ファッション

NYでカルトな人気、謎のブランドにインタビュー。

HIDDEN Past, Present & Future

2022年4月20日

TOKYO CITY LIFE


text: POPEYE
2022年5月 901号初出

〈HIDDEN〉

もし〈HIDDEN〉を知っているとしたら、かなり情報の早い人なんじゃないかな。ニューヨークでは既に話題になっているカルトなブランド。というのも、アイテムの多くはECで販売されているんだけど、売り切れるとサイトを閉じてしまうので、まだオープンしているところを見たことがない人も多いみたい。ドレイクやファレルなんかがフォロワーで、どこの誰が始めたブランドなのかはいまだに謎のまま。以前からPOPEYEのことは気に入ってくれてたみたいで、今回の〈NEEDLES〉とのコラボレーションをきっかけにインタビューに答えてくれた。ねえ、〈HIDDEN〉、君たちは一体誰なんだい?

ーーインスタの人気アカウントであり、その名のとおり、謎が多いブランドでもある。一体誰が始めたプロジェクトなのでしょうか?

〈HIDDEN〉はアパレル、フットウェア、建築、アート、スニーカーなど、あらゆるジャンルのバイブスを集約したインスタのアカウント(@hidden.ny)として知られています。このアカウントを1人でやっているという人もいれば、集団でやっているという人もいるし、知名度の高い特定のフォロワーのサイドプロジェクトだと確信している人もいます。現代のカルチャーやクリエイティビティに大きな影響を与え続けている特定の時代、つまり’90年代後半から2000年代前半のストリートウェアにスポットを当て、現在のカタチへと発展してきました。何者であるかの真相はともかく、より重要なのは、このアカウントによってコミュニティがもたらされた、ということです。キッズたちはコメント欄に集まりおしゃべりをする。このようなフォーラム文化はアルゴリズムがタイムラインを決定する世界には存在しない、情熱、リサーチ、そして発見が詰まっています。

ーーブレイクのきっかけはドレイクのフックアップと聞きました。関わりの深い人物は?

ファレル、リル・ヨッティー、ダニエル・アーシャム、プシャ・T、J・バルヴィンなど、注目すべきフォロワーはたくさんいます。これらの人たちの心に響くというのは、かなり特別なことだと思います。

ーーインスタの他にも、ウェブメディアとしての『HIDDEN.RSRCH』、有料のメールレターも人気ですね。

過去の記事にはファレルのインタビュー、ヴァージル・アブローが所有したバーチャルスペースに関するもの、アイコニックなエアジョーダンの書体がどのようにして生まれたか、などがありました。『HIDDEN.RSRCH』が設立された理由のひとつは、インスタの外側に、多くのものごとに影響を与えているフリンジカルチャーのトピックスが読める場所を作るためです。つまり、もう少し深く掘り下げたい、教養を身につけたいというキッズに応えるためにスタートさせました。Sam Trotman(@samutaro)のようなライターがゲストで寄稿していることも特徴です。

ーー先日、ニューヨークの街中でユニークなゲリラ販売をしていましたね。

このブランドは、主にウェブサイトでの販売が中心です。各ドロップにまつわるキャンペーンは、これから発売される商品と重なるストーリーを反映していて、そこが醍醐味です。例えば、「Star Trak」のキャンペーンでは、N.E.R.D.のShaeと一緒に『In Search Of…』のアルバムジャケットの写真を再現したり、ニューヨークのキャナルストリートでのポップアップもキャンペーンの一環として行われ、ドロップは偽造品マーケットの隣に置かれました。焦点は商品を売ることではなく、「目に見えないところに隠されている」というコンセプトを斬新な方法で実現することだったのです。


偽物商が集まるニューヨークのストリートで路上販売するなど、毎回新作の発売と同時に流れるキャンペーンが話題になる。


’90年代にNIGO&高橋盾が原宿に開いた店が『NOWHERE』。その玄関先をグラフィック化し、ECサイトの入り口として使っている。〈APE〉や〈UNDERCOVER〉など、日本の’90年代ブランドに強い影響を受けている。発売中のみオープンし普段はクローズしている。

ーーいまのストリートウェアの面白さはどこにあると思います?

ストリートウェアは、サブカルチャーの枠を超え、完全にメインストリームになりました。それには長所と短所があります。情報が簡単に手に入るようになったことで、発見するステップ、魅力が薄れてしまった。しかし、新しい世代には自分が何かの一部であると感じたいという願望があります。製品そのものよりも、その製品を探すことに満足感を覚えることもあるのです。〈HIDDEN〉は、コミュニティと発見を重視し、その最前線に立ちたいと考えています。

ーーサークルに「h」が入ったロゴは、どのようにして生まれたのでしょうか?

実は、かなり早い時期にコミュニティのメンバーから提案されたもので、それ以来、ずっとブランドのアイデンティティになっています。グリーンという色の重要性については、創造性を表しています。探検、発見、そして自然を連想させます。これだけ人気が出たのは、デザイナー冥利に尽きますよね。〈HIDDEN〉のコミュニティの魅力は、メンバーが将来のコレクションで使用する可能性のあるデザインワークを提案する機会を得られることです。コラボレーターには適切な報酬が支払われますし、新進気鋭のデザイナーには才能と作品をアピールする場が提供されるということです。

HIDDEN NEEDLES ソックス
イニシャル入りの至ってシンプルなデザインだけどロゴの強さが際立っている。パンツの裾から「h」マークが覗いているだけで思わず、「〈HIDDEN〉知ってるんだ」ってなるよね。こちらのソックスは日本のブランド〈NEEDLES〉とコラボレーション。
 

ーー〈HIDDEN〉のアイコンといえばソックスです。なぜソックスだったのでしょうか?

靴下は本当に楽しいプロジェクトです。〈HIDDEN〉ブランドで製作してきた素晴らしいアイテムの中で、ソックスが定番になったというのは面白いですね。N.E.R.D.の代名詞がトラッカーハットになったのと同じようなものです。〈HIDDEN〉のコミュニティでは、ソックスをはいた写真を投稿することで感謝の気持ちを伝え、時には私たちのフィードに残ることもあります。とても共生的な関係だと思っています。

ーー〈NEEDLES〉とのコラボについて教えてください。日本では服好きに支持される少しマニアックな老舗ブランドのイメージですが、アメリカではどうですか? このブランドを選んだ理由は?

私たちにとっては、文字どおり、夢のようなコラボレーションです。いい意味でまだニッチなブランドで、どこにでもあるわけではないので、A$AP Mobがロックするようなイメージ。ニューヨークにあるNEPENTHESのストアは、間違いなくこの街で最高のショップのひとつですし、隠れた名所でもあります。あまり目立たない、真の目的地のような店です。

ーー日本でも〈HIDDEN〉が買えるのを楽しみにしています。

私たちの最終的なゴールのひとつは、HIDDEN Tokyoのポップアップです。夢のロケーションは……恐らく、想像がつくんじゃないでしょうか。私たちも〈NEEDLES〉との特別なアイテムを日本でドロップできることを楽しみにしています。今日はありがとう。