カルチャー

刺激的な新年度を送るために必須の3冊。

3月はこんな本を読もうかな。

2024年3月1日

text: Keisuke Kagiwada

『デイヴィッド・リンチ 幻想と混沌の美を求めて』
イアン・ネイサン(著) 中山宥(訳)

先日、スーパーボウルの合間に流れた紙製品ショップのCMで、なぜかナレーションを務めていたリンチ。去年はスピルバーグの『フェイブルマンズ』で、なぜかジョン・フォードを演じていたリンチ。そのたび、「この人は自作の外でもやることが計り知れない」と、いい意味で思ってきたものだが、彼の独自すぎる作家性を解き明かす本書を読めば、少なくとも自作の「計り知れなさ」が少しはクリアになる……はず! ¥3,520/フィルムアート社

『スティーヴン・キング大全』
ベヴ・ヴィンセント(著) 風間賢二(訳)

スティーヴン・キングは、日本において最も知名度が高いアメリカ人作家の1人だろう。なんだったら、彼が原作を務めた映画やドラマを観たことがある人も多いに違いない。にもかかわらず、その小説を読んだことがある人をほとんど見かけないのはどうしたことか。まぁ、100冊以上も書いているから、どこから手をつけたらいいかわからないって気持ちはわかる。本書はそんなあなたのような人のために作られたコンプリートガイド。詳細なビブリオグラフィー兼バイオグラフィーになっているので、一読すれば自分に合うキング作品が何か、きっとわかる。河出書房新社/¥5,478

『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』
谷頭和希(著)

その昔、「ファスト風土化」という概念が注目を集めていた。日本の地方都市が同じようなチェーンストアで埋め尽くされ、地域の独自性が失われる現象を否定的に表した言葉だ。1997年生まれの著者は、その負の側面を一面では認めつつ、「しかし」と思う。そこで目をつけたのが、題名にもある「驚安の殿堂」こと「ドン・キホーテ」。安定して成長を続ける「ドンキ」の分析を通して著者は問う。「チェーンストアは、 ほんとうに世界を均質に、そしてつまらないものにしているのだろうか」。¥924/集英社