カルチャー
沖縄の古いものを今に残す。
語り・中村ヒロキ
2022年7月6日
なくなってほしくない美しい伝統を今の形にしてつなげていくには。

ものづくりの視点でいうと沖縄は面白いですよね。例えば、染色、織物、それらを作るアルチザン(職人)といったすべてが僕にとってはインスピレーションのソースになります。これまでも〈VISVIM〉では、沖縄のアルチザンの方と芭蕉布や紅型のコート、久米島紬のシャツなども一緒に作ることをやってきました。芭蕉布ではオリジナル柄の着尺を作りましたが、バナナ(糸芭蕉)の茎の繊維を取るところから始めてもらったので、丸2年もかかりましたね。そもそも芭蕉布でものづくりをしたいと思ったのも、大正時代の芭蕉布のドレス(1)を手に入れたのがきっかけでした。僕が興味をそそられるのは、カルチャーがミックスされているかどうかで、亜熱帯気候のファブリックが西洋のドレスになっているって素敵な融合だと思ったんです。繊維を筋に沿って裂いて、同じ太さの繊維を手で結んで糸にしていくのですが、糸を績むだけでも手間も技術もいる作業ゆえに、出来上がった生地は特有のオーガニックなゆらゆら感が出てくるんです。


芭蕉布
芭蕉布とは沖縄本島北部の大宜味村のを中心に作られている織物のこと。芭蕉は英語ではJapanese Bananaといい、食用になるものがバナナで実芭蕉、布になるのは食べられないバナナの実がなる糸芭蕉で、その糸芭蕉の茎の繊維で織られる布を芭蕉布と呼ぶ。現在では作り手も少なく、1反織るまでに年単位の時間を要するので、値段はもちろん高いが、戦前は庶民の夏衣として自家用として作られ着られていた。男性用は通常ストライプだといわれているそうなので、(2)の格子柄や無地のものはサイズ的にも女性のものだと思われる。
紅型も沖縄固有の染め物ですが、使い型染めで作ってもらいました。僕はこの筒描きのうちくい(4)のように色使いがハッピーで、色が滲むのが紅型のよさだと思っています。VISVIMという文字やインディアンヘッド(5)をモチーフに作ってもらい、服にしました。古いものを収集し、それらが持つパッションを受けてものづくりをするのも、残していきたい伝統をマーケットにつなげることが僕のやるべきことだと思っているから。美しくて、格好いいから、つなげていきたい、現代の生活の中に受け入れられるようにって、そう思うんです。


紅型
琉球と呼ばれる以前の13世紀頃に起源を持つといわれている紅型は、沖縄の伝統的な染色技法のひとつ。紙型を使う型染めと、図案の線を糊袋で引き、その模様の部分に色を挿す筒描きというふたつの手法があり、めでたいときに何かを包むうちくいと呼ばれる風呂敷(4)などは筒描きで染められている。染めるには、顔料と天然染料が用いられ、顔料を使うことで色鮮やかになる一方で、染料で色の濃淡や滲みを表現。〈VISVIM〉では、琉球藍を使った藍染めの紅型や、紅型にあえてインディアンヘッドの柄を入れた羽織りものの製作も経験済み。
プロフィール
中村ヒロキ
なかむら・ひろき|1971年、山梨県生まれ。キュビズム代表。2000年に〈visvim〉を立ち上げる。芭蕉布や紅型のような古いものをたくさん所有しているが、選ぶ基準は、そのものの説明抜きに心が動くかどうか。
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