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ビルの中の”道”で味わう本格チャイ『JULAY chai stand』。

東京五十音散策 高円寺②

2024年9月7日

photo: Hiroshi Nakamura
text: Ryoma Uchida
edit: Toromatsu

東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「こ」は高円寺へ。

 高円寺駅北口から徒歩5分ほど。チャイ専門店『JULAY chai stand』を目指して歩いていると、いつの間にか怪しげなビルの中に。比喩表現とかではなく、実際にビルの中に道路が続いているのだ!

 築75年以上、2棟の建物をつないでできたという『キタコレビル』。2014年には、アーティスト集団のChim↑Pom(現・Chim↑Pom from Smappa!Group)が展示スペースを持った。再開発が進む東京の「スクラップ&ビルド」をテーマに、プライベートなビルの敷地内に「Chim↑Pom通り」という誰でも通れるパブリックな「道」を開通させた。ビル自体のつぎはぎにも見える建築と、公と個の空間が入り混じる生活道路、そこに入る魅力的なお店の数々は、高円寺エリアの住宅地の中に突如として現れる、もう一つの街だ。

 そんなビルの中の「道」を進むとすぐに見えるのがチャイ専門店『JULAY chai stand』。取材時にも、数人のご近所さんらが開店を待ちながら店前の道に置かれたベンチに座り、のんびり雑談を楽しんでいた。ビルの「中」に入ったはずなのに、まるで「外」にいるかのような開放感に、ちょっと混乱。

「面白い建物ですよね。実は『JULAY chai stand』をオープンするときもChim↑Pomのメンバーやサポートメンバーに手伝ってもらいました。元々上の階が彼らのアトリエで、今はメンバーの数人で多肉植物・塊根植物を販売する園藝プロジェクトを行っているみたいです。この周りにもアットホームで色んな面白いお店がありますよ」

 店主の上地さんは元々、大阪のチャイを扱う老舗カフェ『カンテグランデ』で働いていたんだとか。お店ではアーティストの人も多く働いていて、かつてはウルフルズのメンバーも輩出した”名店”だ。バーで働きながら会社勤めを経験した後、『キタコレビル』の物件が空いたと知り合いづてに連絡があった。関東近郊に『カンテグランデ』時代の友人が揃ったことがたまたま重なり、念願のチャイ専門店をオープンする運びに。

「おすすめはマサラチャイと、スパイスレモンソーダです。バニラチャイやアルコールの入ったラムチャイも人気です。『カンテグランデ』とはメニューも仕込みも違うので、オリジナルですね。お店の装飾やメニューもまだ変わっていく途中で、”未完成感”を大事にしつつ、街や人と一緒に変化していけたら」
 
 オリジナリティあふれるビルのなかで、これまたオリジナルのスパイシーな絶品チャイを。Chim↑Pomが残した細く小さな道の周りは活気で溢れている。変化を続ける東京の街が失いつつあるものと、未来とが同居しているような気がした。

お店では仕込みからこだわった挽きたてのチャイが飲める。カウンターの目の前で、すり鉢を使ってゴリゴリとスパイスをすり潰していくのが見た目も楽しい。

シナモンもがっつり。スパイスの風味が抜群のおすすめ「自家製スパイスレモンソーダ」¥600。

『キタコレビル』入り口。ビルの一歩目からマンホールがあって、あまり見慣れぬ光景に戸惑うかも。

2階から見ると本当に街の中みたい。

インフォメーション

ビルの中の”道”で味わう本格チャイ『JULAY chai stand』。

JULAY chai stand

2021年2月にオープン。自家製のチャイやラッシー、アルコールメニューが充実。昼はチャイ専門店として12:00〜20:00まで、夜はそのまま25:00までバー『marQ』へと変化。カウンター席に加え、店内や店外でも飲める。最近は月に一度たこ焼きやフリマのイベントも開催中とのことで、詳細はインスタグラムをチェック。また、富ヶ谷に2号店もオープンした。

○東京都杉並区高円寺北3-4-13 キタコレビル1F  12:00〜20:00 土日祝日の営業(20:00から営業のバー『marQ』は水曜定休)営業日の詳細はインスタグラムにて。

Instagram
https://www.instagram.com/julay_koenji/