ライフスタイル
【#4】ヴェイパーウェイヴ
2021年11月8日
translation & text: Maya-Aska
edit: Yu Kokubu
2019年秋、バンドキャンプで一つのテープを見つけた。このアンビエント、スポークン・ワードアルバムはRadiomay、Natasha Denisova とSokpb Avabodhaの三人の作品。テープがSokpb AvabodhaのVKページ(ロシアのSNS)に売りに出されていたので、連絡を取り合い、彼と会う事になった。 小さい白いジープがSokpbを乗せて待ち合わせ場所に着いた。彼の車の助手席に座った時、 四つのテープが目に入った。彼が参加したチリのヴェイパーウェイヴレーベルのコンピレーション作品だった。少し話しをして、彼がヴェイパーウェイヴレーベルのオーナーだと知った。 それから二年後、このポパイのタウントークの為にインタビューをした。
音楽制作に興味を持ち始めたのはいつ頃?
14歳の時、親戚の友達がスムーズジャズをヤマハのシンセサイザーで録音したんだ。一曲早送りして、ブレイクやシンコペーションを加えて、それがポップのジャングルみたいな曲になったんだ。あ、後もう一つ、オープンリールの録音機で色んな実験をしたんだ。この録音機は二つの曲を同時にミックス出来るから、ピンク・フロイドの「Sorrow」とザ・プロディジーの「Weather Experience」を合わせたらヴェイパーウェイヴ風の物が出来上がったんだ。それもヴェイパーウェイヴが正式に現れる前にね。子供時代の経験は色々な面で自分を形成するよ。
最初のアルバム、「trava / gran’」は2009年に出されたけど、どうやって収録したの?
実は2005年に収録したんだ。使用していた Creative Live! には様々なエフェクトが内蔵されていて、その中で特に奇妙なのがあったんだ。アコースティック・ギターをPCのマイクで録音して、FXをかけて、性質を少し変えた。それで26分の曲、「Trava」 が仕上がったんだ。
二曲目はテレビのチューナーを点けて 「Trava」で使ったエフェクトを通したんだ。聴いた時は魂が体から抜けている感じだった。何か自分の身に特別な事が起こっていると察して録音をした。 だけど自分以外興味を持つ人はいないと思って、公表するまで4年間待ったんだ。2009年にtorrents.ruのウェブサイトで自主制作音楽を載せられるページに感化されて、「trava / gran’」を 投稿する気になって、それから良い評価が来て音楽を続ける動力になったんだ。
Sokpb の音楽には特定のムードがあると思う。ジャンルで言ったらドローン・ミュージックかアン ビエント。けどギターを良く使うよね。
トランス状態に自我を持って行く音楽が好きなんだ。気に入った部分を繰り返し、幾多も幾多も聴くのが好き。ギターはそんな中で予測不可能な楽器だから面白い。強く、弱く、弦を抑えなかったり、色んな手法がある。僕の曲のほとんどが繰り返されるコードを基本としているけど、空白の部分があったり、音が静かだったり大きかったりする。そんな風に多様性を小さな枠の中で出しているんだ。僕がミニマリズムのファンなのは、一個のパターンから様々な変化が楽しめるから。
ほとんどのリリースがCDの形式で出版されているよね。それはなぜ?
ストリーミング・サービスを使わないのは音楽が物理的な形態で来るのが好きだから。シンプルにCD-Rに挿入された物でも好き。レコードを直接音楽家から購入する際、何らかの繋がりが生まれよね、ダウンロードする時はそんな瞬間が無い。しかもダウンロードしても聴かなかったり、 すぐに削除してしまう人もいる。
自分で作曲した物の中で特に気に入っているのはどれ?何か特別な意味があるの?
最初のアルバム 「trava / gran’」と「velitchiye gor」。後者は僕がローファイを始めるきっかけになった作品。それと一番人気の、WMRIとのコラボの「Music for Fields」。2010年に発売されたにも関わらず、まだポジティブな評価を貰うんだ。
今は主にヴェイパーウェイヴの曲を作成するよね。どうやってヴェイパーウェイヴにハマったの?
実は結構前からヴェイパーウェイヴをやっていたんだ。当時は知らなかっただけ。昔は何の音効 果もないエレキ・ギターを所有していて、それをVega のテープレコーダーに繋げて、音量を上げ たら音が歪み出したんだ。Adobe Auditionでサンプルを切り取ってギターのパターンとミックスしたらヴェイパーウェイヴになったんだ。その時のファイルは保存されているから近々公表したいと思う。 2017年に「 t e l e p a t h テレパシー能力」の曲に出会って、すごく興奮した。ピアノのサンプルが10分間繰り返し再生されていて、気付いたんだ、15年前僕がやっていた事を今の音楽家はやっているんだと。好きな部分を取って、20分間、休みなく再生する。甘い物を欲するように、食べて、 食べて、いっぱいになるまで止められない。
Sokpbのレーベル、Zhurnal Mod は古いソビエト雑誌のように出来ているよね。僕の母親はBurda という雑誌を持っていてSokpbのデザインに似ていたよ。このヴィジュアルはどうやって見つけたの?
ヴェイパーウェイヴはたまにヴィンテージ・カーや80年代の女性のヴィジュアルを使うのを見る。 僕はそれと同じように、ソビエトの過去に結び付けたくて、こんな外観にしたんだ。
Zhurnal Mod 曲の多くがUntitled、名前がないよね。どうして?
他の人の音楽だから。僕のだとはとてもじゃないけど言えない。だけど数曲には名前をあげた。 例えば「8-800-On The Line Dreaming」。8-800が入った番号に電話して、人が出るまでの音楽を携帯で録音したんだ。曲の名前は単純に携帯のファイルの名前。このアルバム、そして「 Pathos / Hades」というアルバムはチリのレーベル、No Problema Tapes が出版したんだ。後者 の作品は地中海、ギリシャと神話を思い浮かばせる物。
自分のレーベルで全てを出す訳じゃないんだ。
そう。一度チリ人 Sakura Lee のアルバム「SWEET DREAMS/Night is Life」に遭遇してすごく気に入ったんだ。デジタル版を買って、あまりにも好きになったから自分でカセットに録音したんだ。カバーも作って、Sakura Leeに「カセットとして出版しない?」と聞いたら了承してくれたんだ。
Zhurnal Modのバンドキャンプのヘッダーには「Zhurnal Mod の曲の尺は全て5分の倍数」と書いてあった。それは標準カセットに好きな Zhurnal Mod の曲を簡単に録音出来るって事だよね。
そうなんだ。好きな曲があったらカセットに録音、カバーをカラー印刷して自分用のコピーを作るんだ。ファンの為に作るコンピレーションにも便利。全ての作品を買ったファンが何人かいて、その人達にリリースされていない曲を集めた特別なコンピレーションを作ったんだ。カバーは雑誌から切り取った物だからカセットは本当に唯一無二な物。 これは全ての曲を購入してくれたファンが送ってくれた写真。
他のレーベルと一緒に音楽を出す事もあるけど、自分で音楽を集めて、カバーを作って、売るのが好きなんだ。
Sokpb Avabodha のバンドキャンプ – https://sokpbavabodha.com
Zhurnal Mod のバンドキャンプ – https://zhurnalmod.bandcamp.com
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