カルチャー
観たい映画が見つかる日本の映画館、いつかは行ってみたい世界の映画館。
Movie theater solves everything.
2023年8月5日
今日観る映画が決まらないという君へ。
photo: Takeshi Matsumi(1), Jun Nakagawa(2), Tomi Wahlroos(3)
text: Shimpei Nakagawa(1), Ryota Mukai(2), Shoko Yoshida(3)(4)
2023年8月 916号初出
何を考えても決まらないなら、映画館を決めることから始めるのはどう? 行く劇場が決まれば、上映作品の中から必ずや素敵な作品に出合えるはず。都内には気骨のある新館が増えているし、地方にも行ってみたい老舗がある。そうそう、旅に出たら立ち寄ってみたい世界各地の洒落た映画館も併せて。
1. METROGRAPH メトログラフ, NY

旅先で、わざわざ足を運びたくなる映画館が世界にはある。例えばフィルムメイカー、ネクタイデザイナーのアレキサンダー・オルチ(写真真ん中)がオーナーのニューヨークの映画館、「メトログラフ」だ。ビークマン・シアターやプラザなど、今はなきNYの映画館でかつて彼が感じた作品鑑賞以上の体験を、現代にも実現したくて作った劇場なのだ。新作上映はもちろん、往年の名作を35㎜フィルムの映写機でかけられるし、インディペンデント映画もカバー。そこにアレキサンダー自らデザインしたインテリアや制服を着たスタッフが出迎えてくれる館内にはキャンディショップ、ブックコーナー、レストランバーも併設。一度足を踏み入れれば彼が小さい頃に感じた映画館の〝魔法〟が味わえるかもしれない。



キャップ$35、トート$45
インフォメーション

METROGRAPH メトログラフ
◯7 Ludlow St., New York, NY 10002, USA ☎︎212·660·0312 営業時間は上映スケジュールにより異なる
アジアだけじゃない。
ホラーでロックなDIYの館。
2. Cinem@rt Shinjuku シネマート新宿, 新宿

ロビーで一際輝く「王家衛(ウォン・カーウァイ)」のネオンサインをはじめ、いつでもオリジナルの装飾物で賑わう「シネマート新宿」。そのきっかけは’18年だったという。「『恐怖の報酬』のリバイバル上映時に、トラックが橋を渡るシーンを再現したんです。ロビーを横断するほどの大物になっちゃったのですが(笑)。面白がってくれるお客さんも多くて、以来チャンスがあればスタッフでDIYしています」と宮森覚太さん。その人気は根強く、お客さんからチェーンソーを寄贈(!)してもらったこともあるほど。一癖、二癖ある劇場だけど、上映作品のセレクトもしっかり尖っていた。「『アングスト/不安』や『金持を喰いちぎれ』など、ホラーやロックの要素が感じられる作品に注目しています。反骨精神のある映画ですね」と宮森さん。そして、シネマートといえばアジア映画も忘れてはいけない。’21年3月にスタートしたオンライン映画館「おうちでCinem@rt」も担当する小澤宏之さんに聞けば、「韓国はもちろん、香港やトルコまで、ここでしか観られない独占作も含めて作品数は常時800本ほど揃えています」と劇場発のサービスとしてはかなり充実のラインナップ。劇場ロビー並みのディープな世界を覗いてみない?




7月上映の映画

いわゆる“迷惑系”動画配信者の女性が見舞われる恐怖体験を、画面越しの視聴者目線で描くホラー。製作はブラムハウス。7月14日公開。
©2022 TOWNVIEW PRODUCTIONS. LLC. ALL RIGHTS RESERVED

シネマートオリジナルの特集。21日から公開。「おうちでCinem@rt」では週1作ずつ順次配信。
おうちでCinem@rt

インフォメーション

Cinem@rt Shinjuku シネマート新宿
◯東京都新宿区新宿3-13-3 新宿文化ビル6・7F ☎︎03·5369·2831 営業時間は上映作品により異なる 無休
映画館のなかった片田舎に、
カウリスマキが作った映画館。
3. KINO LAIKA キノライカ, Karkkila

北欧が誇る巨匠、アキ・カウリスマキ監督は、カルッキラというフィンランドの小さな町にも自宅を構えている。ヘルシンキからバスで時間の田舎町。そこに、監督自ら町内初の映画館を作っちゃったというのだ。



何十年も空き家だった煉瓦造りの工場を、監督本人も一緒に改装工事し、2021年にオープンさせたのがこの「キノライカ」。ワンスクリーンのみだが、ハリウッドの超大作や、ミッコ・ミュッルラヒウチやアレクシ・サルメンペラなどの地元フィンランド出身の監督作を上映し、早くも町の憩いの場に。元工場のインダストリアルな雰囲気が残る併設のバーには、『愛しのタチアナ』と『白い花びら』に登場したバーカウンターや、『ル・アーヴルの靴みがき』に出てくるバーと同じ名前の看板などがあり、カウリスマキワールド全開だ。御大自ら皿洗いなどして働いている日もごく稀にあるらしく、運がよければお目にかかれちゃうかもね。



インフォメーション

KINO LAIKA キノライカ
◯Valurinkatu 2 C, 03600 Karkkila, Finland ☎︎044·240·5317 12:00~21:00、金11:00~2:00、土9:00~2:00 月火休
ふらりと立ち寄りたい
100歳以上の老舗映画館。
4. UEDA EIGEKI 上田映劇, 長野

東京から新幹線で約1時間半。自然に囲まれたのどかな長野県・上田市内に「上田映劇」はある。
老若男女が集い、上映作品は子供向け映画や地元がロケ地の映画もあり、アットホームな雰囲気。その歴史は意外にも昔、昔のその昔まで遡り、創業はなんと1917年。当初は桟敷や花道があった芝居小屋だったが、映画産業の発展とともに昭和以降は映画館に転身、時代に合った娯楽を人々に届けてきた。じゃあ創業100年以上たった令和時代は何かというと、間貸しの喫茶店『重澤珈琲』でひと休みできたり、上田市内の本屋『本と茶「NOBU」』と選書した本や、オリジナルグッズ、さらにアメリカから輸入したA24グッズを揃えたセレクトショップさながらのロビーなど、映画鑑賞以外の楽しみも溢れてる。映画の街、上田ならではだね。



7月上映の映画

『若き仕立屋の恋』
3人の名匠によるオムニバス映画『愛の神、エロス』の中で、ウォン・カーウァイ監督が手掛けた短編を12分伸ばして改めて公開した作品を7月8日から2週間上映予定。1960年代の香港で仕立屋の見習いとして働くチャンが、美しい高級娼婦ホアに出会い、魅了されていく物語。
インフォメーション

UEDA EIGEKI 上田映劇
◯長野県上田市中央2-12-3 ☎︎0268·22·0269 9:00〜22:00 月休
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