ライフスタイル
【#4】ジャズ界の先輩とファッション
2022年5月2日
text: Mitsuyoshi Azuma
edit: Yukako Kazuno
前回はバンド活動とスーツ、ということについて書いたが、ビッグバンド以外のライヴではそうそうスーツやジャケットを着ることは無い。何を着ているか、と言うといわゆる私服のシャツである。ただ、いくら私服とは言っても他人様の前で演奏するわけだから、「激安無地Tシャツ税込110円、多少の汚れやシワがある可能性があります」、というものを着るわけにも行かず、ちょっと派手目のシャツなんかを着ることが多いのだが、30代の頃に縁あってジャズの方々とのセッションに呼ばれることが多くなってきた。
色々な方々と共演させて頂いたのだが、ある日ピアノの板橋文夫さんとご一緒した時に、何とも言えぬ強烈な印象を受けた。着てるシャツが妙、妙と言うのも失礼だが、普段余り目にしないシャツなのである。板橋さん本人の映像で見て頂けたらと思うのだが、30年以上前のことでネットにもそんな画像や動画は無い様なので、代わりにこんな写真を見て頂きたい。

ジョニー・オーティスというブルースマンの「コールド・ショット」というアルバムだが、板橋さんが着ておられたのは、この真ん中の人と右端の人の中間の様なシャツで、おお、ジャズの人はこういう服を着るのか!と感動して、以後このテのシャツを一生懸命集める様になった。本当は”ダシキ”というシャツらしいが、未だに日本ではそれほどメジャーではなく、普通に変換すると”出汁器”と出てきてしまう。しかし名前などどうだって良い。
インド洋品店やお香の匂いのする服屋などで見かける度に購入してきては「ジャズシャツ1号」「ジャズシャツ2号」・・・、と命名して次々とライヴに投入していった。確か1号が紫色とオレンジのグラデーション、2号は緑色のフェルト状生地、と未だに鮮明に覚えている。E-Bayを利用して海外から取り寄せたことだってあるぐらいだが、海外モノは柄はともかく、布を二枚貼り合わせたみたいな縫製には残念な感じが漂う。これはE-Bayで購入した5号か。

本当に一時はこのテのシャツばかり着ていたのだが、ある時から余り着なくなった。というのもある日のライヴでベースのE氏から、
「お、吾妻君、そのシャツ、新モノだね。」
「そうなんだよお、6号だったかな。」
「ふーん・・・、何か健康ランドみたいだね。」
これ以降、急激に稼働が落ち込み、2号と3号は春秋の寝間着になっているとも聞く。
プロフィール
吾妻光良
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