ファッション

エルメスのレザーグッズ

使ってわかるクラシックの格式。

2026年1月3日

マイスタンダードの見つけ方。


illustration: Dean Aizawa
text: Sana Tajika, Yoshikatsu Yamato
edit: Yasuyuki Takase
2025年9月 941号初出

メンズファッションにおいて、歴史に裏打ちされた名品と呼ばれるものは総じて高い。とびきり高い。果たして、どれほどの価値があるのか。実際に使う人はこう語る。

〈エルメス〉は1837年、馬具工房としてパリで誕生。上質素材と卓越した職人技を軸に、馬具作りで培った技術をバッグや小物へと展開し、世界的なラグジュアリーメゾンへと成長した。

 初めて〈エルメス〉のアイテムを迎え入れたのは、10年前のハワイ旅行。1枚のレザーを折り込んだ縫い目のない美しいカードケース「カルヴィ」が、僕のファーストエルメスになりました。当時はちょうど『ポパイ』の表紙イラストを担当させてもらった頃で、今後の仕事に対して意気込んでいて。そうした状況が決断を後押ししたのだと思います。それを機に、その後は〈エルメス〉のレザーグッズを少しずつ買い足していきました。カードケースの次に揃えたくなったのは財布。まず、仕事用の財布として二つ折りの「シチズン・ツイル」を買いました。僕は財布に厚みが出るのがあまり好きではなくて、カードと紙幣だけをすっきりコンパクトに携帯したい。そういうわけで、小銭入れとして「ル・ヴァンキャトル」も一緒に買うことにしました。これが本当に優秀なんです。がばっと大きく開くのに、じゃばらがストッパーのようになって小銭が飛び出しにくい。ミニマルでありながら、よくできたデザインです。1代目のイエローはスナップボタンが壊れてしまったので、2代目としてターコイズカラーのものを買ったくらい。どの色も発色が鮮やかで美しいので、気に入ったものがあれば、また買い足していくのも楽しそうです。そして次に買ったのが、この中で一番の大物、「ドゴン」の財布。実は、最初からこちらを本命としてずっと狙っていました。使いやすさは別として、純粋に見た目が好きなんですよね。クロージャーも他では見ないユニークな作りで。それが、ある日店に立ち寄ったら、たまたま置いてあったので、今だったらなんとか手が届くかもと、思い切って買ってしまいました。この財布は一生使い続けようと決意するくらいの気概でした。でもやっぱり、3、4年くらいするとへたり始めてきてしまったんですよね。同じものを新調しようと、あらゆる場所を探しましたが、なかなか見つからなくて。日々、店舗やオンラインをエルパトしながら、また「ドゴン」に出合える日を心待ちにしていながら、さらに使い続けていたら、革の味わいがますます増して、手にもよく馴染んできました。財布を手にするたびに、しっとりと肌に吸い付くような革の手触りに癒やされるし、お茶をしてるときに横に置いていると、財布が目に入って、ちょっとだけ気持ちがよくなります。他のブランドの財布でもこれを超えるものがなくて、結果的にずっと「ドゴン」に一途でいます。その他にキーホルダーも持っていて、それは息子に譲る予定です。そうして次世代に受け継ぐこともできる。どこかアノニマスなところもあって、これ見よがしに主張しない潔さも〈エルメス〉のレザーグッズならでは。財布にしてもカードケースにしても、飽き性の僕が使い続けているのは、そうした魅力に惹かれるからではないでしょうか。

プロフィール

長場 雄

ながば・ゆう|アーティスト。映画、アート、音楽などをモチーフにした、白黒のラインだけで構成された作品が特徴。広告やアパレルブランドとのコラボレーション作品なども手掛け、国内外で活動。