TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】実は簡単!(なはず…)/エスペラント博物館への誘い。

執筆:南波文晴(NPO法人エスペラントよこはま 理事)

2024年10月19日

 「どこの国や民族の言語でもない、文法を整理した覚えやすい人工言語をつくり、国際語として世界に広める」

 そんなコンセプトで生まれたエスペラント語ですから、あくまでも理屈としては、とても覚えやすくて親しみやすい言語のはずです。でも、現実は厳しく、エスペラント語の学習をお勧めすると「英語も苦手なのにエスペラント語なんて…」と尻込みされることが少なくありません。それでも、なぜエスペラント語のほうが英語より簡単なのか、ここで少し解説させてください。

 まず、エスペラントは人工言語ですから、いろいろな言語にある不規則さや文法の例外などを整理して、すっきりとしたものになっています。英語には不規則動詞というのがあり、例えば have の過去形は haved ではなく had になったりしますが、エスペラントでは全ての動詞が規則動詞です。「持つ」は、現在形が havas で過去形は havis です。

 そして、エスペラントでは造語法や接頭辞・接尾辞が体系化されています。例えば接頭辞 mal- を付けると、単語の意味が逆になります。英語だと new の反対は old ですが、エスペラントだと新しいは nova で古いは malnova です。英語だと2つ単語を覚えるべきところ、エスペラントでは mal- の使い方さえ知っていれば、対になっている単語は一方だけを覚えればよいのです。

 …と、エスペラント語の優位性をしばしば力説するのですが、やはり言語の学習は理屈だけでは進みません。「習うより慣れよ」で、十分に時間をかけて繰り返し学習し、頭の中に言語を馴染ませるのが重要なのは、英語学習でもエスペラント語学習でも同じです。そうなると、英語が苦手な方は、現実問題としてまず英語に時間を割かなければなりませんから、なかなかエスペラント語には手が出せず、「難しい」言語になってしまうのでしょう。

 しかし、英語がある程度得意で、英語だけでは飽き足らずに他の外国語も覚えてみたいという方には、エスペラント語はユニークで魅力的な選択肢となり得ると思います。特に、英語の他にも欧州言語(フランス語、ドイツ語、イタリア語など…)を既に学んだ方は、エスペラント語の学習はとても効率的に進むでしょう。

(つづく)

エスペラント語の学習書や辞書は、市中の書店ではなかなか手に入りませんが、実は色々と存在します。エスペラント博物館よこはまでも一部の書籍を取り扱っています(博物館の詳細は最終回で紹介します)

プロフィール

南波文晴

なんば・ふみはる|「NPO法人エスペラントよこはま」理事。横浜を拠点とし、中立な国際語「エスペラント」の活用・普及、学習支援につとめる。2021年に設立された『エスペラント博物館よこはま』では、エスペラントによる国際交流や、エスペラント文化の蓄積としての図書・雑誌等様々な資料が所蔵されている。

エスペラント博物館よこはま Official Website
https://esperanto-muzeo-jokohama.jimdofree.com/