ライフスタイル
【#1】ウラルの音楽シーン
2021年10月13日
translation & text: Maya-Aska
edit: Yu Kokubu
ポパイウェブのコンタクトフォームに突然来たロシアからのメール。送り主は「ФAKTYPA(ファクトゥラ)」という音楽レーベルの設立者・アルテムさんだった。どうやら『Tobira Records』の取材記事を見たようで。アルテムさんのメールには、”私はロシアのエカテリンブルグで地元のアーティストの音楽のみをテープでリリースする音楽レーベルをやっています。” ”ロシアにはカセット文化がまだ根付いていない。” ”リスナーに刺激を与えたいので『Tobira Records』の記事を翻訳して欲しい。” というようなことが書いてあった(日本語からロシア語に翻訳するのが難しいから一旦英訳版を出して欲しいと。そして翻訳記事を9月に公開)。そんな経緯からやりとりが続き、アルテムさんとメールをしながら出来上がったタウントークを4回に分けてお届けします。
エカテリンブルクはロシアの主要な都市の一つ。丁度ヨーロッパとアジアの間に位置し、ウラル山脈に囲まれている。2017年、アルテム・デュルツォフとダニール・クライヴは、その場所に音楽レーベル「ファクトゥラ」を設立。ローカルの音楽家と働き、地元の音楽シーンを顕著に反映しているレーベルだ。現在 「ファクトゥラ」の従業員は2人から5人に増え、これまでに32作品をリリースしている。 2021年には「ファクトゥラ」では初となるレコードも発表され、このロシア産の音楽レーベルの作品は、現在日本の『Tobira Records』や英国の『Hotweel Salvation』でも購入出来るようになった。
そんな「ファクトゥラ」の設立者の一人、アルテムさんがウラルの音楽シーンと立ち上げたレーベルについて教えてくれた。
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——『ファクトゥラ』はどのように始まったの?
アルテム・デュルツォフ(以下、アルテム) 小さなレヴダの町からエカテリンブルクに移動したのだけど、レーベルの仕組みやライブの開催、そしてどんなアーティストが住んでいるのか分からなかった。2017年の春、ウラル・ミュージック・ナイトというロシア最大の音楽フェスティバルに関わるよう、招待されたんだ。初めて主催者として働いて、フェスティバルの経験に加えて様々なアーティストが載っているテープを作ったんだ。
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——レーベル名の由来は?
アルテム ダニールがモダン・アートの本を読んでいて、「ファクトゥラ」という言葉を構成主義の章で見つけたんだ。構成主義のアーティストはこの単語を素材の特性を表現する時に使ったらしい。僕達にとってファクトゥラはウラルの音楽の手触りや形を形容している。
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——なぜ地元のミュージシャンの音楽だけをリリースしているの?
アルテム 「ファクトゥラ」はジャンルや音の質には特に境界線は引いていないけど、真正性が大事だ。僕達が住んでいる場所の触感やイメージを表している物が大事。ウラル地方から来ていないアーティストの申し出を断るのが本当に難しい時もある。音楽が完璧でありながらも名が知られていない人達が大勢いるから。
——今取り組んでいる作品は?
アルテム 最新作はミルニ・グオロドゥという音楽家の作品で、青春期に直面する障害と苦労についてのアルバムなんだ。カバーはテオドール・キッテルセンの絵に出てくる水の精霊、ノッケンを象った。社会に受け入れられるようと努める姿、そしてそれとは反対にある傲慢を表している。アウトサイダー・ポップから影響されていて、魂のこもった音になったと思う。
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——ファクトゥラのギグで特別な物はあった?
アルテム 勿論!ギグはファクトゥラの最も重要な側面の一つだよ。人々が音楽と同じ空間に居る際、音の振動が体を通り抜けて特別な気分になる。自分と周りの人が一つになる瞬間。そんな気持ちになるとライブの催しを続けたいと思う。それが無いと世界や社会から疎外されている感覚になると思う。コンサートは様々な物があった。バーで、クラブで、公共の場、図書館、プラネタリウム、屋上でも。
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——今後の計画は?
アルテム 来年はレコード形式の音楽をもっと出版したい。コロナの蔓延が収まったら、大規模な音楽フェスティバルも執行したい。レーベルは地元の音楽と共に進化していると思う。今受け取っている音楽は2〜3年前の物とは異なる。恐らく音楽シーンがもっと本格化していて、自信を付けているんだと思う。「ファクトゥラ」が今現在の精神を保つよう願っている。
※Remm (Russian Electronic Music Minds) が制作したファクトゥラのドキュメンタリ ー、英語字幕付き。
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