TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】夏の決意

執筆:飯尾和樹(ずん)

2025年9月3日

今日の昼は絶対にカツ丼を食べると決めていました。

それは昨夜、相方のやすからもらったDVD、映画『幸福の黄色いハンカチ』(主演 高倉健 1977年公開)を観たからです。
公開から48年経った今でも、面白く色褪せず、毎年1回はこの夏の時期に観ています。
舞台は北海道で、冒頭のシーンに傷害事件で服役していた主人公の高倉健さんが刑期を終え、出所後に立ち寄った昼の食堂で、塀の中にはない味がハッキリとしたカツ丼と醤油ラーメンを無心にカッ喰らうんですけど、これがたまらなく旨そうで、とんかつ好きの自分にはたまらないシーンなんです。

昨日の昼は、『飯尾和樹のずん喫茶』のロケで、ナポリタンや豚の生姜焼き、ハンバーグ、そしてマスターの「手作りなんで是非!」という言葉に乗っかって、チーズケーキまで食べて大満足。
喫茶店で摂取したカロリーを消耗するスポーティーな予定も無く、直帰してきたのに、グルグル〜っとお腹が鳴りましたからね。
流石すぎる!映画史に余裕で名が残る大スター高倉健さん!
健さんの演技の前じゃ、飯尾の満腹中枢なんて、いとも簡単にバグります。
映画を一時停止して、バグった胃を満足させるために、歌舞伎揚げを取りにいく途中で、『食べ過ぎて明日胃もたれするな』と思い引き返し、再生ボタンを押しながら、『冷静に明日のことを考えるなんて大人になったなぁ〜』と自分で自分を褒めちぎりました。
そして『明日、必ずカツ丼を食べよう!』と決意。

翌日、冷静な判断が出来る大人になった飯尾和樹は、出先の帰りに蕎麦屋さんへスタコラ…暖簾をくぐり、張り切って冷やしキツネ蕎麦とミニカツ丼セットを注文。
暑さに負けて、醤油ラーメンから冷やしキツネ蕎麦になりましたが、これまた決めた事を実行する自分を褒めちぎりながら待っていると、隣の席で親子連れの三人さんが、明日からの夏休み帰省旅行の話で盛り上がっていました。
息子さんは多分小学3~4年生で、日焼けサロンじゃなく天然の太陽で夏を満喫しながら良い具合に焼けてるので、『少年野球かサッカークラブにでも入っている?』『お父さんは〜背の高さから学生時代バレーボール部?』『お母さんは〜背丈は普通だが、髪を後ろに束ねる潔さから、大穴で弓道部?そして鶏の唐揚げを美味しく揚げそうな雰囲気』…そんな推定バレーボール部と弓道部で、唐揚げ作りが上手そうなご両親がノンアルコールビールをグビっと飲んでる中、息子さんは薬味がたっぷり乗っている冷奴を食べ盛り真っ只中にパクついている。
そのたっぷり薬味の中には、茗荷などの渋い大人味の薬味が入っている中、「美味しい〜」と言いながらバクバク食べている。

ほぉ〜、大したもんだよ。
自分が茗荷の美味しさをわかり始めたのは30代半ば、この子は自分より24〜5年も早く美味しい味の選択肢が、少なくともひとつ多いのかぁ〜。
『やったなぁ少年!隣テーブルのメガネおっさんよりも茗荷とは長い付き合いになりそうだね』と思ったと同時に、自分が10歳の頃に比べて、こんなに味覚の幅があるという事は、この歳で早くも、もずく酢を酸っぱいと感じず、爽やかな酸味と捉えるんじゃなかろうか。
それにしても、こちらも薬味たっぷり冷奴を追加注文したくなるくらいに美味しそうに食べる息子さん。
自分が薬味たっぷり冷奴のCM制作するとしたら、息子さん一択で行きますよ。
お父さん役には大倉孝ニさん、お母さん役には木村多江さんの実力派スラっとコンビで行きましょう!
こりゃCM撮影、スムーズに行くだろうなぁ〜。

無事に勝手なキャスティングを終えると、「は〜い!お待ちどう様でした」と、女将さんが歌舞伎揚げを我慢してまで楽しみにしていた自分の前に、カツ丼と冷やしキツネ蕎麦をコトン。
食べるメガネおっさん…、ん〜カツ丼の美味さ大気圏突破!旨い!具沢山の冷やしキツネ蕎麦もツルツル。
これまた美味すぎて気持ちがGo to Moon!月まで行って来ました。
そんな店選び大正解の自分を褒めちぎる夏の昼でした!

みなさん、1か月のお付き合い、ぺっこり深々88°!
ありがとうございました!
良い9月以降を!
ついでに〜忍法~メガネ残し!In The 向こうに夏の富士!

プロフィール

飯尾和樹

いいお・かずき|お笑いコンビ「ずん」のボケ担当。1968年、東京都生まれ。『さんまのお笑い向上委員会』『飯尾和のずん喫茶』他、数々の番組にレギュラー出演中。
近著に『キャイ〜ン ずん 作文集』がある。

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