TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】世界は締め切りであふれている

執筆:三浦透子

2024年10月9日

私は人前に出るのが苦手です。
けれど、
本番が来なければ本気も出せないし
人に見られていなきゃカッコもつけない。

こんな相反する二つの性質と折り合いをつけながら、日々を一生懸命生きています。

自分にとっての”快適“を見つけることは本当に難しい、と常々思います。
お風呂の蛇口みたいです。青い蛇口を上手に回せていないとアチッとなります。

苦手なこと、得意なこと、嫌なこと、楽しめること。
やりたいこと、やりたくないこと、やらなくちゃいけないこと、やらなくてもいいこと。出来るようになりたいこと、出来るようにならなくてもいいやと諦められること。
まだまだこれらの境界が曖昧な私です。
自分のことをもっとよくわかるようになりたい。
起こり得る状況を予測し、その上で私の”快適”に近づけるような人生の選択を重ねていきたい、それが理想です。
その為に、長い時間をかけてよくよく自分を観察するようにしてきたつもりです。
それでもまだまだうまくはいかなくて、情けないが、こんなはずじゃなかったと思うことも沢山あります。

嫌なことはしなくていい
基本的に私は、誰に対してもそう思っています。
もちろん自分に対しても。
でも、嫌なことかどうかを見極めるというのは本当に、とてつもなく難しい。
嫌の本質を見極めることを疎かにすると、出会えたであろう、好きや楽しいをとりこぼしてしまう。
そんなのはとても悲しいから。
自分の中で結論が出るまでは、修行だと思って、やってみる。
今のところは、高々これの繰り返しです。
寿命と結論が出るの、どっちが早いのだか、気が遠くなりそうです。

もう一度言います。
私は人前に出るのが苦手です。

その苦手が沢山詰まった仕事を、私はしていると思います。
その中に、好きを見つけているのも事実です。

文章を書くことは、
果たして、自分にとってどんなものだろうか。
小学生の頃の作文の授業が憂鬱で仕方なかった記憶は確かにある。締め切りの時間が迫るにつれ胃がキリキリした。
でも、書いたものが褒められるのは嬉しかった。

まだわからないから、まずやってみる。
この締め切りも修行です。
新しい好きとの出会いになりますように。

初めてのコラム、
貴重な機会を、本当にありがとうございます。
短い間ですが、どうぞ宜しくお願いいたします。

プロフィール

三浦透子

みうら・とうこ|俳優、歌手。1996年、北海道生まれ。2002年、「なっちゃん」のCMでデビュー。第94回アカデミー賞の国際長編映画賞に輝いた『ドライブ・マイ・カー』では、三浦個人としても第45回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ数々の賞を獲得するなど、国内外で注目を集める。近年の主な出演作に、主演映画『そばかす』、ドラマ『エルピス‐希望、あるいは災い‐』をはじめ、数々の作品に出演。歌手としても活躍しており、11月29日(金)には自身初となるワンマンライブ「三浦透子 at Billboard Live TOKYO 2024」が開催予定。