TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#3】旅にハプニングはつきもの、なんて言うけれど。

執筆:入山杏奈

2025年4月29日

クロアチア・ドゥブロヴニクを目指した旅。
出発の数時間前、友人から「航空券の名前間違えた」と連絡が来たところから、すべてが始まった。

でも、いま思えばこんなのは序の口だった。
なんだかんだでクリアして、どうにか出発。無事に飛行機に乗れた時点で、すでにちょっと達成感があった。

最初の乗り継ぎ地のドーハを経て、着いたのはイタリア・ローマ。
本来なら空港でおとなしく待つはずだったけれど、6時間あるなら街に出ちゃおう、ということになった。バタバタしながらも、ピザでお腹を、ビールで気分を満たして、再び空港へ。

途中、道ゆく人に“Where are you from?”と話しかけられた友人は、「ジャパニーズガールズ!イェーイ!」と答えていた。元気に返事ができるのは素晴らしいことだ。

さあ、いよいよドゥブロヴニクへ向かうフライトに乗り込んだ。

ところが。
着陸態勢に入りかけた飛行機が、なぜか突然ぐいっと上昇した。機内アナウンスは英語だったけれど、耳に入ってきたのは「頑張ってます」と「到着は22時半になります」ということだけ。まぁ、頑張ってるなら大丈夫か。引き続き話に花を咲かせていると、飛行機は着陸した。

スマホを開いた。ローマだった。

「電波遅いだけだよね」と笑いながら画面を閉じ、1分後、もう一度開いてみた。ローマだ。

「……戻ってきた?」

鉄のハートを持つ友人が、隣の外国人乗客にGoogle翻訳を差し出しながら「ワッツハプニング?」と尋ねる。
そこで初めて私たちは知ることとなる。

強風のため、ドゥブロヴニクの空港に着陸できず、引き返してきたのだと。

Screenshot

FlightAware」より引用

そこからは怒涛だった。
航空会社カウンターへ並び、チケットの再予約に、ホテルと夜ご飯の手配。

もちろん、全部英語。私の乏しい英語力に、かたや「ジャパニーズガールズ!イェーイ!」だ。疲労困憊し、手配されたホテルに着いたのは深夜1時半。眠い目をこすりながら、翌日のプランを練った。

次にドゥブロヴニクへ飛べるのは夕方。
数時間しか滞在できなくなるため、ドゥブロヴニク行きを断念し、代わりに次の目的地アルバニアへのチケットを購入した。夜のフライトだから、明日は1日時間がある。

こうして、ドゥブロヴニクを目指した旅は、なぜか2回目のローマ観光に突入した。
(ちなみに帰りの便もローマで14時間のトランジットだったので、たった一度の旅で合計3回もローマを観光した。)

もはや何を目指していたのかよくわからない旅だった。まあ、旅なんてそんなものなのかもしれない。

アルバニアでは、予定にない小さな町をふらりと訪れたり、地元のレストランで驚くほど美味しい料理に出会ったりした。
言葉も通じないし、道にも迷う。でも、いちいち笑ってしまうようなことばかりで、すごくいい時間だった。

帰国後、電車に揺られながら、なんとなくInstagramを開いた。ふと流れてきた「世界の絶景7選!」という投稿。何気なくスワイプした1枚目に、見覚えのある青い海と城壁の街が映った。

ドゥブロヴニクだった。

即座に友達に画面を見せ、電車の中でふたりして、力なく笑った。こんなにドタバタしたのに、結局あの海もあの街もスマホ越しにしか会えなかったねと。

でも、たぶん。
辿り着けなかった景色も、ちゃんと私たちの思い出の中だ。

プロフィール

入山杏奈

いりやま・あんな|1995年、千葉県生まれ。愛称はあんにん。2018年からメキシコで放映されたテレビドラマ「L.I.K.E」の出演のためメキシコに移住し、以来スペイン語が特技に。日本とメキシコを行き来しながら活動を続け、現在は日本に一時帰国中。昨年10月には日本テレビ系「潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官」でAKB48卒業後初のテレビドラマ出演を果たした。

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