トリップ
ゴールドラッシュをめぐる冒険 in New Zealand Vol.3
写真・文/石塚元太良
2024年5月27日
次の朝早く、クイーンズタウンからゴールドラッシュの時代の史跡が眠る「メイスタウン」を自転車で目指します。まずは30キロほど先のトレイルの麓の町アロータウンへ。
日本から持参してきた自転車は、アメリカのガレージブランド「リベンデル」のクロモリフレーム。都内で自宅から仕事場までを毎日往復している僕の通勤自転車でもあります。
そのクロモリのフレームは、堅牢かつしなやかで、重量があるけれどその分安心感がある。今回は山道を走らせるために、オフロード用の27.5インチのタイヤを履き、フロントにはたくさんの荷物を積み込めるよう、大きなアルミのカゴも取り付けて来ました。最後に未舗装の道でもハンドルを取られないために、ブルムースとい名前のワイドでクラシックなハンドルをフレームに装着してニュージーランド、ゴールドラッシュ号の完成です。
空港近くのホテルの前で、無事に8×10の大型カメラと、三脚に野営のための装備一式、4日分の食糧を積み込んで走り出すと気分は上々。まるでノコギリの歯のようと形容されるリマーカブルズ山脈から吹き付ける風も爽快。前途は洋々に思えたのだけれど、、、、、。
アロータウンまでの30キロほどの舗装された道をなんなく漕ぎ終え、そこからトレイルルートに入ると舗装されていた道は急にダートになり、自転車ごと川を横切りながら遡上するように上流域を目指して進みます。
サドルに乗りながらでは進めない難所を、自転車から降りて押し上げるように進んでいくのは、正直なかなか厳しい。徐々に徐々に、自転車を押し上げる上腕がパンパンになり、もはや坂が急すぎて自転車に乗れないまま、自転車を倒して休憩する時間の方が長くなる。
アロー川が大きく迂回してはるか遠くの山道が見渡せた時、視界の先へ登りが延々と続くその景色に、僕ははや理解した。
これ以上は、重い荷物を積んだままこの自転車では登りきれないと。これでは、日没までに目指すべきメイスタウンのキャンプ場へ辿り着けない。街で見た最新の天気予報では明日は大雨。早めに決断して、自転車を諦める方が得策だろう。なんとか今晩中にキャンプ場まで辿り着かなくては。
問題は、自転車をどこかに隠さなくてはいけないことである。狭い登り道では自転車をデポする場所も皆無。来た道を戻って、川が大きく蛇行した内側の林に自転車を隠すことに。まさかこんな山中で鍵をかけた自転車を盗る人もいないでしょう。
道中でバックパッキング(荷物をリュックに入れて歩くこと)に切り替えるべきとは、予想していたけれど、こんなに早く自転車を放棄しなくてはいけないとは。
登った道を一度下らなくてはいけないのが辛いが、荷物を自転車から紐解いて撮影機材を背負って歩き始める準備をする。自転車を炎天下で長時間押し続けていたせいで、体力がだいぶ削られてしまっている。
とにかく日没までは歩き続けること。とにかくこうして出発し、自然の中へ帰ってきたことだし、前を向こう。そんな風に言い聞かせながら、トボトボと山道を歩いていく。撮影の機材はいつものようにとても重たい。
プロフィール
石塚元太良
いしづか・げんたろう|1977年、東京生まれ。2004年に日本写真家協会賞新人賞を受賞し、その後2011年文化庁在外芸術家派遣員に選ばれる。初期の作品では、ドキュメンタリーとアートを横断するような手法を用い、その集大成ともいえる写真集『PIPELINE ICELAND/ALASKA』(講談社刊)で2014年度東川写真新人作家賞を受賞。また、2016年にSteidl Book Award Japanでグランプリを受賞し、写真集『GOLD RUSH ALASKA』がドイツのSteidl社から出版される予定。2019年には、ポーラ美術館で開催された「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」展で、セザンヌやマグリットなどの近代絵画と比較するように配置されたインスタレーションで話題を呼んだ。近年は、暗室で露光した印画紙を用いた立体作品や、多層に印画紙を編み込んだモザイク状の作品など、写真が平易な情報のみに終始してしまうSNS時代に写真表現の空間性の再解釈を試みている。
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