ライフスタイル
ジェントルマンならこうするね。/エチケット編
自分のことより相手を優先。紳士の基本は“思いやり”だ。
2021年4月17日
illustration: Shinji Abe
text: Tatsuya Onoda
edit: Tamio Ogasawara
special thanks: Katsuhiro Inn, Atsushi Momiyama, Katsuya Kubo, Masaki, Yuichi Shimoma, Shinichi Ishida, Shigeo Ueda
2015年12月 824号初出
年を重ねて、“ボーイ”はいつしか“マン”になる。
大切なのは“ジェントル”が付くかどうか。さあ、実践あるのみ!
ETIQUETTE 01
視界10m以内に人がいれば扉を開けて待つ。
紳士といえばレディファースト。もちろん、その精神は女性だけに向けるものではない。老若男女への心遣いは基本中の基本だ。例えば、後続者のために扉を開けて待つのは当然として、微妙な距離の人への対応に迷うぐらいなら、視界10m先に人がいたら待ち続けるぐらいの気概を持とう。ただ、相手を急かしてしまわぬよう、「ゆっくりどうぞ」と微笑みを絶やさずに。そこまでやり遂げてこそのジェントルマンだ。
ETIQUETTE 02
タクシーのお釣りが90円以下ならチップに。
池波正太郎センセイは、普通程度の運転やサービスであっても必ずチップを渡していたそうだ。それは、ドライバーの気分がよくなり、安全運転、サービスが向上すればいいとの思いから。これこそ、大人の配慮であり、優しさではないか。巡り巡れば社会のためにもなる。紳士を目指すなら、ぜひ見習いたい。僕らの場合は、より相手への敬意を強めて。お釣りが90円以下であれば、躊躇せずにチップとして渡そう。
ETIQUETTE 03
時計は常に20分進めておく。
再び池波センセイの言だが、「他人に時間の上において迷惑をかけることは非常に恥ずべきこと」と、“約束”について厳しく述べている。約束は自分だけでなく、相手の時間を縛るものと強く、強く心得たい。SNSの発達で、容易に遅刻を相手に伝えることはできるが、過ぎた時間を返すことはできないのだ。時計を20分進め、余裕を持ってことに臨む。これもまた基本中の基本と知るべし。
ETIQUETTE 04
エレベーターでは操作パネル前が指定席。
「自分の目的だけ果たせばいい」という感覚は、紳士とは対極にある。エレベーターに乗って、行き先階数を押して、後は知らんぷりなんて見苦しいじゃないか。エレベーターでは当然のように操作パネルの前に立とう。“開ボタン”を押して待ち、「何階ですか?」と声をかける。自分が降りる階のときも、慌てて飛び出さない。降りるタイミングを逸したら、階段で戻ればいいじゃないか。
ETIQUETTE 05
見知らぬ人と目が合ったら、笑顔で挨拶を返す。
人を前にして、「シャイだから」という言い訳は一切やめるべきだ。常に、爽やかに、はっきりと声に出して挨拶をしよう。見知らぬ人とふいに目が合ったときも、動じることはない。親しみを込めた笑顔と目礼を。相手も悪い気分はしないはずだ。さらに言うなら、喫茶店などを出るときも、「ありがとう」を忘れないように。店主だけでなく、場所と時間を共有した人へのお礼の気持ちだ。
ETIQUETTE 06
小さなことにこそ、くよくよする。
「えっ、なんか男らしくないよね」と思うようでは、まだまだ。ひとつの失敗、ひとつの失恋と、それがどんなに小さなことであっても深く考えることなくして、どうして大きなことができよう。小事にこそくよくよせよ、である。そこから何かを学び、次に成功すればいい。その積み重ねが紳士へと導く。「気にすることないよ」は、他者にかける言葉であって、自分にかける言葉ではないのだ。
ETIQUETTE 07
モノマネや手品など人を楽しませる特技を。
紳士の条件として二言目には「ウィットとユーモア」が出てくるが、これはもう生まれ持ったセンスが大きい。「じゃあ、諦めるか」では、紳士とは言えない。繰り返し練習すれば一つ二つの手品は身に付く。モノマネだって、「この人なら!」がきっと見つかるはずだ。時事に詳しくなり、“滑らない話”を仕込んでおくのもいい。もちろん場を読んで的確に芸を披露すること。ここも肝心だ。
ETIQUETTE 08
大いに恋をする。
相手の心の機微を察し、思いやりを持って接することができてこそジェントルマン。“気持ち”を汲み取ることは簡単ではないが、一つとっておきの方法がある。それは、ずばり恋をすること。大好きなあのコの気持ちが知りたくて、些細な仕草にも敏感になる。相手に心を砕く姿勢がもっともっと生まれる。結果、内面もどんどん磨かれていく。何も照れることはない。シティボーイよ、大いに恋をしよう。
ETIQUETTE 09
いつ何時でも横柄な態度と言葉は厳禁。
タクシーの運転手は年上であることが多い。なのに、道を間違えたとき、失礼な叱責をしてはいないか。「こっちはお金を払っている」という思いは金輪際捨て去ること。「自分の伝え方が悪かったです」と言える男になろう。レストランでも同様だ。「料理、まだ?」は厳禁。オーダーと違う料理が出てきたら、「どんなお酒が合いますか」と尋ねるくらいの余裕と優しさがあれば、紳士の仲間入りだ。
ETIQUETTE 10
電車やバスでは小さくなる。
常盤新平さんが『おとなの流儀』でも綴っているように、「公共の乗り物では“小さくなって”乗る」ことを常に心がけよう。股を開かず深く座る。立っているときは肩幅以上に足を広げてはならない。物理的なことだけでなく態度も小さく、つまり謙虚に。満員電車で足を踏まれることがあっても、ことさら騒ぎ立てない。紳士として、いつも気持ちは大らかに、態度は小さくあることだ。
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