TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#1】タイへ行くつもりじゃなかった
執筆:MOOLA(YANGGAO)
2025年7月10日
ポパイマガジンウェブをご覧の皆さん、はじめまして。名古屋でタイカレー食堂「ヤンガオ」を夫婦で営んでいるMOOLA(ムラ)です。もともとはデザインの仕事をしていて、転勤でタイ・バンコクに住むことになり、そこに6年半暮らしました。名古屋に戻ってお店を始めて、今年で8年目になります。
ここでは、タイ在住し始めた2011年ごろに出会ったミュージシャンや、現地での音楽体験について書いていきたいと思っています。
タイに行くことになったのは、完全に仕事の都合。英語もタイ語も話せない、海外旅行すら行ったことのなかった僕にとって、それはまさに突然の出来事でした。でもなぜか、「2時間くらいDJできるレコードを持って行けば、気の合う友達ができるはず。大丈夫」という謎の自信だけはあったんです。
その自信は、なぜか的中。
バンコクのトンローというエリアを歩いていたとき、タイ人ミュージシャンのCYNDIE SEUI(シンディ・スイ)に「日本人?DJやってる?」と声をかけられ、そこから現地のレジデントDJに抜擢。移住してすぐ、年越しカウントダウンのDJまで任せてもらえるようになりました。タイ語を覚える前に、音楽を通じて現地の友達ができたことは、本当に心強かったです。
僕は名古屋で、10代の頃からDJをしていて、レコード収集という少し偏った趣味を持っていました。そのおかげで、音楽を愛するタイ人の小さなコミュニティに自然と入ることができました。
「音楽は国境を越える」なんて言葉をよく耳にするけど、まさにその通り。DJをしているときや、一緒に音楽を聴いている時間は、言葉が通じなくてもすぐに打ち解けられる。何度も「レコードに救われた」と思いました(ここであえて“音楽”ではなく、“レコード”なのが僕にとっては重要です)。
いまでも聴き続けている、思い出深いタイのミュージシャンを少し紹介します:
CYNDIE SEUI – Coffee-milk Crazy
フリッパーズ・ギターの「海に行くつもりじゃなかった」へのオマージュとも言える「タイに行くつもりじゃなかった」もリリースしていた、エレクトロ・ポップの先駆者。
Yellow Fang – แค่เพียง (If Only)
リリースから10周年を迎え、ついにLP化された一曲。MVはバンド“Dara Rasmi”のトキン(Tokin Teekanun)が制作。最高にしびれます。
POLYCAT – So Long
もはや“インディー”ではなく、タイの国民的バンド。バンコクでは、POLYCATのメンバー、ceroの橋本くん、Cha Cha Cha Booksの源ちゃんと一緒にDJパーティーも開催しました。
ジオラマシーン / 帰国便
僕がジャケットデザインをさせてもらったceroの橋本くんソロプロジェクト“ジオラマシーン”のMVで自転車で一緒にバンコクの街を駆け抜けているのがPOLYCATのNAくんです。
プロフィール
MOOLA
むら|タイカレー食堂“YANGGAO”หยั่งเก่า 【読み: ヤンガオ/意味: いつも通り】のオーナー。タイ・バンコクに2010年から6年半在住した経験から、タイのフード/ミュージック/ファッション/カルチャーをローカルでインディペンデントな視点で解釈し、自らデザインしたお土産も手掛ける。レコード愛好家でDJとしても活動中。
Instagram
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