カルチャー
ジア・コッポラ監督にインタビュー。
2021年10月7日

Courtesy of Tori Time
ジア・コッポラ監督の最新作『メインストリーム』が10月8日より公開される。主人公はアーティスト志望のフランキー(マヤ・ホーク)だ。彼女が謎めいた男(アンドリュー・ガーフィールド)に出会うところから物語は幕を開ける。リンクという名前以外は正体不明の彼に魅了された彼女は、友達のジェイク(ナット・ウルフ)を巻き込み、YouTube制作を開始。たちまち人気を博したはいいが、それと同時にリンクの化けの皮も剥げれていき……という話だ。すごぶるエモい青春映画だった前作『パロアルト・ストーリー』とは打って変わって、シリアスな本作が描くのは、SNS時代を生きる若者のアイデンティティのありかといえるかも。というわけで、監督であるジア・コッポラにインタビューを遂行した!

©2020 Eat Art, LLC All rights reserved.
——まず「おかえりなさい!」と言わせてください。あなたの長編デビュー作『パロアルト・ストーリー』に大感銘を受けた者にとして、新作をずっと待ち望んでいたからです。
ジア・コッポラ(以下、ジア) どうもありがとう(笑)
——前作から『メインストリーム』までは7年もの歳月が経過していますよね。その間、写真家やMV監督として活動していたのは知っていますが、映画監督として本作にたどり着くまでの道のりはどんな感じだったんですか?
ジア 『パロアルト〜』を撮った後、なんでもいいから映画を作りたいとは思わなかったの。自分が共感できること、伝えたいことをちゃんと見つけて、それをもとに作りたかったから。だから写真を撮ったり、MVを監督したりしていたんだけど、ふたつのきっかけが、『メインストリーム』へと私を導いてくれた。まずひとつ目は、エリア・カザン監督の『群衆の中の一つの顔』を観たこと。そこに描かれているテーマは、今にも通じるなと思ってインスピレーションを受けた。もうひとつは、インフルエンサーのエージェントをしている友達の話を聞いたこと。その話を聞いて、「インフルエンサーと呼ばれる人たちはなぜあんなに人気なのか?」といったことを、映画を通して考えてみるのは面白いんじゃないかなと思って。それで『メインストリーム』を作ることにしたの。
——なんと『群衆の中の一つの顔』がインスピレーションだったとは! あの作品は1950年代を舞台に、謎めいたシンガーがラジオに担ぎ上げられて人気者になっていくと同時に、その裏の顔も明らかになっていくという物語だった気がしますが、言われてみれば『メインストリーム』に似ていますね。あの物語にSNSという新しいメディアをかけ合わせ、現代的にアップデートしたのが本作というわけですね。
ジア そう、あの作品は人間の本質を描いているから、現代に置き換えられると思って。あともうひとつ、『群衆の中のひとつの顔』で惹かれたのは、ラブストーリーが土台にあったこと。ある種の皮肉すら感じられるそういう構成が面白いなと。
——本作でもラブストーリーがひとつの重要なファクターになっていますね。『パロアルト〜』とは全く違うテーマを扱っているにもかかわらず、その点において両者は似ていると思いました。というのも、2作とも主人公の女の子は、近くに自分に思いを寄せる素敵な男がいるにもかかわらず、年上の男に恋をしてしまうので。そういう物語が好きなんですか?
ジア たしかに、三角関係の物語には昔から惹かれてしまうところがあるかも。映画で言えば、『ブロードキャスト・ニュース』とか『トワイライト』シリーズとか。目の前に大切な人がいるのにそれに気づけず、決して愛し返してはくれない別の人を追ってしまう。だけど、失恋して、苦しみを味わって、そこから学んで大切なものに気づく……。そういう青春時代って誰もが経験していると思うし、共感もできる。だから、好きなのかもしれない。映画だけじゃなくて、私の手がけたアートのプロジェクトにも、そういうテーマの作品はあるしね。
——本作の主人公フランキーは「アートを作りたい。だけど、何をしたらいいかわからない」みたいなことで悩む人物としてまず登場します。あなたにもそういう時期はあったんですか?
ジア 自分が何を作りたいのか、何を求めているのか、誰のために作りたいのか……ってことで悩んだ時期はもちろんある。一般大衆が好きなものと、自分が好きなものが違うので、自分の立ち位置を自問したこともあるし、自分にとって「アートとは何か?」ってことに悩んだこともね。今の若い世代にはSNSがあるから、そこに自分と他者を比べて落ち込んだり、孤独を感じたりってことも加わってくるんだろうけど。ただ、フランキーのように、“いいね!”の数を稼ぐために何かを作るのはやめるべきだとは思うかな。

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——たしかに、フランキーの進む道はアーティストとしてだいぶ危うい。だけど、リンクの登場によって、創作意欲が掻き立てられたのもたしかです。あなたが思い悩んでいた時代、「リンクのような存在がいればなぁ……」と思っていたなんてことはあります?
ジア いや、私はできるだけ一般大衆が注目しない人からインスピレーションを得ようとしてきたから、リンクのような人がいればなとは思わなかった。リンクはSNSの世界の中のヒーロー像であって、作られた存在。逆に、フランキーは人間の世界でいかに正気を保つかっていう人物として描いたつもり。
——フランキーはいろいろなショーが行われるバーで働いています。あるとき、フランキーは、赤ん坊をあやすという得体の知れないショーをしている女性に、赤ん坊役を任命されますが、あれはあなたの実体験だと風の噂で聞いたのですが。
ジア 残念ながら、答えはイエス(笑)。祖父の誕生日パーティでそういうショーが行われて、壇上の女性に無理矢理赤ちゃんの役割をさせられたの。あれほど恥ずかしい経験はなかったな。いとこが私を見て同情してくれたから、客観的に見てもかなりヒドかったんだと思う。フランキーにあのシーンを用意したのは、エキセントリックなショーがこの世にあることを伝えるためでもあったけど、それ以上に、ハリウッドにはそういう本当のどん底を味わうことがたくさんあるってことも示したかったから。まぁ、どん底を味わったら、もう上にいくしかないっていうシーンでるんだけど。
——フランキーはマヤ・ホークが演じていますよね。彼女はイーサン・ホークとユマ・サーマンの娘ですが、『パロアルト〜』に出演したエマ・ロバーツやジャック・キルマーもまた、著名な俳優の親族です。これは偶然なんですか? それともあなた自身が偉大な映画監督フランシス・フォード・コッポラの孫であるというバックグランドが関係していたり?
ジア 基本的にはバックグランドに関係なく、俳優は演技力で選びたいという気持ちがあるの。例えば、ジャック・キルマーは、あの作品のときはまだ役者として活動してなかったんだけど、以前ベビーシッターとして私が彼の面倒を見たことがあって、ジャックなら役者にはできないリアルなティーンエイジャーを演じてくれるかなと思って声をかけた。もしかしたらシンパシーはあるかもしれないけど、それだけが理由でキャスティングしたわけではないわ。

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——出演者で言うと、リンクが呼ばれたインフルエンサーの座談会シーンで、参加者のひとりを日本でも有名なローラさんが演じていてびっくりしました。彼女をキャスティングした理由は?
ジア 何人かのインフルエンサーに会ったんだけど、彼女ならチームプレイヤーとして一緒に撮影を楽しんでくれるかなと思って。あの座談家シーンでリンクはとんでもないことをやらかすんだけど、それは他の出演者には内緒だったの。それなのに、まったく動じずにリンクのことを直視していて、すごい度胸がある人だなと思ったな。

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——スタッフについても聞かせてください。『パロアルト〜』に引き続き、撮影監督はオータム・デュラルドが務めていますよね。僕は彼女の名前を『パロアルト〜』で知ったのですが、どうやって知り合ったのですか?
ジア 『パロアルト〜』を作るとき、プロデューサーを説得するためにテストフィルムを何本か撮ったんだけど、そのときに組んでいた撮影監督がスケジュールの都合で本編には参加できなくなっちゃって。それで紹介してもらったのがオータム。本当に素晴らしい仕事をしてくれた。以来、親友だし、もう彼女なしで映画は作れないと感じてもいる。それくらい大切な人なの。『パロアルト〜』以後、彼女自身も撮影監督として才能を開花させて、いろいろなところで活躍しているんだけど。
——ですよね。調べたら、今度はマーベル映画『ブラックパンサー』の続編で撮影監督をしているそうで、こんな大作もやるのかと驚きました。
ジア ねー。彼女は大作にも興味があるみたい。私としてはインデペンデントの仕事も続けてほしいと思っているんだけど。
——ちなみに、ご自身の映画を祖父であるフランシス・フォード監督に観せて、感想をもらうことなんてあるんですか?
ジア ある程度完成したら彼に観せて、意見をもらったり、アドバイスをもらったりしているわ。やっぱり偉大な監督だけあって、とても参考になる。ただ、彼自身は私の作風を否定して、自分流に変えるっていうことしないの。私の作風をちゃんと尊重してくれる。難しいアドバイスだったりもするけど、それを通して自分を見つけることができるので、すごい助かっている。
——そろそろ最後の質問です。劇中でフランキーたちはこんな問いを掲げて遊びます。「一生下痢になるのと、すべての指がペニスになるなら、どっちがいい?」。あなたならどっち?
ジア もちろん、すべての指がペニス!(笑)
作品情報
メインストリーム
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