ファッション
Jason Julesのスタイル日記。
2024年2月16日
毎朝、何をどう着るか。その繰り返しにこそ「人」が見えてくる。2人のファッション賢者の16日間の記録に学ぶ、スタイルの作り方。
Jason Jules/Writer,『Black Ivy』Author
ジェイソン・ジュールスの場合。
Jason Jules
現行品とヴィンテージ、カジュアルとフォーマル。両極端のものを華麗にミックス。ニュートラルなスタイルに遊び心を添えるのは、赤や紫のソックスだ。
着ることで一日を楽しく過ごせるかどうかが一番大事。
根底にあるのは“ブラック・アイビー”に教わったルール無用の姿勢。
昔から意味不明だったんだ。モダン・ジャズ・カルテットやマイルス・デイビスの創造性は誰もが認めているのに、彼らのファッションについては白人のコピーだといわれることが。それで調べてみると明らかになったのは、その装いが1950年代に起こったアメリカにおける黒人たち、とりわけアーティストや学生、それからアクティビストによる反差別運動の一つの帰結だということ。つまり、「裕福な白人たちが享受している特権を、黒人たちにも平等に分け与えるべきだ」と訴えるために、彼らはアイビー、要するに白人エリート層のスタイルを採用したというわけなんだ。
かくして誕生したブラック・アイビーというスタイルはしかし、あらゆる黒人アーティストが自身の仕事において成し遂げたのと同様、本質には伝統の破壊がある。ルールを重んじる白人のアイビーとの一番の違いはそこにあると言えるね。私が『Black Ivy』を書いたのは、その歴史を正しく理解してもらうためなんだ。そして、その歴史は今もなお変化しつつ継続しているのは間違いない。実際、私も大好きなタイラー・ザ・クリエイターの〈ル・フルール〉や、〈デニム・ティアーズ〉が追求しているのは、伝統的なスタイルをベースとしながら、その枠に収まることがない新しいブラック・アイビーの姿だからね。
私自身のスタイルもブラック・アイビーに多大なるインスピレーションを得ているけど、特に影響を受けているのがまさにその破壊的な側面、つまりルールに固執しないという態度なんだ。例えば、伝統的なアイビー主義者であれば、私のようにわざわざ新品のブレザーとボロボロのチャックテイラーを合わせることはないだろうし、現行品と古着、フォーマルウェアとスポーツウェアをミックスすることもないだろう。なぜならそれは、ルール違反だから。
何でそんなことをするのかといえば、ひとえに気分よくなれるから。私のワードローブには本当に気に入ったものしかないのも同じ理由。私がコーディネートを組む上で一番大事にしているのは、それを着ることで喜びに満ち溢れた一日にできるかどうかなんだ。
プロフィール
Jason Jules
Writer,『Black Ivy』Author
ジェイソン・ジュールス|1964年、イギリス・ロンドン生まれ。ロンドンを拠点とするライターとして、数多くの雑誌にファッション、音楽、デザインにまつわる記事を寄稿する傍ら、メンズウェアに関するサイト『Garmsville』を運営。『Garmsville』ではファッションアイテムも数多くリリースしている。2018年には、服飾家ジョン・シモンズのドキュメンタリー『A Modernist』の脚本を担当した。
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