フード

ケーキをイートインで。

2023年12月28日

ガールフレンド ’24


photo: Reiko Toyama
styling: Takayuki Tanaka
hair: Mirai Uejo
make: Kie Kiyohara
illustration: Erika Horiuchi
edit: Minori Kitamura
model: Tsubaki

ケーキをお店に食べに行こう。
お持ち帰りでは味わえない
豊かな時間が待っているから。

女の子

 小さい頃は何かのお祝いのときにしかケーキ屋さんに行かなかったけど、なんてことのない日にだって食べたいじゃん。大人になれば。それもお持ち帰りではなくて、買ったその場で。帰り道の箱の中の状況や、守れたことなんてない“お持ち帰りのお時間”に気を揉むこともなく、味も見た目もベストなままいただけるということがまず嬉しいし、ケーキをお店に食べに行くという予定の優雅さたるや。しかも、それが1,000円ちょっとで味わえてしまうのだ。

 コンビニでだってチェーンのコーヒーショップでだってケーキは買えるし、一流パティスリーもデパ地下にある。その気楽さに何度もお世話になってきたけど、家で食べるどのケーキにも代え難い幸福感がそこにはあるんだヨ。東京にはイートインスペースを併設したケーキ屋さんが意外とあるし、本格派から“町ケーキ”まで、多種多様な空間ごと味わうって豊かな時間だと思わない?

ケーキ
ニット¥30,800(バトナー/スティーブン アラン シンジュク☎03·5321·9970)、ネックレス¥92,400、リング¥45,100(ともにサピア バハール/フィルグ ショールーム☎03·5357·8771)
田村町木村屋

 内幸町のオフィス街。朝から賑わうケーキ店が『田村町木村屋』。ある日、足早に店に入ってきたスーツ姿の男性が、ショーケースを指さして「これとこれと、ブレンドで」と注文しながら席についた。わかる~、とついにやけちゃう魅惑のメニューが約25種のケーキから2個選べてドリンクが付く「ダブルケーキセット(¥1,210)」。2つも食べちゃう背徳感が至高……。口当たりの軽いバタークリームケーキや固めのプリンなどクラシックなメニューが並ぶ店の歴史もうんと長く、始まりは明治33年に『銀座木村家』から暖簾分けしたパン屋さんで、30年前からケーキをメインに据えた。店内に飾られた岡本太郎が描き下ろした作品や作家のサインを見ると、多くの文化人もこのスウィートな2個食いをしていたのではと想像も膨らむのである。

インフォメーション

TAMURACHO KIMURAYA

田村町木村屋

◯東京都港区新橋1-18-19 ☎03·3591·1701 9:00~19:30 土・日・祝休

女の子
カーディガン¥53,900(ニュー ブレーブス/ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ シブヤスクランブルスクエア☎03·5774·1030)、シャツ¥24,200(ブルックス ブラザーズ フォー ワイルド ライフ テーラー/ワイルド ライフ テーラー☎0120·298·133)、スカート¥23,100(メヤメ/ビショップ☎03·5775·3266)、リング¥45,100(サピア バハール/フィルグ ショールーム)、ソックス、シューズは私物

 パティシエが腕を振るうパティスリーにも惹かれる。碑文谷の閑静な住宅地に佇む『パティスリー ジュンウジタ』は数々の仏菓子の名店で経験を積んだ宇治田潤シェフによる本格派でいて、地元の人にも愛される親しみやすい雰囲気の小さなお店。木漏れ日の気持ちいい店先で食べるなら、“持ち帰り30分限定”と書かれた「タルトカフェ」(¥778)。丁寧に抽出した丸山珈琲のコーヒームースがあまりにも軟らかく繊細なので長時間持ち歩けないのだ。1席しかないのでおいしい瞬間をいただき、サッと店を去る。だらだら長居しないのが、パティスリーでケーキを食べるときのススメ。

ケーキ

インフォメーション

PÂTISSERIE JUN UJITA

パティスリー ジュンウジタ

◯東京都目黒区碑文谷4-6-6 ☎03·5724·3588 10:30~18:00、土・日~17:00 月・火休

アリマ洋菓子店
コート¥162,800(レイチェル コーミー/スティーブン アラン シンジュク☎03·5321·9970)、ニット¥19,580(モリス&サンズ/ビショップ☎03·5775·3266)、シューズ¥15,400(アディダス オリジナルス/アディダスお客様窓口☎0570·033·033)、ニットキャップ¥6,600(ベイカー/アークティーズ渋谷☎03·5466·1338)、リング¥45,100(サピア バハール/フィルグ ショールーム ☎03·5357·8771)、その他は私物

 世田谷文学館で江口寿史展を見た帰り、甘いものを欲したクタクタの頭で芦花公園駅へ向かうと、商店街の入り口で輝いて見えたのが『アリマ洋菓子店』。1965年から続き、親子3代で通うお客さんもいるほど地域に根差したこのお店は、外壁の「ARIMA」の文字やイートインスペースのベロア地の椅子に昭和な薫りが漂う、もはや町の文化遺産。フルーツたっぷりのプリンアラモード(¥520)の昔ながらの味わいにほっと一息。初めて来たとは思えない安心感があってすぐマップのお気に入りに追加した。よく行く町中華のように気楽に足を運べる“町ケーキ”というのも贅沢かな。

インフォメーション

CAKE & COFFEE ARIMA

アリマ洋菓子店

◯東京都世田谷区南烏山3-1-16 ☎03·3309·3832 10:00~19:00 水休

ケーキ屋

 イタリアのケーキ屋さん“パスティチェリア”にはよくバールが併設されているらしく、代々木八幡のミラノこと『ミレチンクエチェント』がまさにそれ。自分のご機嫌をとるのが上手な先輩から仕事を終えた夕方に“今日ミレチ行っちゃう?”と誘われ向かうと、ショーケースにはまだケーキが残ってた。ラッキー♪ と「トルタ ディ カスターニャ(栗とミルクチョコレートのケーキ)」(¥550)を軽やかな白ワインで。栗がゴロゴロ入ったしっとりのスポンジに濃厚な生チョコがのったドルチェがワインに合う~。夜の疲れた体にワインとケーキ。これには味をしめた。今度は一人で行っちゃおっと。

ワインとケーキ

インフォメーション

1500

ミレチンクエチェント

◯東京都渋谷区元代々木町4-2 ☎03·5738·8821 9:00~23:00 月休