ライフスタイル

私のいえは、東京 山のうえ Vol.3

社本真里の隔週日記: 小屋をたてた

2022年2月20日

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

いただいたジムニー。

 集落に暮らしはじめて真っ先に、教習所に通った。ジムニーはマニュアル車だったので、AT限定解除にするためだった。家までの道は斜面がとっても急なので、MT車の四駆車がいいと村の皆が口を揃えて言っていた。

 暮らし始めて1年程が経ち、住む場所を真剣に探しはじめたとき、近くに借りられる家がなかった。集落を出る選択肢も考えていたけれど、同じ集落に住む友人が「うちの土地あいてるよ」と言ってくれた。その時すぐに浮かんだのが、小さな家を建てるということだった。大学と就職先で学んだ少しの経験で、なんとか小屋の絵は書けたのだ。檜原村は、家も畑も急峻な土地にあり、とにかく平らな場所が貴重なので、なるべくコンパクトにという気持ちがあっての高床式の小屋の計画だった。

当時書いた小屋の間取り。

 もちろん私には小屋をたてる技術は全くなかった。そこでジローさんに一緒に小屋をたててくれない? と頼んだ。ジローさんは二つ返事で承諾してくれた。 私がこの集落に住んで驚いたことの一つが、みんな“なんでも自分でできる”ことだった。食べるものを畑で育てること、 そこから調味料をつくること、火をおこしてお風呂にはいること、自分で家をたてること。みんななんでも自分の手で暮らしをつくっている。ジローさんもそのひとり。

 設計事務所時代からお世話になっていた大工さんが、基礎と小屋組までをご好意で引き受けてくれた。そこからはジローさんが棟梁となって、私は補助として慣れない作業を手伝った。ジローさんは毎日コツコツと小屋づくりを進めた。地元の木材はかなり少なかったこともあって、ガラスなどその他の資材も誰かの家に転がってるものを頼んで調達したりもした。約半年かけて、小屋が完成した。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり |  1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。