TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#3】制作1/2

執筆:渡部萌

2024年10月27日

私は蔓や樹皮でかごをつくっている。
年に数回、展示会をひらいて販売していて、それが私の今の仕事になっている。

元はと言えば子供の時から工作が好きで、図工や美術の時間も好きで、
中学ではハンドボール部だったので高校も部活で選ぶつもりでいたけど、
意外に美術の高校に進学した。

高校では彫刻を専攻し、人体の塑像が好きだった。
今思えば、私にとって塑像は工作の延長で、粘土を物理的に操作することだけができるのが良かった。

朝の静かな廊下で、石膏像の木炭デッサンをしていたことを覚えている。
描いていて気づいたコツを人生の教訓だと思っていた。
美術の道に進みたいというより、高校で彫刻を専攻している時間を延長したい気持ちで、山形の美大に進学した。

山形の一人暮らしはお金がなかったので、畑のサークルに入って野菜を育てた。
大学では悶々と過ごしていたので、畑は健康を与えてくれた。

ある時、畑の近くに住んでいる百姓のおじいさんに藁細工を習いに行った。
そのおじいさんは竹や藁や草を素材に、竹箒、茶匙、草鞋、ポシェットを作っていた。
どれも器用に作られていて、丁寧に磨かれていた。
朝早く目が覚めるから家を雑巾掛けして、茶匙も毎朝磨くのだそう。

大学の美術とは違う形での、作ることに出会った。
そこら辺に生えている草からも、ものづくりが始まることを知って、何気ない通学路の景色も詳しく見えてくる。

山形では土着的なものに惹かれた。
手仕事や食、信仰など、その土地特有のもののユニークさや、
なんでそうなったのか、をなぞるような思考や体感がおもしろかった。

大学は一年で辞めて、藁細工やかご作りをしているおじいさんを訪ねては習った。
年末には地域住民が公民館で大きなしめ縄を作る行事に参加したり、
そこでの生活と作ることがくっついている感じに”確からしさ”を感じていた。

プロフィール

渡部萌

わたなべ・もえ|1996年、東京都生まれ。植物素材を採集して、かごを制作している。年に数回の展示会を中心に作品を販売。次の展示会は2025年の夏ごろに愛知県の『MATOYA』にて開催予定。

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