カルチャー
三宅唱のPOP-EYE CINEMA
テーマ:『メインストリーム』
2021年10月29日
text: Sho Miyake
2021年11月 895号初出
![三宅唱のPOP-EYE CINEMA](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/10/b5b0c086c069d2ca31d774eb78fb4f33-1600x900.jpg)
SNSをやめてもう何年か経つし、SNSについて考えるのも嫌というかほかに考えたいことがあるからあんまり考えたくないので、SNSや動画配信を題材にしたこの映画はあんまり興味が持てないかなあと思っていたのだけど、ジア・コッポラの監督作だと知って、お、何かあるんじゃないかと思って、観た。前作の『パロアルト・ストーリー』、だいぶ前に観たので物語は全部忘れたが、なんとも言葉にし難い表情を浮かべた登場人物が呆然と立ち止まっている姿を捉えたカットだとか、日暮れの薄暗い空気感や妙にざらついた質感を覚えている。
それで本作『メインストリーム』、好きかと問われると、やはり題材ゆえ好きとは言いきれない。でも好きかどうかは問題ではなくて、「嫌いかどうか」が問われている映画だと思った。変な表現だからうまく伝わるかわからないが、これはこれでちょっと珍しい映画体験だったし(=観てよかった)、いろいろ考えるいい機会になった。
![映画『メインストリーム』](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2021/10/c13cddc76c62f74ff8206975ba1e8d85-2-1600x898.jpg)
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この映画は、「好き」と相手に伝えるのは難しくて、逆に「嫌い」と伝えるのはとても簡単である、というシンプルなことが軸になっている。序盤、登場人物たちが好きを伝える下手くそさがユーモア混じりにはっきりと演出されていて、また「嫌い」の暴力性や、SNSとは「嫌い」があまりにも簡単に表明できるシステムになっていることが簡潔に演出されている。
そして、そうやって好きか嫌いか二つにあっさり分けること、それ自体を問題視する物語になっていると受け止めた。こう書いてしまうと当たり前のことだが、好きなところもあるし嫌いなところもあるのが人間の心理だし社会だ。そういう矛盾を冷静にじっくり考える機会をSNSは奪っている、という感じ。だからそれに抗って、好きな点と、嫌いな点改め「引っかかる」点を具体的にメモしてみます。
好きな点は、アンドリュー・ガーフィールドの「内面」を捏造せずにある距離をほぼ終始とりつづけたところ。引っかかる点は終盤のある場面、二人の人物が別れる時のカメラポジション。こっち側にカメラ置いちゃうの? 逆じゃない? なんて思ったが、どうだろう。
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