ライフスタイル

家の猫の話 Vol.11

執筆: ピエール瀧

2025年1月5日

家の猫の話


photo & text: Pierre Taki
edit: Ryoma Uchida

ウチの猫の中で唯一のメス猫の女王ブイヨン。そのブイヨンが、いつの頃からか様子がちょっとおかしくなってきてしまいました。

ご飯を食べた後から何度も猫トイレに入るようになり、しかも用を足している最中にニャアニャアニャアとずっと鳴き続けるのです。「トイレが汚れているのかな?これは失礼したね、ブイヨン」なんっつって頻繁にトイレ掃除をしてみたりしたのですが、それでもトイレに籠るブイヨンの様子と態度に変化が見られません。そのうち、ウンチの形が細くて小っちゃくなり、挙げ句の果てには少しずつ痩せてきてしまいました。

これはまずいとようやく悟ったオイラと嫁は、捕まえることに関しては最難関のブイヨンを高級ちゅーるでなんとかおびき寄せて捕獲。嫌がる彼女を洗濯ネットに押し込んで、動物病院に連れて行きました。

お医者の診断は、膀胱に結石ができてしまったことによる排尿不良。すぐ手術をすることになり、その日のうちに石を無事に摘出してもらいました。そして入院。

数日後、家に帰ってきたブイヨンは、首にパラボラアンテナのようなエリザベスカラーを付け、手術後ということもあってヨタヨタとリビングを徘徊。お医者の先生曰く「1週間はカラーを外さないでください」との事だったので、オイラと嫁はブイヨンケアウィークとして、ブイヨンの挙動に注意を払いながら回復を見守る日々が続きました。

ブイヨンが帰宅してから態度が激変したのがコンブとコロッケ。普段はつるんだ行動をほとんどしない2匹なのですが、帰宅したカラー付きのブイヨンを一目見て目を丸くし「知らないやつが来た!しかもなんか宇宙人っぽい!…超怖ぇ!」と完全にビビりあげてしまい、ブイヨンからなるべく距離を取りながら2匹一緒にソファーの隅っこで丸くなり、難しい顔でパラボラ星人(ブイヨン)を凝視して怯えまくるという失態。それでもなお近寄ってくるブイヨン(そりゃ当たり前)に対する恐怖がMAXになってしまい、最終的には2匹揃ってトイレに避難する始末。情け無い。

それまでは夜になるとブイヨンとラブラブでくっついて寝ていたコンブだったのに、パラボラブイヨンが近寄ってくるとフゥ~~ッ!と威嚇して飛び起き、逃げ惑っているのです。しょーもな。まあでもそのおかげで、これまで上下関係というかライバル感のあったコンブとコロッケの関係が改善(ダメオスコンビとして結成)されたので、猫チームとしては怪我の功名と言えるのかもしれません。

今ではすっかり体調も良くなり、以前のようにふっくらした体型が戻ってきたブイヨン。トイレでニャゴニャゴ鳴くこともなくなり、3匹一緒にくつろぐことも多くなって、我が家に穏やかな日々が戻ってきています。

どうやらこの入院騒動以来、ブイヨンの人間に対する信頼感が増したように思います。以前よりも我々に近づいてきてくれるようななりましたし、ゴロンとしてお腹を撫でさせてくれる時の力の抜け具合が前よりも増した気がします。結果的になんか良かった。

プロフィール

ピエール瀧

ぴえーる・たき | 1967年、静岡県出身。1989年に石野卓球らと電気グルーヴを結成。道行く人に「あなたのオススメは?」と尋ね、その返答の通りに旅をするYouTube番組『YOUR RECOMMENDATIONS』が好評配信中。著書に『ピエール瀧の23区23時』(産業編集センター)、『屁で空中ウクライナ』(太田出版)など。『地面師たち』(大根仁・監/Netflix)、『HEART ATTACK』(FODで配信予定)にも出演予定。

電気グルーヴ公式ウェブサイト
https://www.denkigroove.com/