ライフスタイル

家の猫の話 Vol.8

執筆: ピエール瀧

2024年10月5日

家の猫の話


photo & text: Pierre Taki
edit: Ryoma Uchida

先日、『地面師たち』絡みのトークイベントを渋谷でやった際、お客さんから猫グッズの詰め合わせのプレゼントを頂きました。その中に、電動で動く『DANCING FISH』なるおもちゃが入っていたので、イベント帰宅後に我が家の猫達に早速投入してみました。

この『DANCING FISH』、文字通り魚の形をした猫用おもちゃです。充電式で、電源スイッチを入れたままにしておけば、外部から衝撃を受けた際にオートマチックでピチピチ動く仕掛けになっています。中身の機械部のところにまたたび袋を忍ばせられる構造になっているので、その匂いに釣られて猫たちはちょっかいを出さずにはいられないという、考え抜かれた魅惑のシステム になっています。

この見慣れないメカ魚にまず反応したのはやんちゃ盛りのコロッケ。メカ魚に勢いよく飛びかかってまずマウントを取り、そこから両手で力強く魚を抑え込み、さらに高速猫キックの連打で仕留めにかかるという、ほぼUFCの戦い方(UFCの場合は手足逆)というガチ興奮ぶりです。おもろ!

その傍らでは、メカ魚が入っていた細長い箱に残った付属のまたたびの匂いに釣られてブイヨンがフンフン言いながら箱に頭を突っ込んでいます。しかし、そのあまりのジャストサイズぶりに頭が抜けなくなってしまい、頭の先がにょ~んと伸びた猫チェンソーマンのようなフォルムになって「抜けない! 抜けないのよ!」とパニックになってオロオロしています。こっちもおもろ!

リビングでのそれらの騒ぎが収まった頃、年長猫のコンブがおもむろにやってきてどっかとメカ魚の脇に座り、落ち着いた立ち振る舞いで「これは俺のな」といった長老感を醸し出しながらメカ魚を抱っこ。そして、コンブにとってはたまに動いたりする“またたび枕”と化したメカ魚に頭を乗っけてそこから静かに独占。やっぱやるな、コンブ。

これらの一連を眺めていた我々人間家族は大爆笑。おかげでとても楽しい時間を過ごせたのですが、恐ろしいことに一晩経った翌日には全猫がこのメカ魚に飽きていました。

そうなんです。猫はおもちゃ秒で飽きるんです。正確にいうと、秒で飽きるか、秒で破壊して終わるんです。人間が「これ結構よくない? デザイン的にもさ」なんていう感覚で選んだおもちゃは、 大抵“秒”で決着です。赤ちゃん用のデンマークとかのデザインされた木の積み木と一緒です。デザインとか要らんのですよ。奴らはもっとプリミティブな“袋”とか“ヒモ”とかに心奪われるんです。

この原稿を書いている今も、メカ魚は浜に打ち上げられたボラのごとくリビングに横たわったままです。奴らはその横を軽々と素通りし、2度目の充電もしていません。ははは。

イベントで猫グッズをくださった方、ありがとうございました。頂いたおもちゃについての報告は以上です。ちなみに、一緒に入っていたうまいご飯は「これマジかよ!」のテンションで平らげていました。感謝!

プロフィール

ピエール瀧

ぴえーる・たき | 1967年、静岡県出身。1989年に石野卓球らと電気グルーヴを結成。道行く人に「あなたのオススメは?」と尋ね、その返答の通りに旅をするYouTube番組『YOUR RECOMMENDATIONS』が好評配信中。著書に『ピエール瀧の23区23時』(産業編集センター)、『屁で空中ウクライナ』(太田出版)など。『地面師たち』(大根仁・監/Netflix)、『HEART ATTACK』(24年秋以降、FODで配信予定)にも出演予定。

電気グルーヴ公式ウェブサイト
https://www.denkigroove.com/