて、〈doublet〉が作ったTシャツも発売します。
——手触りがとてもいいですね。〈doublet〉に依頼したきっかけは?
VERDY 僕は最近、仕事で「ワクワクすること」をすごく意識しているんです。自分が興味はあるけど直接そこまで接点がないとか、みんなが予想していない人とやりたい。PARCOチームと話している中で、「〈doublet〉にお願いしたら面白くて楽しいものができるんじゃないでしょうか」と提案してもらったんです。このプロジェクトは自分の名前がついていますが、あくまでPARCOのチームと一緒になって作り上げているので、お互いのコネクションやいいところをシェアできたらいいなと思っているんです。
——心斎橋から始まるプロジェクトですが、今後はどうしていきたいですか?
VERDY いろんな場所にショップが置けたらいいなとふんわり思ってますけど、まずは心斎橋をしっかりやりたいですね。定期的に新しいものを出したり、ハロウィンのポストカード、クリスマスのカードを作ったり。自分がクリスマスにプレゼントと一緒にカードを送りたいと思ったとき、「あそこで売ってるから買いに行こう」と思える場所にしたいです。大阪に来る機会がある人や、大阪に住んでいる人は、ぜひ見に来ていただけたら。そこで手紙を書いて、大切な人に送ってもらえたら嬉しいです。
最後に、VERDYさんからPOPEYE読者へ直筆のメッセージをもらったよ。みんなも手紙を書いてみよう!
インフォメーション
Verdy’s Postal Service
心斎橋PARCO地下1階にオープン。VERDYとPARCOによる、手紙の価値を現代のカルチャーとして捉え直す共同プロジェクト。VERDYがデザインしたオリジナルポストを設置し、その場で手紙を書いて投函できるスペースを用意。ポストカード、グリーティングカード、ステーショナリー、雑貨などを展開する。
場所: 心斎橋PARCO 地下1階
展開商品: ポストカード、ステーショナリー、雑貨ほか
公式HP: vsps.parco.jp
Instagram: @vsps_parco_official
VERDY
ヴェルディ|1987年、大阪府生まれ。グラフィックアーティスト。「Girls Don’t Cry」「Wasted Youth」のファウンダーであり、オリジナルキャラクター「Vick」「Visty」のプロデューサー。ファッションブランドや企業とのコラボレーション、イベントやブランド、ホテルのクリエイティブディレクションなど幅広く活動する。
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