ライフスタイル

【#2】撮影

執筆: 野口絵子

2022年1月18日

photo & text: Eko Noguchi
edit: Yukako kazuno

はぁはぁはぁ、いつまで歩くんだろ…。
ジリジリと肌に染みる日光を浴びながら私は海辺の丘を登っていた。ニュージーランドの紫外線は日本の紫外線の七倍の威力があると言われるだけある。肌の奥の層まで熱い。そんなに熱い中どこを目指しているかというと、夕日の絶景スポットだ。その場所で、撮影をするのだ。

私は小さい頃から登山する時はMilletの登山服を着ている。今回、そのMilletさんの新作登山服のモデルをさせてもらうことになった。早朝にオークランドを出発して、車で1時間弱、西岸ワイタケレでトレッキングをしながら撮影をする。登山服は3パターンあり、それぞれ違うスポットで撮影をする予定。

テレビに出た経験は数回あるが、モデルの回数はとっても少ない。自分ではリラックスしているつもりでも、カメラマンさんに顔が固い、笑ってと何度も言われた。口を少し開いたほうがいいのか、閉じたほうがいいのか、上を向けばいいのか、少し斜め上を向けばいいのか。そんなことを頭の中で考えながら、ぎこちなくも静止してポーズをとる。

朝はKare Kare fallという滝で撮影をした。滝が大きくて立派で美しく、自分のカメラで写真を撮るのについつい熱中してしまった。池の中に入ったり、石の上でヨガをしたり、岩の間を飛んだり、木に座ったり、いろんなバリエーションのポーズで写真を撮っているうちに、どんどん緊張もほぐれた。そんなこんなで、撮影が始まって10時間。そろそろ疲れがでてきたなぁ…と思っていた時に、「後はビーチで夕日の撮影だよ」と言われた。よし! これで最後の撮影だ! と思い一気に体の力が湧いてきた。

コーディネーターさんが撮影場所を決めるというので、その後ろをちょこちょことついて行った。夕日とテントの撮影をする予定と聞いていたので、砂浜の上にテントを設置するのかな? と思い歩いていたけれど、いつまでいつまでもコーディネーターさんとカメラマンさんは前を進む。そして、砂浜を通り過ぎ、林の中まで入っていった。
あれ???ビーチで撮ると思っていたけど、まさかまた登るの⁉︎ と衝撃を隠せない私。

へとへとになりながら、林道を登ること1時間。カメラマンさんたちが立ち止まり「ここだ!」と叫んだ。顔を上げて前方を見ると、私たちが歩いてきた砂浜が夕日で真っ赤に染まった壮大な景色が広がっていた。私は、これまでの疲れもすっ飛んで、その景色に見いってしまった。

その景色をバックにテントを立て、夕食の準備をしているところを撮影した。

撮影が終わり、一日一緒に仕事をしたコーディネーターさん、カメラマンさんと美しい夕日を見ながら食べるカップラーメンの美味しさが体に染みた。

プロフィール

野口絵子

のぐち・えこ | 2004年生まれ。父、野口健とともに幼いころより登山を始める。14歳でネパール・カラパタール峰(5,545m)に登頂。その後、東南アジア最高峰キナバル(4,095m)や、アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ(5,895m)などに登頂。「日立 世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターを務める。現在、ニュージーンランドに留学中。