カルチャー

ニューヨークが舞台の映画について話そう。

ソフィア・コッポラ、ラシダ・ジョーンズ、マーロン・ウェイアンズ

2021年11月8日

text: Momoko Ikeda
cooperation: Nozomi Hasegawa

たとえ1年に1本しか観ないという人も、好きな映画の話を誰かと。
100本観たから偉い? 正しい? そうじゃないから楽しいんだよねー。

写真は『オン・ザ・ロック』のメイキングの一シーン。ソフィア・コッポラ監督が俳優のラシダ・ジョーンズとビル・マーレイに熱心に演出をしている。息の合った3人は、まるで雑談を楽しんでいるようにも見える。

映画の話をするのが好きなのは、世界共通なんじゃないか? と思ってニューヨークに目を向けてみると、ほらほら、2020年公開『オン・ザ・ロック』の監督であるソフィア・コッポラ、主演を務めたラシダ・ジョーンズ、マーロン・ウェイアンズの3人が集まって楽しそうに話をしている。そういえば本作はニューヨークを舞台に、ソフィアにしては珍しい痛快なコメディで、ビル・マーレイとの再タッグも見ものだ。ちょっと耳を傾けてみると、どうやらこの3人(ビルはお休み)はニューヨークが舞台の映画について語らっているようだ。

 

お話し中の3人

ソフィア

ソフィア・コッポラ

1971年、NY生まれ。映画監督。東京を舞台にした映画『ロスト・イン・トランスレーション』でもお馴染みの映画監督、脚本家。今までの作風とは違って、今回は父娘をテーマにしたコメディドラマで新境地を開いている。以下、ソフィア。

ラシダ

ラシダ・ジョーンズ

1976年、LA生まれ。俳優。監督、脚本家としてもマルチに活躍していて、しかもハーバード大卒の才色兼備なハリウッド女優。今回は主人公のローラを演じた。ミュージシャンのクインシー・ジョーンズの娘でもある。以下、ラシダ。

マーロン

マーロン・ウェイアンズ

1972年生まれ。俳優、脚本家、プロデューサー、映画監督。生まれも育ちもNYという生粋のニューヨーカー。本作では、仕事に情熱を燃やし多忙な中で浮気疑惑をかけられる夫ディーン役を演じている。以下、マーロン。


ソフィア

ソフィア

父(フランシス・フォード・コッポラ)は今でも映画に対して情熱的で、よく観てるの。だから彼と映画について話し合う時間は楽しいんだけど、みんなニューヨークらしい映画だと何が好き? 父の映画以外となると候補を挙げるのが難しいんだけど(笑)、ダスティン・ホフマンが出てる『トッツィー』はグラマラスなミッドタウンが描かれていて好き。あと『オール・ザット・ジャズ』『ドゥ・ザ・ライト・シング』もいいわよね。

ラシダ

ラシダ

確かに『ドゥ・ザ・ライト・シング』は素晴らしいわよね。マンハッタンではなく、ブルックリンだけど〝ニューヨーク〟って感じよね。

ドゥ・ザ・ライト・シング
(監督:スパイク・リー/1989年/120分)
スパイク・リーが主演・監督を務めた代表作は、ソフィアとラシダのお気に入り。マンハッタンとはまた異なる1980〜’90年代のブルックリンの黒人街の街並みや人々を生き生きと描く。赤い壁の前を行き来するシーンを観ていると、ブルックリンの夏はめちゃくちゃ暑そうだ。
マーロン

マーロン

ブルックリンといえば、『レクイエム・フォー・ドリーム』もいいよね。監督のダーレン・アロノフスキーは、コニーアイランドやボードウォークの描き方がすごくいいんだよ! この街を舞台にしたいい映画ってホントいっぱいあるよなあ。

レクイエム・フォー・ドリーム
(監督:ダーレン・アロノフスキー/2000年/102分)
生粋のニューヨーカー、マーロンが出演している本作は、ブルックリンが舞台。「監督のダーレン・アロノフスキーはコニーアイランドやボードウォークの描き方がすごくいいんだ」と彼も絶賛していた。ヒューバート・セルビー・ジュニアの小説『夢へのレクイエム』を映像化した作品で、4人の男女が薬物中毒で破滅に向かっていく様を描く。
ラシダ

ラシダ

『オン・ザ・ロック』もNYが舞台。歴史あるカーライルホテルの『べメルマン・バー』のシーンは特に〝らしさ〟が出てる。この街ならではのワイルドな夜を垣間見ることもできるしね。私は大雪のクリスマスの日にここで身動きが取れなくなったいい思い出もあるの。

ソフィア

ソフィア

あそこはラグジュアリーな空間よね。私は最後のシーンに出てくる『インドシン』にたくさんの思い出があるわ。夜のNYが好きで、空港からシティへ向かうときに見える景色にはなぜか毎回グッときちゃうのよね。そういえば、ソーホーを歩き回りながら撮影していたら、マーロンが友達に偶然出会ったりしたこともあったわよね。

マーロン

マーロン

あれは友達じゃなくてただのファンだよ。「マーロン! どこにいたんだ! 探してたぜ!」って話しかけてきたけど、相手は僕の知らない人(笑)。僕は生まれも育ちもNYだけど、NYのファンってのは人をすぐ友達みたいに扱うところがある。この作品でマンハッタンはいいバックドロップになってて、劇中ではっきりと映ってないかもしれないけど、交通渋滞とか慌ただしい喧騒の中でみんなフラストレーションが溜まってて、怒鳴られて怒鳴り返すようなやり取りにもリアルさがある。あと、車中の長回しのシーンで、ビル・マーレイ演じるフェリックスとラシダ演じるローラが濡れたコブルストーンの石畳のストリートでスパイするシーンは、とてもNYらしいと思うな。

オン・ザ・ロック
(監督:ソフィア・コッポラ/2020年/97分)
夫ディーン(マーロン・ウェイアンズ)との結婚生活に疑いを持ち始めたローラ(ラシダ・ジョーンズ)は、稀代のプレイボーイである父(ビル・マーレイ)の助言で夫を尾行することに。現代の男女間の気持ちのすれ違いや父娘の世代間衝突を、リアルかつ軽快に描いている。『べメルマン・バー』やレストラン『インドシン』といったニューヨーカーにとってのリアルなホットスポットがロケ地として使われていて、行ってみたくなる。
©Apple
ソフィア

ソフィア

ビルといえば、実はもっと彼とマーロンとの絡みのシーンがあってもよかったなって、今になって思っているの。ビルとの仕事はいつも最高で、この作品で2回目だったから彼とはもう友達だし、とても頼りにしているの。彼が現場に入ってフェリックスをどう演じるか、他の俳優たちと一緒にどう演じるかを見ていて楽しかったわ。

ラシダ

ラシダ

それに父親のフェリックスと娘のローラとの世代間の問題を提起しているところが、この映画の面白いところでもあるわよね。話し合うことの大切さも示してる。

ソフィア

ソフィア

この映画は家族の話だし、家でリラックスしながら観てもらえたらいいなと思ってるわ。今は旅行もできないけど、大好きなNYの街の話でもあるので、これを観て楽しんでもらえたら嬉しいわ。私は幼い頃から洗練されたスマートなコメディを観て育ってきたの。でも、そういうものが今少なくなってきていると思うし、こんな時代だから映画はストレスのないものがいいなと思っているの。

マーロン

マーロン

途中で議論することがあるような内容でも、最後はハッピーな気分で終わる映画がいいよね!

©Apple


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