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店主の目が行き届いたフランスワインが揃う街の老舗酒屋『エスポア ナカモト』。

東京五十音散策 桜新町①

2024年9月1日

photo: Hiroshi Nakamura
text: Eri Machida
edit: Toromatsu

東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「さ」は桜新町へ。

 奥深いワインの世界。自分が語るには正直浅すぎる。身近な先輩たちが度々訪れていると言っていた『エスポア ナカモト』の名を思い出し、桜新町へ。ここは1953年から続く老舗で、一見すると、日本酒、お茶、食品も取り扱う街の酒屋だが、実は商品の9割がフランスのナチュラルワインとなっているツウな専門店でもある。

 店主の中本雅敏(まさとし)さんは、南仏・モンペリエに3年ほど滞在し数々の生産者の元で畑作業や醸造を手伝っていた経験があり、南フランスやロワール地方を中心に仕入れているラインナップが特徴。そのうえ、現在も年に一度は現地に足を運び、作り手と良好な関係を築くことを大事にしているのもウリのひとつ。土から吸い上げたミネラルがワインに複雑な旨みをもたらすから、畑の質は極めて重要で、化学肥料を使わない小さな蔵元とリレーションシップを図っているのもこのお店のこだわりだ。

「抜栓してから10分後に飲むといい」、「カレーやトマトスパゲッティに合う」など、ワインに詳しくなくてもすぐに実践できることを生産者の情報込みで教えてもらえるので、自宅に帰って飲むのがいつも以上に楽しみになる。「最近はよくペアリングも聞きますけど、難しく考えなくていいですよ。ここにあるものは全て美味しいですから」と中本さん。ワインに関わる仕事を長年続けてきた店主がそう言うのなら信頼できる。

 並んでいる商品は全て店頭に立つ中本さんの目で選ばれたものだから、どこを切り取っても愛がある。やっぱり何事も店主の目が行き届いている専門店に頼るのが吉だと感じたわけだが、それにしてもこんな良い店が近くにあるなんて、桜新町に住む人が羨ましい。

1996年から毎年フランスへ行っており、40歳のときにフランスで暮らすことを決意し、3年間でワインの知識を深めた中本さん。

南半球の国々やアメリカ産は扱っておらず、フランスのワインに絞り、50〜60蔵から仕入れている。生産者とは良い関係を築いており、中には30年以上の付き合いがあるところも。

食事に合う一押しのワインを選んでもらった。赤は「プール・ユヌ・ポワニエ・ド・ブテイユ」。淡いチェリーレッドでノンフィルターだが、ギシギシした渋さがなく冷やしても美味しい。白はロワール地方の「キュヴェ・デ・ザミ」。旨みが強くどんな料理にも合う。抜栓後30分くらい空気に触れさせてから飲むのがおすすめ。

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インフォメーション

店主の目が行き届いたフランスワインが揃う街の老舗酒屋『エスポア ナカモト』。

エスポア ナカモト

中本さんの祖父と父が『近江屋酒店』として1953年に開業。元々サラリーマンとしてワインに関連する仕事に就いていた中本さんが2006年に兄から引き継ぎ、現在はご夫婦で店頭に立っている。トースターで温める冷凍のコロッケやメンチカツ、チーズ、カツオのたたきなどおつまみにぴったりな食品も置いてある。

○東京都世田谷区弦巻4-2-25 ☎︎03・3426・0038 10:00〜20:00 火、水休

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