トリップ
手の旅のはじまり。
写真・文 坂口恭平
2021年7月7日
photo & text: Kyohei Sakaguchi

コロナウイルスのおかげでどこにも外出できずに家にいる人が多くなっているでしょうが、それこそそんな疫病が流行するとかしないとか関係なしに、たびたび鬱になるので自宅待機のプロになってしまった僕が今回は家で過ごすコツのようなものをお伝えしたいと思う。
人間その場にずっと立ち止まったままだと狂ってしまう。考えることよりも、動くことが必要なのである。しかし、今は外に出られない。そんな時は太古の僕たちをイメージしてみよう。四つ足で動いていた頃まで遡ろう。つまり手も昔は足だった。どこにも移動できない今、手を使ってどこまでも旅をしてみるのはどうだろうか。
これが僕が提唱する「手首から先運動」である。手で何をするのか。手で「作る」のだ。作るって何を?私は芸術家でも職人でもない、と困っちゃう人もいるかもしれない。そんな人でも、誰でも取り組むことができる創造。それが料理なのである。家でできる、その辺にあるものだけでできる、定期的に腹が減る、その都度完成する。寝込んでしまった僕はいつも料理をすることによって、少しずつ元気を取り戻していった。
まずはインスタントラーメンでもなんでもいい。なんせ僕が提唱する「手首から先運動」としての料理は、技術や味は関係ない。とにかく手を動かすことが目的なので、食べることよりも、料理をする行為自体が重要なのである。僕は料理をすることで「人間は頭ではなく、手で考えている」ということに気づいた。それがきっかけとなって、手だけでなく体全体で考えていることにも気づいていった。頭で考えるなんてナンセンスだから、もうこの際やめて、みんなでがんがん料理をしよう。
何を食べたいかを想像してみるだけで、料理ははじまる。食べたいものを作る。想像したものを、自分の手で作って、目の前に出現させる。それが面白い。僕もこれまで色々やってみた。うどんも蕎麦も打ったし、大福も作ったし、ロールパンも作ったし、昨年末はおせちまで作って元旦に食べた。どうやって作るのかってウンチクが増えると、それだけで体の調子が良くなる。料理からはじまった「手の旅」は、今やセーターや織物やガラスの器やしまいにはギターまで作るようになって果てしない。
どんなに過酷な状態になっても、人間は料理をして生きのびてきた。つまり手を動かして、何かを作って袋小路の中でも新しい道を見つけ出してきた。どうしようどうしようとパニックになって頭を抱えているその両手で、すぐさま旅をはじめるのだ。
プロフィール
坂口恭平
ピックアップ
PROMOTION
11月、心斎橋パルコが5周年を迎えるってよ。
PARCO
2025年11月10日
PROMOTION
ロンドン発 Nothing のPhone (3)は新しいスマホの最適解。
Rakuten Mobile
2025年12月1日
PROMOTION
「伝説の広報誌『洋酒天国』を語る夜」レポート。
NORMEL TIMES
2025年12月8日
PROMOTION
心斎橋PARCOでパルコの広告を一気に振り返ろう。
「パルコを広告する」1969-2025 PARCO広告展
2025年11月13日
PROMOTION
紳士の身だしなみに、〈パナソニック〉のボディトリマーを。
Panasonic
2025年12月3日
PROMOTION
秋の旅も冬の旅も、やっぱりAirbnb。
Airbnb
2025年11月10日
PROMOTION
6周年を迎えた『渋谷パルコ』を散策してきた!
SHIBUYA PARCO
2025年11月22日
PROMOTION
富士6時間耐久レースと〈ロレックス〉。
ROLEX
2025年11月11日
PROMOTION
職人技が光る大洋印刷とプロのバッグ。
Taiyo Printing
2025年11月8日
PROMOTION
レゴ®ブロックの遊び心でホリデーシーズンを彩ろう。
レゴジャパン
2025年11月28日
PROMOTION
〈バルミューダ〉のギフト、ふたりのホリデー。この冬に贈るもの、決めた?
BALMUDA
2025年11月21日
PROMOTION
〈チューダー〉の時計と、片岡千之助の静かな対話。
Finding a New Pace feat. Sennosuke Kataoka
2025年11月28日
PROMOTION
〈バレンシアガ〉Across and Down
Balenciaga
2025年11月10日
PROMOTION
〈glo™〉の旗艦店が銀座にオープン! 大人への一歩はここからはじめよう。
2025年12月4日
PROMOTION
新しい〈シトロエン〉C3に乗って、手土産の調達へ。
レトロでポップな顔をした、毎日の相棒。
2025年11月11日